第2回支援会レポート 2006.4.23
4月23日、「和歌山カレー事件」で死刑判決を受けている林眞須美さんの支援会が大阪市「ドーンセンター」でありました。(以下、出席者によるレポート)
今回の支援会に参加して分ったことは、マスコミによって、それはつまり、警察検察のリークを鵜呑みにしてつくられた眞須美さん像しか見えていないということだった。
動機や理由が見えなくて、ただ状況証拠だけで死刑判決を言っていいのかとの疑問を持っていたが、この日の集まりで、更にハッキリしたものとして、「冤罪」であることを知る集まりだった。
新聞やテレビによって刷り込まれている「カレー事件」のこと、眞須美さんを犯人と疑わせた証言や「事実」への疑問、あるいは、公にはされず知らされていない事実の存在が、この日の集りの中で見えてきた。
まず、「林眞須美さんを支援する会」の呼びかけ人の一人である三浦和義さんから
「21年前のロス疑惑の問題と同じであり、まちがいなく冤罪です。眞須美さんは、正しい裁判を受けられたのか。私は、事件に関与していないと確信しています。」と発言。
次に、上告審の弁護人の安田弁護士から
「林さんのご家族の話を聞き、冤罪であると確信している。
とんでもない事件であり、眞須美さんに夫殺しのイメージをつけさせ、夫である健治さんを取り込み、離反させ孤立させていこうとしていたことが目に見える。
全てのことが、ゆがめられている。
有罪へのワナが散りばめられている。
関係者には、警察からの圧力が、かけられている。
冤罪であることを知らせていかなければ。ここでの話を外に広めていくことが必要だ」と発言。
次に、林眞須美さんからの手紙を朗読。 林眞須美さんからの手紙はこちら>>
林健治さんは、「眞須美さんからの手紙で、どんな状況で取り調べられたかを今はじめて知り、怒りで身体が震えています」と語った。
この日の集まりには、ご主人と四人の子供さん達のうち三人が来られていた。安田弁護士が出席していた四人に質問をするという形で話は進められた。
事件当日、眞須美さんがカレーに「砒素」を入れたとされるとき、ずっと一緒にいた次女の話が、この「事件」の全てを語っている。
「当日、朝の八時から九時ごろに起きたとき、母(眞須美さん)は病院?へ行っていていなかった。昼前に帰ってきた。昼食として母の買ってきた「巻き寿司」や「そうめん」を食べた。食べ終わった後、母が「カレーの見張りに行く」ということで付いていった。道をはさんで家から3~4mのところにあるガレージ。なべが四つ。イス。木のお玉があった。そこに座って母と二人で話をしていた。15分から30分。で、カレーの味見をしたいと母に言う。はじめは「ダメ」と言ってたけど、認めたので自分の指をなべの中に入れてなめた。そのうちに、次の当番の人が来た。3人から4人。一緒に母と帰る。」
砒素を入れたとされる時間帯には、次女はずっと一緒にいた。そして、指ですくい食べていた。眞須美さんが、砒素を入れたのなら、自分の子に食べさせるということはさせないのではないか。
警察で、「砒素を入れたか」と聞かれたとき、ずっと一緒にいたからウソだと思うと言った。二回呼ばれた。その日の朝から夕方までのこと。事件のことや朝何時に起きたとか。詳しく話をした。最初、覚えていないと言っていたけど。曖昧に答えたものもある。母と一緒だったということを信じていないようだった。母が一人でいたときがあるやろうと聞かれた」
警察は、眞須美さんを犯人と決めつけていること、ずっと一緒にいたという次女の証言を疑っている。夜遅くまでの取り調べが、幼なかった子供達にとってどんなに恐かったか。そこから逃れようとして「あることないこと」を話してしまった。
長女の話
「当日のことで覚えてることは、夏休みでお昼近くまで寝ていた。昼ご飯は、麺類と巻き寿司を食べたこと。父が、カラオケに行くと言うので、下の子の面倒を見るということで五千円か一万円もらう。その後、ビデオを借りにいく」
「逮捕当日、二階の自分の部屋から外を見ると、沢山の人が集っていて、いつもと違うと思った。母が、私を呼んで「もしかして捕まるかもしれん」というので「やったん」と聞いた。「やってるわけないやろ!」と叱られた。
警察に、妹らが呼ばれたとき、母から自分は、はっきり「やっていない」と聞いていたから、警察に協力せんでええやろと思い、妹らに何も言うなと言った。でも、昼過ぎから夜八時ごろまで調べられて妹弟は、恐かったからあることないことしゃべった。」
Iという人の証言から、眞須美さんは、犯人とされるようになった。
「Iさんは、精神障害があり、裸で走りまわったり、正常じゃない。そのIさんに連絡をとろうとしたけど「ぼくは関係ないので、おとうさんにまかします」と言い、話しにならない。Iの家は警察官一家。」
お父さん・健治さんの話
林健治さんの話の前に「林健治さんの手記」が配られる。 林健治さんの手記はこちら>>
「大阪地検のコデラという腕利きの検事が取り調べに来た。眞須美と離反させようとして、いろいろ言われた。お前には関わってこん。眞須美に殺されかけたんやろ」
「(病気治療のために)八王子(医療刑務所?)に入院させるから、(認めると)書け」と言われた。
眞須美さんに、保険金目的で砒素を飲まされたとされていることについて
「砒素は、自分から飲んでた。葛湯にヒ素をまぜて飲ませたというが家には葛湯はなかった。裁判官は、初めから有罪ありき、だった。」
「犯人は他にいる。マスコミの人からもいろいろ教えてもらった。事件で4人が亡くなっているが、一人、2億円の保険金が入った人がいるとか、ひとり、女性関係がいろいろある人がいたとか。」
健治さんは、眞須美さんにカレー事件のことで話したことがあったという。
「「カレーやったんか」と聞いたことがあった。そのとき、保険金(サギ)は金になるけど、カレーに砒素入れても何の利益にもならないと言った」
「10月4日の逮捕から二週間後、検事が言った。「私の腕では、眞須美を落とすことはでけん」眞須美は、留置所の中で、その頃流産している。それで取り調べが中断したという。そんな、しんどい中で、やっていたとして、それを否認しつづけることができるかと思う。眞須美は、やっていない。」
テレビで、眞須美さんがテレビカメラの人に向けて放水している場面が、意図的に流されていた。カッとしたら何をしでかすか分からない。平気で水をかけたり、「激高」する人物であり、それと砒素事件とを繋げて犯人とされたと、ぼくも思っていたことについて。
「事件後、マスコミがたくさんきた。中には、家の中に泊まりこみ、朝昼晩と三食一緒にウチで食べる記者もいた。外にいる記者には、蚊取り線香を持っていったりしたこともある。マスコミは、味方だと思っていた。それなのに、脚立を使い、娘の部屋に入ったり、棒に鳥もちをつけ、郵便受けから引っ付けて取り出し開封し、中を見て、また糊付けして入れるということがあった。裏切られたという思いがあって、私が眞須美に水でも浴びせたれと言った」
近所の人と仲が悪かったということが言われていたことについて
「そういうことはあった。それも、私の責任なんです。夜中もマージャンする。音がやかましい。川にゴミをほかす。他人の家の塀に小便をする。道幅5メートルのところに車を止めていると、あとから入ってクラクションを鳴らすとか」
「激高説とか言われているけど、眞須美は、漁村で厳しいところで育っている。男らしい。陰湿なところはない。もし、陰でコソコソ言われているのを聞いたら、その場でいう性格」
使われた砒素について、カレーの中のものと、林さんの家にあった「白アリ駆除の為の薬剤の砒素」と同じものだとされているが、砒素は染物や、はくせいにも使い普通の家庭にもある。それから、砒素をカレーに入れる際に使ったとされる「色つきの紙コップ」だが、家ではマージャンで使っていたのは、白色で色コップは使ったことがない。
お父さん・健治さんも保険金詐欺の容疑で同時に逮捕された後、四人の子供達は「施設」に入れられた。そこで子供達は、辛い日々を過ごした。
「施設の人から、しゃべらないと、みんな別々にするぞ、とか、弟は、もっとひどいところに入れるぞ、とか言われた。施設では、四人は、バラバラにされていたし、事件のことを話せなかった。話すことを禁じられていて話すと、ぶたれた」
園の食事を園長もたべていたが、メニューがカレーだった日、子供達に直接にではないけれど、「これ、砒素入ってんと違うか」と言ったと人から伝え聞いたことがあった。
逮捕されてから両親には会えないし、文通もできなかった。一年くらい過ぎた頃、四人で施設を飛び出して、拘置所の外から「お父さん、お母さんをかえして!」と叫んだという。すぐに施設の者が来て、連れ帰されたけど。
お父さんの健治さんは、ずっとそのことを知らなかった。拘置されている中まで聞こえなかった。眞須美さんは、今でも知らないのでは、と。建物に向かって叫んでいる子供達の姿が目に浮かぶ。
この日、短い時間だけれど、語られた中でも、たくさんの疑問がわいた。
とくに、子供さんたちの証言。子供さんといったが、事件から8年たち、大きく成長されている。彼女達が、この日の集まりで、私達の前に座り、安田弁護士の問いに答えているのだが、それが自然で、本当にお母さんのことを信じている様子が感じられた。
「事件」の時、一緒にいて、やっていないと分かっているからだろうし、逮捕直前に「やっていない」と話した、その強い調子のお母さんの言葉が、あるからだろうと思う。
「和歌山カレー事件」で、新聞やテレビで報じられてきたことを、私達は、鵜呑みにしてきたと思う。新聞やテレビで報ずるものが、警察からの発表であるということを知りながら。この日の健治さんと子供さん達の話、あるいは、質疑の中で事実が語られた。「事実が隠され、あるいは、ゆがめられ、眞須美さんを犯人に仕立てる為に有罪へのワナが散りばめられている」と安田弁護士は言った。そして、そのことが話され、明らかにされたこの日の集りは、「眞須美さんの無実のカギが、いっぱい散りばめられている」集まりだったと思う。