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超高齢化社会における高齢者医療費抑制策について厚生労働省の資料によると国民医療費は、2025年に約50兆円になる見通しであると推計されています。この国民医療費増加の要因の1つとして、高齢者医療費の増加が指摘されています。高齢者医療費が増加を続ける要因として、高齢化の進展に伴う受給対象者数の増加であります。
このことから、本レポートでは高齢者医療費の抑制について提言させて頂きます。 1.高齢者(75歳以上)人口と国民医療費の推計 国立社会保障・人口問題研究所の推計資料によると、2005年の高齢者比率が9.1%(65歳以上だと20.2%)から、2015年には13.1%(65歳以上だと26.9%)、2025年には18.2%(65歳以上だと30.5%)と推計されています。 一方、厚生労働省の国民医療費の将来推計によると、2008年が34.6兆円、2015年が40.3兆円、2025年が49.9兆円となっております。 厚生労働省が2009年3月に公開した医療費の将来推計は、以下の内容です。
以上の推計資料から、超高齢化社会における高齢者医療費の抑制が優先課題であると考えます。 2.着目すべき都道府県別分析データ 総務省統計局が出している「都道府県別の高齢者(ここでは65歳以上)の有業率と一人当たりの老人医療費(高齢者医療費は75歳以上としていることから表現を変えました)」の資料に着目してみました。 都道府県別に65歳以上の有業率(65歳以上人口に占める65歳以上有業者の割合)をみますと、長野県が30.7%と最も高く、次いで山梨県(28.3%)、福井県(27.7%)、鳥取県(27.4%)、静岡県(27.3%)となっています。これらの県は総じて1人当たり老人医療費が低い傾向にあり、健康で元気な高齢者が多いことがうかがえます。 一方、有業率の低い都道府県は、沖縄県(17.6%)、兵庫県(17.7%)、長崎県(18.1%)、福岡県(18.2%)、北海道(18.3%)などとなっています。 やはり、1人当たり老人医療費が高い北海道・福岡県は、最も低い長野県の1.5倍以上となっていることから老人医療費抑制の改善が多大に見込まれると考えます。 以上が、総務省統計局の分析資料の一部で非常に着目されるところであります。 また、長野県においては、佐久総合病院における長年の取り組みが代表的な課題解決方策となっていることでも有名であります。ちなみに、都道府県別の平均寿命においても長野県は男性が1位で女性が5位となっています。 3.高齢者医療費抑制への提言 これまで将来の医療費増加(特に、高齢者医療費)についての分析等を含めた調査レポートが報告されています。今回着目した総務省統計局資料を題材としたレポートもありますが、一向に国の制度的見直しが効果を上げていないことから、本レポートを執筆いたしました。 <1>国の制度改正に関する提言 高齢者医療費を抑制するためには、元気に働くことが最大の効果であることから、働く高齢者に優遇する制度改正を提言します。 (1)税金の一定額を免除 (2)保険料の一定額免除 (3)一定額の年収があっても年金支給額の減額を行わない <2>地方自治体への提言 地方自治体への提言としては、地域の特性があるので必ずしも当てはまる提言とならないことから参考とさせて頂きます。 (1)住民ができることは行政サービスから切り離す 例えば、ゴミの収集作業を段階的に廃棄場所を少なくし、最終的に行政サービスとしてのゴミ収集を住民へ移管します。ここで言う住民とは、高齢者が担うことを想定します。 ゴミの収集(適切な分別作業も含め)を担った住民へのインセティブとしては、地域通貨を与える、税金・保険料の一定額免除等が考えられます。 (2)地域住民による相互扶助 例えば、介護・福祉分野の行政サービスの一部を地域住民による相互扶助に移管する。サービス提供の決済は地域通貨を活用することを想定します。 また、最近、介護サービス従事者を外国人に依存する傾向がありますが、地域住民による相互扶助の基本に戻る必要があります。 (3)地方行政の歳出削減を図る 行政サービスの一部住民移管(特に、高齢者)および医療費抑制によるスリム化で歳出削減を図り、健康的な行政を実現させることです。 以上、超高齢化社会が進展する状況で、筆者がこの数年来一番危惧していることをレポートさせて頂きました。筆者自身も高齢者の仲間入りに近いこともありますし、これからの日本経済を高齢者が支える比率を高めることが重要であると切実に思う次第であります。 著者:森山 勉 日本ユニシス株式会社 第三企画部 シニアコンサルタント 関連記事 関連テーマ 最新トップニュース
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