新型インフルエンザ対策について政府は、感染者の多発地域の実情に合わせ、「行動計画」に基づく「基本的対処方針」を改めた。今後も事態の推移に合わせて見直しを行うべきだ。
新型インフル対策で求められるのは、感染拡大の防止とともに、社会や経済への影響を最小限に抑えるというバランスだ。政府が二月につくった行動計画に基づく対処方針を緩めたのは妥当な判断といえよう。
行動計画は強い病原性の鳥インフル由来の新型を想定しており、そのまま適用すると社会生活を著しく規制してしまう懸念があった。
対処方針を見直したのは、新型の病原性が当初の予想に反して季節性並みで、抗ウイルス剤で治療できることも分かったからだ。 最も大きな見直しは、感染地域を、東京都など「患者発生が少数」の地域と兵庫県や大阪府のように「患者数が急増」の地域とに二分した点だ。
患者が少ない地域では感染の疑いのある場合、従来通り指定医療機関の「発熱外来」での受診に限定するが、多発地域では一般病院でも院内感染対策を講じたうえで受診できるように改めた。多発地域では患者数の急増による発熱外来や病床の不足が無視できなくなったためで、これらの自治体の要請を受けて柔軟な対応に転じた。
学校などの臨時休業についても、患者数の少ない地域では市町村や都道府県単位の休校を厚生労働省が要請するが、患者が急増している地域では一律の休校は効果が薄いことを認め、学校長などの判断に委ねた。ここでも兵庫県や大阪府での経験が生かされた。
新型の発生という初めての事態に備えるために、事前の準備は周到に行う必要があるが、それでも想定外のことは起こりうる。今後も発生地域の状況に応じ、臨機応変に対処してもらいたい。
忘れてならないのは、病原性が強くないといっても健康な人の場合だ。糖尿病など基礎疾患があると重症化しやすく海外では死亡例が報告されている。感染の疑いがある人には、マスク着用、せきエチケットの徹底など感染を広げない行動が求められる。
感染者が出た大阪府の学校の職員がタクシーの乗車を拒否されたり、感染していない生徒の家族が病院から診療拒否される事態も起きている。これらを防ぐためにも政府は、繰り返し正しい情報を発信し続ける必要がある。
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