卓上四季
スマイルマスク(5月21日)
ロンドン駐在の同僚が書いていた。気管支炎になり、診療所でマスクを渡された時「外で着けないように。警官に呼び止められます」と注意されたという。英国には着用の習慣がないらしい。ソウル駐在記者の報告でも、繁華街のマスク姿は日本人ばかりだ▼新型インフルエンザは世界で流行しているのに、日本人ばかりがマスクをする。かつて日本人は眼鏡にカメラ、という印象で見られた。無表情なマスク姿が、新たな日本人像になるのは不本意だ▼それでもマスクなしでは不安だ、という方は少なくないだろう。そこで、こんなのはどうですか。マスクは真っ白な「カンバス」だ。思い思いに口と鼻を描き、笑顔にする。スマイルマークやピエロのように、福笑いのように▼実例はある。タイの警察官だ。昨年来の反政府勢力との対立でこわもての印象が広がっていた。そこで白バイ隊がマスクに笑顔を手書きした。おかしくて、捕まる交通違反者が大笑いしたほどだ。ほほ笑みの国らしい▼込んだ電車やバスの中、日常の無表情な顔をスマイルマスクで覆えば、車内が和むかもしれない。札幌ドームで着けるなら、応援メッセージを入れたっていい▼予防効果がどうなるか心配もなくはないが、もともと欧米では、満員電車などを除き、マスクによる予防が疑問視されている。ウイルスにおびえるより、笑い飛ばす方が楽しくはないか。