Haney Lawyers
- 家族法・子供の誘拐 パート1 [2008/11/28]
国際離婚が増加してる今日、子供を相手側から引き離す為、自国へ子供を連れ出してしまうケースを時々聞きます。このような“誘拐”が発生した場合、オーストラリアの家族法はどのように適用されるのでしょうか?
今日はこの質問についてお話をしたいと思います。
最初に重要なポイントは、子供が実際に海外へ出国しているかどうかです。出国前の法的処置と出国後の返還手段は大きく異なる為、今回のお話は出国前(パート1)と出国後(パート2)に分けたいと思います。
まず最初に、夫婦の関係が良好なうちに片方の親が子供を海外へ連れ出す事は問題無く、頻繁に起きる事です。しかし、子供の養育に関して紛争が発生してる場合、法律は子供を連れ出そうとする親を厳しい目で見ます。連れ出す意思を実行した具体例が過去に有ると、この先の家庭裁判で子供の親権や面会交渉について判断される際に不利になります。
1975年家族法、パート7の子供の養育に関する複数の規定が考慮されますが、その中でも第60B(2)条により子供は両親から養育され、定期的に面会をしたり、連絡を取り合う権利が有り、従って、無断で子供を海外へ連れ出してしまう親は子供の権利を拒否してると言う風に裁判所は判断するでしょう。今後の家庭裁判で残された親が親権の申し立てをし、その親の養育能力などが十分であり、子供に適してる環境を提案された場合は、親権が相手側に移される可能性も出てきます。
もし一方の親が子供を連れてオーストラリアを出国する恐れが有る場合は、残された親が出国拒否を家庭裁判所(Federal Magistrates Court)と連邦警察署(Australian Federal Police)を通して申立てる事が出来、このシステムは家庭裁判に関わってる当事者が裁判所の許可無しで子供を海外に連れ出せなくする方法で、Airport Watch ListやPACE Alertとも言います。
申請の流れは下記のようになります:
1. 裁判書類の提出。
家庭裁判所へ次の書類を提出します:(A)申請書 - Application(B)供述書 – Supporting Affidavit(C)情報シート – Information Sheet(D)子供の出生証明書 – Birth Certificate
申請書には子供の名前をAirport Watch Listに登録すると言う連邦警察署への命令と、子供の養育に関連する次のような申立てが含まれてないといけません:
(A) 子供が誰と暮らすか。
(B) 子供が誰とどの程度に面会するか。
(C) 子供が誰とどの程度に連絡(電話など)するか。
(D) 誰に子供の養育義務が有るか。
供述書の役目の一つとしては相手側が子供をオーストラリアから海外へ連れ出す恐れが有ると言う事を証明するのに使われます。
家庭裁判所へ上記の書類を提出すると申請書の右上に裁判の日程が記入され、裁判所の判子が押されます。
2. 連邦警察署へ申請書の送達。
裁判の日程が記入され、判子の押されてる申請書を連邦警察の家族法チーム(02) 6126 7914へ本人、又は代理人弁護士がファックスし、子供の登録の依頼をします。
3. 子供の情報の登録。
連邦警察署では依頼を受けてから直ぐに子供の名前をAirport Watch Listに登録します。登録されてある名前と生年月日が出国審査で使われた際にシステム上に警告が発生します。又、出国拒否の警告はオーストラリアの各国際空港だけでなく、各海港にも配信されますので、完全に子供は出国が出来なくなるという事です。
尚、一度Airport Watch Listに登録した子供の名前は、裁判官の命令でしか外す事が出来ません。外すかどうかは次の裁判で決まりますが、子供の養育に関する最終裁判まで外さないのが普通です。
家族法第65Y条と65Z条に子供の養育に関する申立てが裁判所へされてる場合、又は、子供の養育に関する裁定が有る場合は当事者や当事者の代理人は子供をオーストラリアから海外へ連れ出してはいけない、と規定されており、出国許可の同意を書面で取り決めてあるか、出国が許可されてる裁定が無い限り、子供を連れ出した親は罰せられ、最高刑は懲役3年と言う刑法に関わる重大な問題に繋がる可能性があります。
しかし、連邦警察や移民局は第三者からの情報が無い限り、家事紛争が発生していると言う状況の確認が出来ません。従って、Airport Watch Listのシステムを使い、家族法第65Y条と65Z条を強制的に実行する事が出来るのです。
その他のポイント:
Airport Watch Listに登録されるデータは主に子供の名前と生年月日なので、日本のパスポートでもオーストラリアのパスポートでも出国審査の際にシステム上、警告が発生します。
又、子供がオーストラリアの市民権取得者でパスポートを持っていない場合は外務省へ子供のパスポートの発行依頼を拒否すると言うシステム、Child Alert Applicationの申請を至急行う事をお勧め致します。オーストラリアでは両親の署名が無い場合は、裁判所からの命令か外務省上官の特別許可が無い限り、子供のパスポートは発行されません。しかし、相手側の署名を偽造し、パスポートの申請を進めるような悪質なケースを防ぐ為、このようなシステムが制定されたのです。
今回のお話は子供が出国する前に取れる手段で出国済みの場合は全く使えません。出国後はハーグ条約に関わる別の手段が有り、次回パート2で説明させて頂きます。
本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません
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来豪26年になる岡本弁護士は、オーストラリアでの生活経験が豊富な上、日本人のルーツを大切にしている。2003年にQLD工科大学法学部大学院を卒業し、家族法と移民法を中心に日本語で法律相談を行っている。
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