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一本足経済の脆弱性

2009年4月17日0時4分

 昨年9月、米国の大手証券会社リーマン・ブラザーズが経営破綻(はたん)したときに「ハチが刺した程度だ」というのが、当時与謝野経済財政担当相の見解であった。この見解は私も含め、多くの日本人に共有されたと思う。というのも日本の金融機関に対するサブプライムローンの傷は浅く、バブル崩壊後の三つの過剰(雇用、設備投資、債務)を解消した実体経済に与える打撃も小さいと見られていた。

 ところがである。08年10〜12月期の国内総生産(GDP)の実質成長率が12.1%減(年率)となり危機感ががぜん高まってきた。まさにつるべ落としの景気後退で、その最大の元凶は、輸出の大幅な減少である。2月には前年同月比で、49.4%減という過去最大の減少率を記録した。海外の需要減がもろに日本の生産・雇用状況を直撃している。グローバル化した世界で、改めて輸出依存型経済の脆弱(ぜいじゃく)性の怖さを思い知らされているといえよう。OECDの09年の経済予測を見ても、日本の実質経済成長率はマイナス6.6%であるのに、経済危機の元凶である米国はマイナス4.0%と落ち込みはより小さい。

 過度の金融に依存したアイスランド、原油一本やりの中近東などいずれも経済再生で苦境にたたされている。一本足経済の基盤の弱さであろう。ものをつくり、輸出を主力として稼ぐ日本経済の構造はまさにこの一本足経済を連想させる。複数の足で立てるようなより頑強な経済にモデルチェンジすることが、これからのわが国の課題であろう。最近の麻生内閣による追加経済対策の巨額な財政出動15.4兆円も、このような課題を克服するために充当してもらいたいものだ。(安曇野)

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