「一度、政権を交代させてみたら」というチェンジ志向はやはり有権者の間に根強いとみるべきだろう。それを示した調査結果だ。
民主党の新代表に鳩山由紀夫氏が就任したのを受けて毎日新聞が16、17日実施した世論調査で、民主党の支持率は30%に上昇し、23%の自民党を再逆転した。代表選前の調査では鳩山氏より岡田克也氏の方が代表にふさわしいと答える人が多く、鳩山新体制には小沢一郎前代表の影響力が残って「二重権力」になるとの批判も出ていた。そんな中での調査だった点に留意する必要がある。
注目すべきは、鳩山氏と麻生太郎首相のどちらが首相にふさわしいかとの問いに対し、鳩山氏が34%、麻生首相が21%となった点だ。4月の調査では麻生首相が21%、小沢氏は12%と逆転されていた。今回も「どちらもふさわしくない」が42%と最も多かったとはいえ、世論の動向が変化したのは確かだ。
その一方で鳩山氏本人に対しては「期待する」と「期待しない」が拮抗(きっこう)し、民主党への評価が今回、上がったか、下がったかの質問に対しても「変わらない」が68%だった。
この結果は何を物語っていよう。有権者はクールに政治を見つめており、鳩山新代表がブームを呼ぶような状況ではない。だが、小沢氏の進退問題という足かせがなくなったことは民主党にとっては大きくプラスに働き、しぼみそうになっていた政権交代への期待をつなぎ留めたということではなかろうか。
次の衆院選で自民、民主どちらに勝ってほしいかとの質問では、民主党は56%と大きく上昇し、政党支持率以上に自民党に差をつけたことが、それを表している。
「鳩山氏ならくみしやすい」と見ていた自民党にはショックだろう。麻生内閣の支持率も24%と再び下がった。新型インフルエンザへの政府の対応が問われている最中に、鴻池祥肇前官房副長官が静岡県熱海市のホテルに女性と宿泊していた問題が発覚し、辞任した大失態も影響したと思われる。衆院解散・総選挙にいつ打って出るのか、今後の戦略にも影響する可能性もある。
いずれにしても次の総選挙は一大政治決戦となる。自民、民主いずれにも一種の「風」が吹いていないことも決して悪いことではない。その分、どの政権がこの国にとって望ましいのか、有権者が政策を冷静に吟味する選挙となるからだ。
無論、鳩山氏も問われるのは今後だ。どんな新体制にするかだけでなく、小沢前代表時代、二の次になっていたマニフェストをいかに精緻(せいち)なものとするか。政策の中身が勝負を決めるに違いない。
毎日新聞 2009年5月18日 東京朝刊