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〔改正薬事法施行と医薬品無店舗販売〕

 改正薬事法の手順に問題があったか
 

これまで、以下の手順でこの改正薬事法の決定・実施のための省令の決定がなされてきました。

すべて長期間の議論を経て、これらの手続きをとってきており、手続き上の不備はなかったと思います。

 

 

・薬事法を改正するための検討会の設置

 

1)厚生科学審議会に薬事法の一部を改正するための「医薬品販売制度改正検討部会」を設置

    検討委員は厚生労働大臣より委嘱されます

2)検討会の報告が作成され、審議会に提出

3)検討会報告に基づき、法律案が作成されました

4)パブリックコメントを経て案の調整を行い、国会提出されました

→ 情報機器を用いた医薬品販売については、第13回・14回・15回の3度に渡り審議されました。

 

 

・国会審議

 

1)厚生委員会での審議・追加・調整

2)衆議院および参議院の審議

→ 販売業を「店舗販売業」「配置販売業」の2販売業としました。

ネット販売の問題についても厚生労働委員会で審議された結果、

無店舗販売業として確立されることなく国会で成立され、公布されました。

(平成19614日)

 

  

・施行令(政令)

 

1)国会で成立された改正薬事法に基づき、実施するための基本内容や方針が閣議決定された。

→ 3度の政令が閣議決定され、天皇により公布されました。

 

 

・省令

 

1)「店舗販売業」および「配置販売業」における実施のための細則を定める省令づくりのための局長私的諮問会議である検討会を設置

2)この検討会報告書を基に省令案を作成

3)パブリックコメントを経て省令公布

→  店舗販売業においてのネット・通信販売について検討され、これまでも認めてきた経緯から、3類医薬品までネット・通信販売を可能としました。

 
  

 

 ●法律づくりとネット販売の議論

 

    1)薬事法改正のための「厚生科学審議会医薬品販売制度改正検討部会」にて、

      専門家を交えた情報提供機器を用いた医薬品販売に関する議論が3度に渡ってなされました。

→  今後の可能性は残すものの、「安全性の担保」の難しさや現状のネット販売における様々な問題点から、通信技術を用いた医薬品の販売については見送られました。

    しかしこれまで認めてきた経緯から、カタログやネット販売による医薬品の販売を、無店舗販売業としてではなく店舗販売業として、情報提供義務のない第3類医薬品(当時3類)のみで認める方向性が示されました。

 

    2)国会でインターネット販売に対する議論

→  衆参および与野党の国会議員から、医薬品の販売においては、安全性を最優先にすること、またインターネット販売への規制を設けるべきとの発言が、3度の参議院厚生労働委員会および1度の衆議院厚生労働委員会でありました。

    結果的に医薬品販売業は、リアリティスペースで医薬品の販売を行う2つの販売業「店舗販売業」と「配置販売業」のみで、国会成立となりました。

 

 

    3)省令による通販およびネット販売の議論について
    
      ●省令を定める検討会は、国会で定められた「店舗」と「配置」の販売業の運営ルールを定める場です。
 

 この検討会では、薬事法で定められた医薬品販売業である、「店舗販売業」と「配置販売業」の2つの販売業に関する医薬品の管理、専門家の常駐、リスク別陳列、情報提供のあり方、専門家の識別および掲示など多くの販売ルールが整備されてきました

 

 ここでネット販売の可能性についても、ネット業者のヒアリングも行い検討されました。ネット販売業という販売業の形態が薬事法に無いため、当然ながらリアリティスペースである店舗で、ネット販売の方法を整備するのには限界がありました

 店舗販売業がネット販売を行うための届出や、情報提供義務のない第3類医薬品のネット販売・カタログ販売が行えること、その場合店舗内で掲示する内容の一部と同じ内容を掲載することなどが話し合われました。

 

 

●店舗販売業でネット販売・通信販売を行うには限界があります。
 

 この検討会は、「店舗の対面と同じ結果が得られるネットの方法」とか「専門家の認定をネットではこうする」「リスク別陳列はカタログならこうする」など、ネット販売やカタログ販売のどの様なやり方をすれば店舗と同じ状態が担保されるかを検討する会議ではありません

 

 くどい様ですがあくまでもこの検討会は、改正薬事法で決定している「店舗販売業」と「配置販売業」の実効性ある施行の規則を検討する場なのです。

 
 もし、改正薬事法の求める内容について、ネットやカタログ販売独自の運用方法を決めるのであれば、はじめから店舗販売業の間借りの状態ではなく、「ネット販売業」または「無店舗販売業」としての業形態の確立が、薬事法の中に位置付けられなければなりません
 
現状のままネット販売や通信販売のすべての方法を、強引にルールとして店舗販売業の中に組み入れると、店舗販売業ルールに矛盾をきたし、法的機能を失うことになってしまいます。
 
 
 改正薬事法における販売業のルール化について
 
 
 
 
●リアリティスペースの店舗の間借りで、ヴァーチャルの店舗運営は難しいのです
 
      前述したように、省令を定める検討会とはあくまで、薬事法で定められた医薬品販売業(つまり店舗販売業および配置販売業)における医薬品の安全供給体制について整備する為のものです。
    これらを検討してきた委員の方々にとっては、「ネットいじめだ」「ネットに関して何の議論もしていない」などとの罵声を浴びせられても、戸惑うばかりか怒りさえ覚えてくるのも当然のことです。こうした声に屈すれば、民主国家、法治国家の危機となります。(近年、こうした破壊的なやり方で、取り返しがつかなくなった規制改革なるものが何と多いことか)
 
     つまり、リアリティスペースを使った店舗販売業の中で、バーチャルスペースの販売ルールを整備すること自体に無理があるのです。バーチャルスペースによる医薬品の販売業を確立して、店舗販売業や配置販売業と同じように、ネット・通信販売独自のルールをつくり、国民の求める「安心・安全」の提供体制をとることが大切なのです。

 

 

     ●現在行われている検討会について
 
    この2009年224日に立ちあがった「医薬品新販売制度円滑施行検討会」で、舛添大臣から「医薬品の安全な提供を保ちながら、医薬品を買えない人に供給するために、この検討会を立ち上げた」との発言がありました。
     したがって、医薬品を買えない人への医薬品供給の問題とネットおよび通信販売の問題については、最終的に重なる部分もあるかもしれませんが、議論としては分けて考える必要があると思います。
 
             まず医薬品を買えない人については、既存の店舗販売業と配置販売業で薬事法に則りながら、どこまでカバーできるかを検討する必要があります。
          次にネットおよび通信販売については、まずはネット販売業者側が、これまで検討してきた方々やその内容について「ぶっ壊してやる」ではなく、敬意を示すことが大切だと思います。
          その上で、この検討会のメンバーの同意を得て、厚生労働大臣または厚生科学審議会に座長より「医薬品のネットまたは通信販売制度の確立について」の検討部会設置の要望書を提出してもらうことを取り付けることが大切です。
 
          さらに厚生科学審議会において検討部会が設置されたとしても、その決定・実施に至るまでの結論や期間は不明であるため、現在の営業ができるだけ続けられるように、期限(例えば3年とか)を切った救済措置(経過措置にはなれない)およびその条件をこの検討会で話し合ってもらうことです。
          この場合のネットおよび通信販売は、これまでどおり店舗販売業(または経過措置にある一般販売業)の中で位置づけられて営業を行うことになると考えられます。店舗販売業ルールの崩壊につながらない方法で、しかも現在の営業が安全に継続できるようにするために、みんなで知恵を出すことが大切だと考えます。