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(2002年8月16日林住庵と名づけた 桐島邸にて PHOTO BY KEIKO.N.) |
2002年夏、わたくしは、ヴァンクーヴァ−の高級住宅街にある桐島洋子さんを訪ねました。きっかけは、1月に桐島さんがボランティアとして力を注いでいらっしゃる日本語学校での講演会でした。この時の模様を下記の桐島洋子さん講演会「聡明な人は読書を好む」に書きましたので、どうぞご覧ください。この講演のあと、おっかけメールを出した私に丁寧なお返事をくださり、それが今回の出会いにつながりました。私の中では、多数の著書や講演会のイメージがあり、初対面とは思えず、懐かしい感じすらいたしました。キッチントークで、3時間以上、お互いの話をしましたが、高台に建つこの家の眺めの本当に素晴らしいこと。目の前には湾が広がり、その向こうには緑の山々、右手にはダウンタウンのビル群・・・。「私は衣食住の住が優先なのよ」とおっしゃる桐島さんらしい素晴らしいお住まいでした。同じく、カナダ在住の次女のノエルさんもとてもチャーミングな方でした。今、桐島さんは日本に帰国されています。時々、いろいろな集いを催されていますので、どうぞご興味のある方は、桐島洋子さんのホームページをチェックしてくださいね。カナダに来る時、私はスーツケースの中に桐島さんの処女作を入れてきました。それが、10年以上もたって、その著者にこうしてお会いできるなんて、本当に感慨深い夏でした。(2002年9月15日けいこママより) |
日時:2002年1月20日(日)午後1時 桐島洋子講演 みずみずしい感性と、例えようのない表現力で書かれた もし、まだお読みになっていない方がいらっしゃったら、 このたび、思いがけなく、このカナダで桐島さんの講演に |
桐島洋子さんは、現在1年の三分の一をバンクーバーで暮らしている。その家を「林住庵」と名付けているが、その所以は、インド仏教の哲学から来ているそうだ。人生を4つに分けると、修行の学生期(がくしょうき)、仕事に励む家住期(かじゅうき)、人生を静かに見つめる林住期(りんじゅうき)、そして欲望を捨て、死に場所を求める放浪と祈りの余生の遊行期(ゆうぎょうき)。 内気で引っ込み思案、赤面症の子供だった。本を読むきっかけは、お母さんが毎晩読み聞かせをしてくれたからだ。幼い頃、西洋文化溢れる上海で生活していたが、お母さんは自分の勉強も兼ねて、簡単な英語の童話を読んでくれた。引き揚げの時、リュックサックに入れたのは本。そんな、本がなくては生きてはいけないような子供だった。 桐島さんが生まれた頃、「風と共に去りぬ」が出版され、家を中心にブームが起きた。家中の人がスカーレット・アシュレなど、登場人物の名前でお互いを呼び合ったりしている、ちょっと変わった家だった。戦後、葉山の別荘で力を落としたお父さんに代わって、畑仕事をし、一家を切り盛りしたのはお母さんだ。上海で、観劇や着飾った生活から一変して、手が荒れていくそんな様子はまさにスカーレット・オハラそのものだった。 学校が性に合わず、机に向かい、話を聞くというのが好きでなかった。理科系、英語ができなかったが、ある時、いつもは勉強しなさいとは言わない父親が「英語ぐらいできないと人生不便だ」と言った。「面白い本を読みなさい」と、高校生の桐島さんに持ってきたのは何と日本では発禁されていた本だった。翻訳が出ていないからこそ、英語で読むしかないということだったが、やはり難しく、次はフランスの本を英訳した「80日間世界一周」。お父さんから「80日間で読みなさい。読んだら賞金をあげる」と言われ、毎日読んだ。食事の時間の時に、チェックが入り、「インドまで読んだ」とか「今日は香港」「・・・日本」と言うと、「お父さんが行った時は・・・」などと、話題が広がり、楽しかった。結局、本は70何日かで読破し、1冊英語の本を読んだことは素晴らしい経験になった。
物事はゲームとして覚えた方がいい。俳句を作るきっかけもそうだった。文芸春秋に勤めていた時、句会に出るとお弁当が食べれるというので、出始めた。わけもわからずに作ったものが2位になり、次回の幹事になった。自分が欲しいものばかりを賞品に選び、いつも獲得。高卒で、受付で入社したが、やがて編集部に配属になったのは、俳句のおかげだ。日本語は、桐島さんの人生を切り開いていくツールになった。 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ 昔は、芸術家を育てるパトロンがいました。フランスの文人はパトロンがいたため、余裕のある生活の中で創作活動をしました。そのお返しが、自分の本をその人の前で朗読することでした。私には、パトロンはいませんが、読者の皆さんがパトロンだと思って、今日は朗読させていただきます。 「渚と澪と舵」−食べてはいけたけれど、明日をもしれない人生でした。もし、自分に何かあったら、アメリカ人に養子にもらってもらおう。今思うと恐ろしい考えでしたが、万が一そうなっても、存在証明を残しておきたい。自分にとって、母なる大地は日本語。自分の青春、旅、出生の由来。そして自分自身の日本語を維持するために書きました。(桐島さん談) ・・・桐島洋子さんの自著朗読・・・ 以上の文章は桐島洋子さんの講演より抜粋させていただきました。 |
【けいこママより】 講演当日、私は二人の子供をベビーシッターに預けて、ノースバンクーバーの自宅からバスを乗り継ぎ、バンクーバーにある日本語学校に行きました。本来なら、このような機会は、元の勤め先の新聞社に提案し、取材や写真撮影で慌しいのですが、仕事とは切り離したところで今回の講演を堪能したかったのです。そのため、カメラは持参しなかったので、久しぶりにイラストを描きました。 幸運なことに、座った席から1メートルぐらいのところに、桐島さんの席が設けられたのです。司会者に紹介され、さっそうと舞台に現れた桐島洋子さんは、イメージそのものでした。1時間20分ぐらいの講演の間、終始自然体で、話し言葉も書き言葉と同様、品格を感じさせてくれました。 かつて、千葉敦子さんというジャーナリストがいて、残念なことに10年ぐらい前に40代の若さで亡くなったのですが、著書に「よく生きることは、よく死ぬことだ」というタイトルがありました。実際に彼女は、それを実行したのですが、桐島さんの生き方もよりより遊行期を迎えるために、林住期を充実させようという考え方で、合い通じるものを感じました。 桐島さんは、「『作家の書棚』などというグラビアの話は、お断りしますね、なぜなら、本箱を人に見せるのは自分の内臓を見せるようで恥ずかしい」と、お話していました。私も人に本箱は見せられない性質なのですが、う〜ん、こういう言い方もあるのだなと、改めて桐島洋子さんの豊富な表現力に触れた思いです。 最後になりましたが、桐島洋子さんのホームページをご紹介したいと思います。バンクーバー暮らしや住まい、著書や、おすすめ品など多彩です。日記もありますし、ファンレターも送れますよ♪ |
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