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【球炎】成長の大竹 我慢の時 '09/5/12

 4年も昔の話である。大竹の投球を「独り相撲」ならぬ「独り大相撲」と書いたことがある。抜群の能力を持ちながら、力むのだ。冷静さを失い、自分をコントロールできず崩れる。お決まりのパターンだった。

 今季、そんな力みが消えた。技術でいえば、チェンジアップの効果だろう。昨季までは困ったら直球で力勝負。勝負どころでの力みは明らかだった。それが新球のおかげで、押すだけでなく抜くことを覚えた。突き押ししかできなかった力士が、引きや組むことを覚えたといえようか。

 だが、本当の成長は精神面。そう感じたのは抜いた球の使い方だった。二回無死一、三塁。カウント2―3からの1球はチェンジアップだった。石原のサインではあるが、勝負どころで抜いた球を低めに制球した。この冷静さは今までなかった。四球にはなったが、次打者も変化球で併殺に打ち取りピンチを断った。守りを信じていなければ、こうはいくまい。力みが消えたのは「独り」で戦っていないからである。

 援護の気配が全くない中での8回無失点。この我慢強さも特筆ものだろう。だからこそ、あえて言いたい。無失点で勝ちがつかなくても、今は我慢だ。我慢の時である。(小西晶)




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