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新型インフルエンザ:「確定前、公表やめて」 川崎市に生徒母親、ネット中傷恐れ要望

 新型インフルエンザに感染した川崎市の女子高校生(16)について、川崎市は21日、インターネットで中傷されることを恐れた母親の希望を受け、感染疑い例として厚生労働省に届け出た時点では公表しなかったことを明らかにした。通常は公表する情報で、坂元昇・市医務監は「年齢や性別など個人が特定できる情報を省き公表することもできた」と釈明したが、感染者を差別するネットの書き込みが公表にまで悪影響を及ぼしている。

 川崎市によると、女子生徒は20日午後3時ごろ、市内の医療機関の簡易検査で、インフルエンザA型陽性と判明。動揺した母親が「公表すれば、疑い例でも兵庫や大阪と同じようにインターネット上で批判される。娘がショックを受け自殺するかもしれない」と訴えた。市幹部は協議の末「本当に感染していた場合、調査などで女子生徒の協力は不可欠」と判断し、母親の意向を尊重して確定まで公表しないことを決めた。

 感染症法は、新型インフルエンザ感染の疑いが強い患者に対し、遺伝子検査確定前でも入院措置を取れると定める。厚労省は自治体に「疑い例」が出た段階で、速やかに報告するよう通知している。【川端智子、清水健二】

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 ■視点・新型インフル

 ◇感染者への偏見、まん延招く--元外務省医務官で精神科医の勝田吉彰・近畿医療福祉大教授の話

 北京の日本大使館に勤務中、新型肺炎(SARS)が流行した。「人民解放軍が北京市を封鎖した」などのデマが流れ、パニックが起きた。うわさを拾い上げ訂正することの大切さを知った。

 新型インフルエンザは医学的には弱毒性だが、心理的には強毒性だ。未知のものへの不安から自分を守ろうとすると、いじめや排除が起きやすくなる。ネットに誹謗(ひぼう)中傷が流れたら、削除する。大人が子どもに偏見を持たないよう言い聞かせる。積極的に手を打ち、治めなければならない。いじめを恐れて受診しない人が増えれば、水面下で感染が広がり、毒性が強まった時に大変なことになる。【聞き手・山崎友記子】

毎日新聞 2009年5月22日 東京朝刊

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