鳩山由紀夫代表、岡田克也幹事長を軸とする民主党の新体制が始動し、次の衆院選に向けた政権公約の調整が本格化した。鳩山氏は代表選などを通じ、政治主導と地方分権の実現による「脱官僚」を政権交代の旗印として掲げた。
麻生内閣の下で公務員制度、地方分権両改革は停滞しており、民主党が「政と官」を争点化する狙いは理解できる。小沢一郎代表当時は具体的にそれをどう実現するか、肝心の中身が明らかでなかった。「日本の大掃除をする」とまで鳩山氏が大みえを切るのであれば、その構想を明確に示さなければならない。
小沢氏を代表代行、岡田氏を幹事長に据え挙党態勢に配慮した鳩山氏だが、衆院選を目前に控えた党の最大の課題は、遅れていた政権公約の取りまとめだ。作業は岡田氏が主導するとみられ、懸案の財源問題を中心に調整を迫られている。
注目したいのは、鳩山氏が掲げる「脱官僚」の中身だ。代表選で鳩山氏は、行政改革による歳出の洗い出しを徹底し、首相直属の国家戦略局で予算編成を進める考えを示した。官僚の天下りや「渡り」のあっせんを禁じ、省庁の局長以上を半年ごとに評価する方針も表明した。
政治主導の実現は小沢氏も「与党議員100人以上を政府に入れる」と看板に掲げていた。官僚主導の是正は賛成だが「政と官」の仕切り直しは官僚たたきに終わらせず、公務員制度を体系的に見直すことが必要だ。民主党政権なら官邸や官庁はどう変わるのか、現状ではまだ説明が不十分だ。
鳩山氏が「地域主権」と言う地方分権もそうだ。党が先月まとめたプランは自治体へのひもつき補助金を廃止し使途を定めぬ「一括交付金」にすることや、国の出先機関の原則廃止などを盛り込んだ。
ただ、分権に不可欠な財源、特に国からの税源移譲の位置づけがはっきりしない。出先機関の廃止も具体性がもうひとつである。
将来の自治体像も生煮えだ。プランでは基礎自治体を分権の母体とし、最終的に現在約1800ある市町村を300程度とするビジョンを示した。そのうえで、当面は市町村数を「700~800」に集約する目標を掲げた。住民に近い基礎自治体の重視は賛成だが、都道府県や「道州」のような広域自治体を最終的に不要とするのであれば、逆に中央主導につながらないか。さらなる町村合併の進め方も含め、議論を深めてほしい。
官僚が主導する政治の転換は、これまでも歴代代表が掲げたテーマだった。国民は民主党の政権担当能力を見極めようとしている。責任ある構想の提示を怠ってはならない。
毎日新聞 2009年5月22日 東京朝刊