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日米の温度差

2009年4月18日0時3分

 トヨタ自動車の決算が10年3月期も厳しいと予想されているように、経済の先行きはまだ難関が続く。しかし、最近の日米の株価の動きは、連動というよりも日本の方が米国より上ぶれしてきた。これは今後の経済を読む上での手がかりにもなる。

 米国の金融システムは、中央銀行が短期金融市場を支え、政府が大手銀行などの破綻(はたん)を防ぐ仕組みの構築に本腰を入れてきたことで歯止めがかかった。しかし、その底辺にある過剰債務の解消はまだこれからで、消費の減退は経済の更なる停滞や雇用の悪化に連動しつつある。

 これに対し日本の経済は、当面は欧米以上に厳しいが、産業の対応は機敏で金融も透明性が高い。消費者の借り入れ過多という意味のバブル化もなかった。そう考えると日本の立ち直りは相対的に早くなる可能性が高い。

 もう一つの注目点は「株主資本主義」の行き過ぎに対する反省の温度差である。日本で株主絶対視を推進してきた「ファンド」が凋落(ちょうらく)したこと、また派遣切りに対する世論の風圧などもあり、経営における社員との絆(きずな)の重要性は再認識されつつある。会社の業績は、顧客や社会の必要や痛みにこたえる経営者の意志や社員の意欲に負う所が大きい。それは今回のような試練に対応する力の源でもある。ならば企業経営のこうした本来的な姿への回帰は、日本の産業力を相対的に高めることになる。

 今後の日本経済にとって特に重要なアジア諸国との連携や信頼関係の構築においても、今回の不況を機に、日本の企業がこのようなバックボーンの立て直しをすることは、その長所を発揮して具体的な成果に結ぶための重要なステップだと思われる。(瞬)

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