「寂しい」 故忌野さんの衣装制作「トップテーラー」

忌野さんの衣装を縫製したトップテーラーの工場。左端が佐々木社長

黒石市で縫製された衣装をまとい、復活ライブで熱唱する忌野さん=08年2月、東京・日本武道館

 2日に58歳で亡くなったロック歌手忌野清志郎さんのステージ衣装制作を陰で支えた縫製工場が青森県黒石市にある。青森、弘前両市に店舗を置くテーラー(仕立屋)「トップテーラー」の生産部。津軽の小さな工場が持つ高度な技術は、多くのファンに愛されたミュージシャンのステージを色鮮やかに演出してきた。従業員は今、忌野さんへの感謝の気持ちを新たにしている。

 忌野さんの衣装は、襟幅の狭い「コンテンポラリー」というスタイルのスーツ。東京都福生市にあるテーラー「K・ブラザーズ」が手掛け、2003年から仮縫いした後の縫製をトップテーラーが受けてきた。

 衣装はデザインが斬新な上、婦人物の特殊な生地を使うことも多く、袖の部分の仕立てには、手縫いの特殊技術を必要としたという。

 当時、縫製工場の海外移転が進むとともに、複雑で、きめ細かい縫製技術を持つ職人は国内で激減。トップテーラーにはスーツを1人で縫い上げる技術を持つ職人が現在も6人おり、評判を聞きつけたK・ブラザーズから依頼され、制作に乗り出した。

 黒石市の工場の従業員は女性を中心に30人ほど。丁寧な仕事で仕上げた忌野さんの衣装は30着近くになった。08年2月、がんからの復活ライブで着用したピンクの花柄スーツや遺影のスーツの縫製も手掛けた。

 東京や大阪、仙台など全国の専門店から注文を受ける同社の佐々木耕治社長(60)は「忌野さんが亡くなり、悲しさとともに、難しい衣装にチャレンジできなくなった寂しさを感じる」と語る。

 「小さな田舎の工場にはとても刺激的で、ワクワクさせていただきました」。同社は自社のホームページに「ありがとう忌野さん」と題し、追悼と感謝のメッセージを掲載している。


2009年05月19日火曜日

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