1ドル120円の円安時代が終わりを告げた今、輸出型企業が国内でモノづくりをする意義はどれだけあるのか。JPモルガンの精密担当アナリスト・森山久史氏は言う。
「円安だった05年ごろは、国内で製造を行うことで設計と製造現場の距離を近くし、物流費削減など効率化が図れた。だが、この5〜6年でITインフラが発達し、開発と製造の物理的な距離は以前ほど問題にならなくなった。国内製造の意義は薄れつつある」
もちろん、キヤノンにも大きな戦略がある。キヤノンが目指しているのは限りなく無人に近い自動化工場だ。ロボットが製品を作る製造体制を確立すれば、人件費を気にせず工場を建てることができる。キヤノン製品の主な需要地は日本や欧米などの先進国。そうした人件費の高い消費地で製造を行うことで、物流費の削減や需要変動への迅速な対応が可能になるというわけだ。
現在の大分キヤノンは、自動化工場へと向かう過渡期にある。だが、昨秋以降の急激な円高が業績の打撃となったほか、年末には“非正規切り”問題で批判を受けた。理想とする無人化工場に行き着く前に冷や水を浴びせられてしまった。国内でモノづくりを行うハードルの高さをあらためて痛感させられた。
いったい、日本国内で製造を続けていくことはできるのか。キヤノンに突きつけられた課題は、パナソニック、シャープなどにも共通している。「メード・イン・ジャパン」は、これまでにない強力な逆風にさらされ始めたと言っていいのかもしれない。
(桑原幸作 =週刊東洋経済)
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