「私たちの感覚では病院を廃止することはないと思うが…」。21日に鰍沢町役場で開かれた、増穂、鰍沢両町議会の鰍沢病院存続対策特別委員会の代表者会合。鰍沢病院の診療継続に向け、対策を話し合う場だったが、石川洋司鰍沢町長はこう言うのが精いっぱいだった。 鰍沢病院は内科や外科、小児科など八つの診療科を備え、感染症や災害拠点病院に指定されている峡南地域医療の核。ベッド数158床は峡南地域の病院では最も多い。2007年度の外来患者は延べ6万3254人、入院患者は延べ3万3076人に上っている。 病床利用が低迷 07年度決算では、総収益約18億5440万円に対し、総費用は約18億5350万円で、約90万円とわずかながら黒字を確保。しかし、病床利用率は57・2%と低迷しており、08年度決算は医師不足の影響で赤字に陥る見通しだ。23億5700万円に上る累積赤字の解消も大きな課題となっている。 社会保険庁は売却先について、医療法人、地方自治体、公益性のある法人に限定。国が地方自治体の意見を聞いた上で売却の対象となる病院を選び、原則として一般競争入札を行うことになる。これまでに社会保険浜松病院(静岡)の売却は決定したが、残る52病院については具体的なスケジュールさえ明らかにされていない。 鰍沢病院が売却対象になるかは今後示されるが、受け皿の1つに挙げられている鰍沢町の石川町長は「引き受けたいが、町の財政状況は厳しく、単独で買い取ることは困難」との立場。増穂町の志村学町長も「病院は存続させたいが、売却条件が分からないので判断できない」と慎重な姿勢を示している。 民間の医療法人に関しても「買い取っても採算は必ずしも見込めず、名乗りを上げるかどうかは不透明」(峡南地域の医療関係者)との情勢だ。 公立病院の再編・ネットワーク化をめぐっても、同じ峡南地域北部の市川三郷町立病院との連携を指摘する意見も一部にはあったが、鰍沢病院の先行きが不透明なため、保留になっている。 地域衰退を危ぐ 一方で、社会保険庁から病院を引き継いだ独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構」(RFO)は来年9月に解散予定の時限的な法人。解散時点までに受け皿が決まらなければ、病院は存続できない懸念も出ている。 こうした状況を受け、増穂町の住民有志は「地域の緊急医療を守る会」を設立し、署名活動などを検討。増穂、鰍沢両町議会は病院を公的な医療機関として存続させるため、関係機関への陳情や署名活動を行うことで合意した。ただ、存続に向け、取り得る行動は国などへの要望しかないのも実情だ。 鰍沢病院は介護老人保健施設も併設している。増穂町最勝寺の自営業男性(48)は「峡南地域は過疎や高齢化が進んでいる。病院や福祉施設がなくなれば、ますます地域の衰退が進んでしまう」と話している。
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