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【国際】

スリランカ内戦終結 民族和解 道険しく

2009年5月19日 朝刊

 【コロンボ=林浩樹】スリランカの反政府武装勢力「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」の最高指導者プラバカラン議長の死亡が十八日確認され、二十五年以上続いた内戦はひとまず終結した。多数派シンハラ人主導の政府は、少数派タミル人の自治権拡大をてこに国民融和を目指すが、双方で七万人の犠牲者を出した民族対立の根は深く、和解への道は険しい。

 プラバカラン議長は一九七二年にLTTEを結成した。当時はタミル人が優遇された英植民地時代の反動で、シンハラ人の政府がタミル人への差別政策を進めたため、同議長らが蜂起。反政府グループが割拠する中、プラバカラン議長は対抗勢力を次々と倒し、タミル社会の主導権を握った。

 八三年の内戦ぼっ発後、同議長は北東部の独立を主張して独裁体制を構築。自爆テロの手法を用いたり、捕虜になるのを避けるため少年兵に自殺用の青酸カリを所持させるなど運動を激化させた。和平の機会もあったが、プラバカラン議長は独立にこだわり破棄してきた。

 壊滅に追い込まれたLTTEの先行きは不透明だ。独裁者の死で雲散霧消するとの見方がある一方、海外を拠点とするタミル人の支援で地下組織としてテロを継続するとの懸念も強い。今後の和平協議についても、外交筋は「議長が権力保持のため優秀なタミル人を粛清したことが最大の問題」とタミル人のリーダー不在を指摘する。

 一方、スリランカ政府は戦闘の最終局面で人道危機を訴えた国際社会を無視し、LTTE制圧に突き進んだ。さらに議長を拘束せずに殺害したことで、国際社会の批判が強まるのは必至だ。人質にされた市民の被害状況も定かではない。国民融和を進める上でも、国連による現地調査の受け入れは不可欠だ。

 

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