新型の豚インフルエンザの感染が20日夜に確認された東京都と川崎市の女子生徒2人は、いずれもニューヨークからの機内で受けたインフルエンザの簡易検査で「陰性」と判定された。感染の有無をその場で判断できるが、発症初期には反応が出にくい。新型インフル患者は陽性反応が少ないという報告もあり、水際作戦の武器としての限界も明らかになってきた。
季節性のインフルエンザにはA型とB型があるが、簡易検査キットはこの二つに反応するかみるものだ。東京都などによると、2人の女子生徒は19日に機内検疫で簡易検査を受けたが、いずれもA型陰性。20日に熱が上がり、改めて受けた簡易検査でいずれもA型陽性と診断された。新型インフルもA型のため、新型の疑いも生じた。
検査は、患者の鼻やのどをぬぐいとった綿棒を液に浸し、手のひらに乗るほどの大きさの検査キットに数滴垂らす。ウイルスがあれば、数分から十数分ほどでキット上に線が浮かび上がる。線が出れば陽性、なければ陰性だ。
ただ、限界もある。発熱やせきといった症状が起きても、24時間ほどは体内にウイルスが十分にたまらないため、感染していても陽性反応が出ないことが多い=グラフ。2人は発症して時間がたっていなかったため陰性になったと考えられる。
新型インフル感染者のうち、神戸市内の病院を受診し、遺伝子検査で感染が確定した43例を調べた結果、半分近い20例がA型陰性だった。分析した国立感染症研究所によると、発症後、検査まで0〜4日だった。「検査までの期間が短いことが影響しているかもしれない」という。
また、米カリフォルニア州で入院が必要となった患者24例を調べたら、21%にあたる5例が陰性だった。
加地正郎・久留米大名誉教授は「一度陰性になっても、翌日に陽性となることはある。患者も医師も簡易検査の特性や限界を知ってほしい」と話している。