仮出所者の農林業訓練施設誘致 住民から異論続出

就労支援施設受け入れについて説明する小林村長(右)。住民から反対意見が相次いだ=11日

 刑務所仮出所者らの農林業への就労支援施設の受け入れを検討している秋田県上小阿仁村で、住民の反対の声が高まっている。全集落で座談会を開いて理解を求める小林宏晨村長に対し、村民からは「安全が確保できるのか」などと異論が続出。施設誘致による雇用拡大を期待する小林村長は、本年度中に受け入れの可否について方向性を打ち出す方針だが、難しい判断を迫られそうだ。

 村の最大集落・沖田面地区で11日夜にあった座談会。小林村長が約150人の参加者を前に、仮出所者の職業訓練施設の受け入れについて説明すると、5人の住民から反対の意見が相次いだ。

 「村の平穏な暮らしが脅かされる」「高齢者の多い村が受け入れる施設ではない」―。反対の声が上がるたびに住民から大きな拍手がわき起こり、小林村長は「社会復帰のチャンスを提供する場が、なぜ村では駄目なのか」と語気を強めた。

 村が受け入れを検討しているのは、法務省が構想中の農林業に特化した新たな就労支援施設。具体的な運営方法や開所時期は未定だが、村と国の意見交換では、廃校となった校舎などを活用した施設に少人数の仮出所者が入所し、農林業者の協力を得て職業訓練を行う案が浮上している。

 法務省の構想を知った小林村長が1月、同省に自ら受け入れを検討する考えを伝えた。村長は4月から全20集落を対象に座談会を開いており、国の更生保護施策に協力する意義とともに「施設ができれば、村民の雇用の場も増える」と強調している。

 ただ、施設の運営方法も具体化しておらず、村長がアピールする「雇用効果」は未知数だ。刑務所出所者の更生保護について、住民が短期間で理解を深めることも難しい。

 村議の一人は「入所者の支援方法が決まらない段階で、雇用面のメリットだけが強調されすぎている。村長は自分の考えを住民に押しつけている印象だ」と指摘し、慎重な議論を求めている。


2009年05月19日火曜日

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