医師不足に悩む地域の夜間救急医療を担おうと、宮崎県の日向市・東臼杵郡医師会(甲斐文明会長)などが同市北町で運営する初期救急診療所が20日で開設50日を迎えた。新型インフルエンザ用の薬や防護服も届き、設備は整いつつあるが、訪れる患者は1日当たり1、2人。認知度アップが課題になっている。
19日、午後7時半。診療所に救急車が駆け込んだ。患者は市内の男子高校生。バスケットボールの練習中に倒れた。当番医の甲斐会長らが慌ただしく動き回る。診断結果は過呼吸。まもなく回復し、待合室の両親が安堵(あんど)の表情を浮かべた。
同市と周辺4町村の夜間救急はこれまで、規模の大きい民間3病院が担ってきた。医師不足の中、3病院の負担を減らそうと、医師会と市が協議を重ね、4月、診療所開設にこぎつけた。設置を決めた医師会総会は、全員が賛成だった。
診療は平日午後7時半から同9時半。医師約50人が月1回ほどの当番をこなしており、自分の病院の診療を終えてから駆け付けている。
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だが、スタート直後の4月4日、平日ではなかったが、日向市内で心肺停止状態になった門川町の男性(65)=当時=が、7医療機関から受け入れを断られる問題が起きた。「遺族に申し訳ない気持ちと、なぜという悔しさがこみ上げた」。甲斐会長は話す。
日向市は今後、回覧板などでPRを強化、同市消防本部も当番医の専門分野と患者の症状が合えば、診療所への搬送を増やす方針。地元の高齢者施設からは「必ず診てもらえる診療所があると、安心できる」との声も寄せられている。
同医師会は6月の総会で診療所の運用向上策を協議する。甲斐会長は「診療所はこれからが勝負。取り組みを充実させたい」と話している。
=2009/05/22付 西日本新聞朝刊=