内閣府が発表した今年一―三月期の国内総生産(GDP)速報値が戦後最大のマイナス幅を記録した。世界不況の深刻な影響を数字が裏付けた形だ。
物価変動を除いた実質GDP成長率は年率換算で15・2%減。戦後初めての四・四半期連続マイナス成長となり、これまでの戦後最悪だった石油ショック後の一九七四年一―三月期の13・1%減を上回った。
米国の6・1%減、ユーロ圏十六カ国の10%程度の下落率を大きく超えている。
輸出が26・0%減と戦後最大の減少率になったばかりでなく、企業の設備投資は10・4%減で同様に戦後最大のマイナス幅を記録し、個人消費では自動車、外食などの内需も落ち込んで、内外需が総崩れになった。
昨秋以降の輸出と生産の急減から雇用状況が悪化して個人消費の冷え込みにつながり、企業部門の悪化が家計に及んでいる現状を示しているといえよう。
この結果について与党内では「想定の範囲内」の声が上がり、これが底で、四―六月期は追加経済対策の効果が出始めるとの見通しもある。
確かに、企業の在庫調整の進展で三月の鉱工業生産指数が六カ月ぶりにプラスに転じるなど、経済指標の一部には下げ止まりの動きも見え始めた。だが、決して楽観はできまい。
国内の民間需要には、力強く回復する要素が見当たらない。GDPの約六割を占める個人消費は、経済対策でエコカーや省エネ家電の販売増が見込まれるが、効果には限度があり、先行き反動減の動きも懸念される。GDPの15%程度を占めるとされる企業の設備投資が持ち直すかどうかも不透明だ。
中国向け輸出が復活するとの期待についても、公共投資が経済対策の中心である中国に自動車や電子部品を輸出しても恩恵は限られるとする見方もある。
さらに状況を厳しくしているのが新型インフルエンザだ。感染拡大で経済活動がさらに冷え込めば、公的需要が息切れするとともに、景気が腰折れするリスクも指摘される。
外需依存の日本経済の弱点があらためて露呈した現状の中で、政府の経済対策効果がどこまで奏功し、どの程度続くのかは見通せず、当面は厳しい景気状況が続くことを覚悟せねばなるまい。
米大手自動車メーカーや新型インフルエンザの影響などを見極めながら、政府の経済対策をより実効的なものにし、長期的な対策に知恵を絞りたい。
民族対立を背景に四半世紀以上続いたスリランカ内戦が、政府軍の武力制圧により終結した。スリランカ政府は国民統合による新たな国家づくりを目指すが、対立が残した溝は深く、民族融和への道のりは険しい。戦禍の傷もすぐには癒えまい。
内戦の発端は、スリランカの少数派タミル人による独立国家樹立を目指した反政府武装組織タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)が、一九八三年に武装闘争を始めたことによる。二〇〇二年二月には政府と無期限の停戦協定を締結したが、その後も双方は衝突を繰り返し、政府側は〇八年一月、協定を破棄し戦闘が激化していた。
政府軍は今年に入り、北部キリノッチなどLTTEの拠点を次々制圧。LTTEは住民を「人間の盾」にとって最後の抵抗を続けたが、ほぼ壊滅し、敗北を宣言した。最高指導者のプラバカラン議長も死亡した。
内戦による犠牲者は七万人以上といわれる。双方に対話による解決を求めてきた日本など国際社会の和平仲介が進展しなかったのは残念だ。
スリランカのラジャパクサ大統領は、十九日の議会演説で「LTTEのテロから完全に解放された。国家統一の機会が初めて訪れた」と述べ、民族融和を進める決意を示した。制圧した北部地域で権限移譲を進めるなどタミル人を内包する形で共存社会の実現を目指す方針だが、多数派シンハラ人との民族対立の根は深く、予断を許さない。
戦火を逃れた二十五万人以上の避難民の帰還も大きな課題。道路や水道、電気の復旧など生活インフラの早急な整備が必要だ。無数の地雷撤去にも時間がかかろう。復興には国際社会の支援が不可欠だ。最大の援助国だった日本も本腰を入れて期待に応えねばなるまい。
(2009年5月22日掲載)