2009年5月21日 12時13分 更新:5月21日 13時34分
近畿地方に続き首都圏でも高校生が新型インフルエンザに感染した。21日までに確認された国内の患者計281人のうち、高校生が75%を占める。海外の報告でも患者は10代が中心で、専門家は「新型は10代後半に感染しやすい特徴があるのかもしれない」とみる。一方、米疾病対策センター(CDC)は1957年より前に生まれた人の一部に、新型に対する免疫がある可能性を示した。
東京慈恵会医科大の浦島充佳准教授(小児科学)は「ウイルスには特定の年齢層との相性がある。例えばはしかや風疹(ふうしん)は大人になってかかると重症化する。今回の新型は10代に特に影響を与えやすい性質があるかもしれない」と推測。高齢者に感染が少ない点では、「若い人は免疫が活発に働くとの学説がある。大人は発症に至らなくても、若い人は免疫の過剰反応で、目に見える症状が出たのかもしれない」と語る。
外岡立人・元北海道小樽市保健所長は、スペイン風邪など過去の新型インフルエンザでも30代以降の感染者や重症者が少なかった例を挙げ、「一定年齢以上の人は新型インフルエンザのもとになった豚インフルエンザなど、何らかの免疫を持っているのでは」と話す。
CDCが米国の患者642人(生後3カ月~81歳)を分析したところ、患者の60%が18歳以下。CDCのジャーニガン・インフルエンザ部副部長は「患者の血液の研究から、57年以前にさかのぼるほど(新型に類似した別の)H1N1型ウイルスに感染した可能性が高くなる」と話した。
今月上旬、大阪府などで高校生を中心に感染が広がった際、集団生活など特有の行動様式が流行の背景と見られていた。同じ時間帯に込み合うバスや電車で通学し、授業やクラブ活動で濃厚接触が起きやすい。
拡大防止には手洗いの励行など個人レベルでの取り組みが不可欠だが、外岡さんは「夏休みを前倒ししてはどうか。新型は重症化の心配が少ないので、それ以外の年代で活動を制限する必要はない」という。鈴木宏・新潟大教授(国際感染症学)は「全国の高校を対象に調査し、発生状況や感染力を把握すべきだ」と提言する。
ただし、新型ウイルスが持つ独特の特徴が、若者の感染例を増やしているとしても、中学生以下での発症はまだ10%と少ない。国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は「科学的な分析が必要だ」と話す。【永山悦子、河内敏康、奥野敦史】