【なごや特走隊】マスクは名古屋発祥? ガーゼ製家庭用開発2009年5月18日
新型インフルエンザの拡大で、マスクの売れ行きが伸びている。特需に沸くマスク製造会社を取材すると「実はガーゼマスクは名古屋発祥」との情報が。海外でマスク姿の人があまり見られないのも、マスクが名古屋をはじめ、日本で発展してきたからなのかも。 「確かに戦後、ガーゼを使ったマスクを商品化したのは名古屋だった」。天白区のマスク製造・販売「ヨコイ」の横井道夫社長(77)は胸を張った。 ガーゼマスクを開発したのは、横井社長の兄正男さん(90)。1950(昭和25)年のことだ。それまでマスクといえば、工場などで防じん用として使われ、穴が開いた革製だった。 「革製は蒸れたので通気性を考え、名古屋周辺でよく製造されていたガーゼを使ったのがみそ。家庭用として売り出した」。正男さんが創業した「白鳩」(南区)の担当者は説明する。横井社長のもう一人の兄定雄さん(84)も同時期にマスクの製造を始めた。「横井定」(瑞穂区)だ。 長くガーゼ製マスクの独壇場が続いたが、2002年、2003年ごろに不織布製の立体マスクが登場。多様な形に対応できる不織布製が売り上げを伸ばしているものの、ガーゼ製は洗って再利用でき、保湿性の高さもあって根強い人気がある。現在、国内では、2種類合わせて年間4〜5億枚売れている。 さて、全国的に名古屋のマスクは、どのように位置付けられているのか。全国マスク工業会(東京都)の藤田直哉専務理事は「医療用はかなり昔からあったが、ガーゼを使った家庭用マスクは名古屋が初めてと言って良いのでは」と“名古屋発祥説”を支持する。“横井兄弟”の3社に加え、ほかにも数社がマスク製造を手掛けている。 新型インフルエンザ問題では、外国でマスクを着用するのは日本人ばかりと報じられている。藤田専務理事は、理由を「家庭用のマスクは日本で生まれ、清潔好きな日本人に浸透してきた。外国でマスクをする習慣がないのも当然だろう」と推察する。 約50年にわたり、マスクを製造してきたヨコイ。マスクにまつわるエピソードが多い。約20年前には、カラーマスクを売り出そうとした。「マスコミは取り上げてくれたけど、全くはやらなかったねえ」と横井社長は笑う。だが、1995年の阪神大震災では、マスクが足りず、2万−3万枚をボランティアに配り、倉庫に眠っていたカラーマスクが意外な活躍をみせた。 近年の需要増で5年ほど前には、再びカラーマスクに挑戦。ヒョウ柄などをそろえたが「やっぱり売れなかった…。まだ倉庫の奥に眠っているよ」と残念そう。 マスクは、花粉症やインフルエンザへの対策として需要が高まるばかりだ。立体形状や抗菌など、メーカーの試行錯誤が繰り返されている。次は、名古屋からどんなアイデアが飛び出すのか。 (社会部・山田祐一郎) 【募ります】 日ごろ抱いている名古屋の「謎」を募っています。内容を検討の上、記者が取材にあたります。住所、氏名、連絡先を明記し、郵便は〒460−8511(住所不要)社会部「なごや特走隊」係、ファクスは052(201)4331同係へ。
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