強毒ウイルスの襲来に備えて今回のケースから何を学ぶべきか検証しました。
新型インフルエンザ対策の見直しにあたり、政府は弱毒性を強調していますが、感染拡大への対応は、後手後手に回っているのが現実です。
強毒ウイルスの襲来に備え、今回のケースから何を学ぶべきか検証しました。
八王子市保健所の職員は、電話の対応に追われるなど、東京都内の発熱相談センターは、緊迫した空気に包まれていた。
首都圏で感染者が確認されたことを受け、八王子市の保健所には、電話による相談が殺到していた。
20日夜からの相談件数は、先週の10倍以上にあたるおよそ600件で、ほかの部署からも応援を頼み、およそ80人態勢での対応が続く。
八王子市保健所の小林信之保健対策課長は「帰らずに徹夜した職員が約15名ぐらいいましたでしょうかね」、「やらなければいけない業務というのは、やはり非常に大事な業務がありますので、それがなかなか手につかない」と話した。
急速な感染拡大によって、日本政府は、対処方針の見直しを迫られている。
麻生首相は「水際対策から、いわゆる国内対策という方向に変わっていく状況になっているかなと」と述べた。
医療現場でのヒューマンネットワークを研究する東京大学医科学研究所の上 昌広准教授は、「結果的には、多数のインフルエンザの感染者の方が、国内に入ってきちゃったんですね」、「まず、初めにきっちりと変えていけばよかったのを、結果として、この検疫、行動計画狂騒曲みたいになっちゃいましたね」と話した。
上准教授は、最大の問題点は、水際対策と医療現場のバランスにあったと指摘する。
感染が確認された女子生徒2人が通う洗足学園高校の前田隆芳校長は、「ちょっと熱があるということで、検疫を受けました。その結果、陰性であるということで、自宅に帰ってもいいとなったんですが」と話した。
水際を軽々とすり抜けた新型インフルエンザで、当初、厚労省が最も重点を置いたのが、この水際対策だった。
4月27日、舛添厚労相は「今、全力を挙げてやってるのは、水際作戦。とにかく、この新しいウイルスを、日本に入れない」と述べた。
ゴールデンウイーク中には、普段の3倍近い200人態勢で検疫を行ったが、水際で阻止できたのは、大阪のグループ4人にとどまっている。
上准教授は「潜伏期間の患者さんが大量にいて、その方たちは水際では止められないことが、科学的に明らかになった段階で、行動計画を政治のリーダーシップをもって変えるべきでしたね」と話した。
また、15日、舛添厚労相は「今回のは、病原性が低いということですので、それに応じた柔軟な対策をとるという」と述べた。
厚労省は、強毒性の鳥インフルエンザを想定した行動計画から、弱毒性の新型インフルエンザ対策へかじを切った。
しかし、すでにウイルスは国内にまん延していて、発熱外来はパンク状態になり、現場からは悲鳴が聞こえている。
18日の全国知事会で、東京都の猪瀬直樹副知事は「水際対策を転換してほしいと、それを至急やってもらわないと、戦力を集中できないんです」と語った。
こうした状況について、上准教授は「あの時期に必要であったのは、あとの国内の感染に備えた病院の体制整備だったと思うんです。効果が極めて低い検疫に、医療者を配置させたことは、賢明ではなかったと思います」と話した。
強毒ウイルスの襲来、そのとき試される政府の対応、限界を打ち破ることはできるのか。
(05/22 00:40)