「林真須美」と表記されることが多いですが正式には「林眞須美」です。「真」でなく「眞」になります。

第3回支援会レポート 2006.7.22

会場
 7月22日、第三回林眞須美さんを支援する会が100名を超える出席者のもと、大阪府立青少年会館で開かれました。

 最初に、この会に駆けつけたゲストの方3人のスピーチがありました。


 最初は、日本初の死刑囚から無罪を勝ちとり34年に及ぶ長い獄中生活から生還された免田栄さんが、スピーチをされました。
免田榮
免田さん
 昭和24年1月13日の午前10時に突然連行され取調べの時から、殴る蹴る等の拷問にあった。16日の昼に釈放されたがその後、すぐに再逮捕、そして裁判はわずか三回で終り、弁護士の面会は一回だけだった。そんななかで、何も分からないまま、三回目に今日は求刑とその意味も分からず言われた。
 死刑判決のあとは死刑におびえ毎日体をふるわせていた。
 ある僧侶から「死ぬことは簡単だが、生きることは難しい」と言われ、生きる決意をした。
 私の時代は、再審手続きという制度はあったが、一度も活用されたことはなかったので私が最初の事例であった。
 再審手続きを往復書簡で出し続けたが、「出せばすぐ却下」という状態が続き、そのあと弁護士からのアドバイスで上申書を書いた。
 上申書には、現在の心情を2年間書き続けた。そして最後に再審が許可された。本当に感激だった。
ある弁護士からは「あなたの死刑は過去からの因果応報なのだから、潔く刑に服せ」と言われた。露骨な再審請求へのいやがらせだった。
 私は「司法は過ちを犯す」という生きた証人である。
 また、最高裁の判事が、「司法の安定のためには死刑はやむをえない」といったことに添った形で高裁が判決をくだした。
と語りました。
 ついで、同志社大学教授の浅野健一さんが、次のように語りました。
浅野健一
浅野さん
 カレー事件当時、マスメディアの取材のありかたに関心があった。
集団的取材による人権侵害があり、子供達までも巻き込んだ。
私が記者の写真をとると糾弾された。
記者の労働基準法違反を訴えた。40日間帰れない記者がいる。
黙秘は正当な権利だが、喋らないと疑われるおかしな世論がある。
やっていない理由は言う必要がない。
マスメディアの作り上げたイメージが先行してしまう。
林さんは事件当時、現場に子供を残してカラオケに行っていた。
犯人であればそんなことをするはずがない。
「カレー事件」は、免田さんがされたように、誰かを犯人に作り上げて、社会の安定を図るという考え方があったのではないか、と述べ
3人目に、松本サリン事件で報道被害にあった河野義行さんが次のように語りました。
河野義行
河野さん
 眞須美さんが逮捕される1~2日前に電話で一回だけ話した。「近所の人が、子供のためにがんばってといってくれてうれしかった」という内容だった。
 今年のバレンタインデーには、小さなチョコが届いたが、彼女が元気でいられるのは、支援会の方がしっかり支援をしてくれているからだと思う。
 私は、逮捕されているわけではないので、冤罪未遂事件として自分のことを語るが、12年前のサリン事件のときに、1.突然妻がおかしくなった。2.次に自分もおかしくなった、ということから疑惑を向けられた。
 自分もサリンの症状で、警察に昨日何をしていたか聞かれても答えられなかったり、苦しんでいる妻のもとを離れたのはおかしいとみられた。
そこで、薬品を調べられ、最初に写真現像用においておいたシアン化カリ薬品を疑われたが、それではサリンが出来ないことは分かっていた。それに有機リン系の薬品がないとサリンができないので強制捜査でそれを探していた。
 スミチロンという農薬と粉剤が見つかりそれをマスコミにリークされた。
粉剤とは(ゴキブリ駆除の)バルサンのことであった。
 そして、自分の黒い部分を徹底的に探していた。
 河野は、シロだと思うという捜査員もいたが、そう言うと事件からはずされるので誰も言わない。そうした犯人を決めつけ突っ走る警察の体質は非常に問題だと思う。
 ポリグラフ(うそ発見器)にもかけられた。正直者は無罪がやっと分かってもらえると思って使用に同意するのであるが、「機械は正直だ」と逆に自白強要に利用されてしまっている。
 次に、別件逮捕(業務上横領)をするために、取引先に500円でも渡したものはいないかと捜査していた。
 警察は決めたとおりに進めようとする。やった可能性があるから有罪というのはおかしい。状況証拠だけの判断がされている。
こうした経験をしたものとして、本当に眞須美さんがやったのかどうか、やった立証は本当に出来ているのかということを参加者の方はよく見てほしい、と語りました。

 次に、弁護団を代表して、安田先生から裁判所に提出される30ページに渡る上告趣意書の要旨についての説明がありました。
安田先生
安田好弘弁護士
最高裁で判断されるのは、1.憲法違反か2.判例違反かということになるので、

1.憲法違反として
 ★Iさんに10回以上睡眠薬を飲ませているということを問題視しながら、立件,起訴はしていないので、公正な裁判は受けられていない点で憲法違反である。
 ★林さんの関係箇所から出てきた砒素とカレーの中にあった砒素は同一でないという鑑定が証拠のなかにある。
その後、その鑑定が弁護人の了承も取られずに、鑑定訂正書を出して変更されている。→証拠法の手続きを無視した憲法違反である。

2.判例違反として
 ★マスコミ報道をトリミングして出されたものを使っているのは違法という判例がある。→憲法違反でもある。

3.著しく正義に反する事実誤認として
 ★眞須美さんは無罪なのにそうなっていない。

4.真犯人の存在として
 ★眞須美さんは本当に犯人に該当しているのかどうか。

石塚伸一弁護士
石塚伸一弁護士
 「ガラス細工でできた」という言葉があるが、ガラス細工とは、硬いものの組み合わせでできたものをいうが、この事件の全体の構造は飴(アメ)細工のようである。
 公訴事実は9つあるが、そのうちの8つまでが、保険金を詐取しようとしてやったとされる殺人未遂等であり、唯一9つ目のみがカレー毒物混入事件である。
 そして、1~8までの未遂事件で9のカレー事件を立証しようとしている。
文科系の私たちは、理系ではないので鑑定の権威付け(学校名とか、世界で唯一の)等に弱い。
しかし、8年前に雰囲気先行のなかで出来上がった判決なので、雰囲気が変われば判決も変わる可能性はあると思う。
中道武美弁護士
中道武美弁護士
 砒素を入れた理由である保険金詐欺事件をすべて殺人未遂事件とすり替えて、殺意があったように思わせようとしている。それが殺人未遂でないと検察側は困る。しかし立証はできていない。
悪い人のイメージを作り上げて雰囲気で決めようとしている。




 ★眞須美さんとヒ素を結びつける、紙コップ、プラスチック容器、
などの写真を独占公開の部分では、安田弁護士がスライドで家宅捜索の写真を見せながら、砒素同一性の問題として、


 1.林さんの家から出てきたもの(逮捕の日の6日の夕方から検証が始まったが、3日間は出てこなくて4日目に出てきているという不可解さ)

 2.カレーの中から出てきたもの

 3.夏祭りの会場から出てきたもの

のうち、砒素に含まれている不純物のうちたった三つの重元素が一緒だから同一だといっている。(指紋を合わせるのですら、最低12ヶ所が一緒でなければだめ)と語り、
最後の質疑応答では、

   ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

■質疑応答
<参加者>
過去の弁護士と連携はとれているか?
<安田弁護士>
協力してもらっている。私は弁護士は毎回変わるべきだと思っている。過去を否定するわけではない。人が変れば見方も変わる。それはいいことだ。

<参加者>
眞須美さんの近況は?
<安田弁護士>
睡眠薬で集中力が切れることがあるが、非常にいい状態。
本が他の人より手に入りにくいなど、拘置所内でいろいろないやがらせがあるようだ。自殺防止房の下で厳重に監視されている。
間食をやめてスマートになった。
三浦和義
<参加者>
1市民として出来ることは?
<三浦さん>
まずは支援から。そして正しい裁判。
良い弁護団と支援会の活動が支えになる。

<参加者>
聞いていると勝てると思うのだが、負ける要素は?
<安田弁護士>
いや、裁判は負けるものなのだ。
10万ページ、2000枚近くの写真を裁判官はきちんと検証していない。
たった一人の調査官が見ているだけで、時間から見ても見きる事は無理。また検察はすべて証拠を開示せず、隠された証拠を開示させる法律がない。都合の良い証拠のみを出してくる。弁護側は他の証拠を見ることもできない。

<三浦さん>
私のロス疑惑の時は、アメリカの事件だったので、アメリカの裁判所に証拠をすべて開示させた。そのおかげで勝てた。逆転の発想だった。日本ではそれが出来ない。
林健治
<参加者>
亜ヒ酸を飲むとどうなる?
<林健治さん>
即効性があって10~15分くらいで異常が出る。
<安田弁護士>
Iさんは砒素を飲まされてから4~5時間くらいで症状が出たと、警察に隔離された場所で書かされた調書で語っている。
カレー事件では、すぐに症状が出ている。

◎眞須美さんからのメッセージと詩を朗読  林眞須美さんからのメッセージはこちら>>

 最後に、山際さんが「人権と報道連絡会」で、支援している恵庭OL殺人事件、仙台筋弛緩剤混入事件と、このカレー事件の3つが最高裁まで進んでいるが、そのどれにも共通することは、家族の支援がしっかりしていること。と語った。

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