請負会社側には当然日々の製造ノルマが課せられているため、ノルマ達成のためには追加の部材をもらう必要がある。だが「キヤノン側に申請しても『不良在庫があるから、それを有効活用しろ』と言われる」。不良としてはじかれた在庫も部分部分でまだ使えるパーツがある。それをバラして再利用しろというわけだ。
キヤノンの厳しい採算管理は請負との間で絶え間ない交渉を生む。前述のベテラン請負労働者はこうも証言する。「会社(日研総業)側からは、『キヤノンとの交渉では絶対引くな』と言われている」。
不良品が多数発生すれば、その原因がキヤノンの用意した部材の品質にあるのか、それとも請負側の使い方にあるのか、両者の間で責任の所在を問う交渉が行われる。請負側が過失を認めれば、不良在庫の費用を負う立場となる。「どちらも責任を取りたくないから、交渉は平行線。するとどうするか。明らかな不良品はどちらかが責任を取るが、グレーゾーンの製品については通してしまうことが起こりがちになる」。
通してしまえば、不良品ではなかったことになり、互いの責任を追及する必要もなくなるというわけだ。
キヤノンは製品不良の公表が増えていることについて、「原因は機種によりさまざまだが、製造現場のホコリによるものでも、作業者の技術レベルに起因するものでもない。小さな問題であってもしっかり公表しているだけで、最近になって製品不良が増えているわけではない」(広報部)と説明する。しかし、現場から聞こえてくる声とはあまりにもかけ離れている。
請負会社を使えば、製造現場とのコミュニケーションが隔靴掻痒の状態になってしまう。皮肉にも、国内生産を選んだがゆえに、製造現場が遠くなってしまった。高コストの国内で製造を行いつつ、他社を凌駕する利益率を上げようとするキヤノンの製造体制に無理はなかったか。相次ぐ製品不良が何らかの異常を告げていることだけは確かだ。
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(桑原幸作 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
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