ことし一−三月期の実質成長率が戦後最悪を記録した。内外需とも総崩れ状態だ。ただ「最悪期は脱しつつある」との見方もある。楽観はできないが、いまは「夜明け前」とみて明日に備えたい。
予想されていたとはいえ、ここまで落ち込むと、やはり衝撃が走る。実質成長率は前期比で4%減、年率に換算すると15・2%減と昨年十−十二月期に続いて、二けた台の大幅減少になった。
どの需要項目がどれだけ増減に寄与したかを測る寄与度でみると、外需の1・4%減少に対して、内需が2・6%減少と外需の落ち込みを上回った。
世界的な経済危機の影響を受けて、自動車や電機といった輸出産業が打撃を被ったのは理解できるとして、国内の需要までが大きく落ち込んだ。民間の設備投資や住宅投資、個人消費といった内需の柱がどれも折れた状態だ。
輸出頼みだった経済が四半期遅れで、ついに内需にまで余波が及んできたとみていい。
家計は明らかに財布のひもを締めている。土日祝日の高速道路料金値下げなど下支え材料もあるが、ここへきて新型インフルエンザが国内でも拡大してきた。スーパーでもマスク姿が目立ち、客足は鈍い。消費活動の本格回復は当分、期待できそうにない。
こうなると、企業も家計も「いまは我慢の時」と覚悟を固めるしかないが、明るい材料がないわけではない。三月の稼働率指数が小幅プラスに転じるなど、生産水準は底打ちの気配もある。
中国向けなど輸出も回復の兆しがあることから、民間エコノミストの間では「四−六月期には実質成長率がプラスに転じる」という見方が増えている。
なにより「景気の動きを半年から一年程度、先取りする」といわれる株式市場が戦後最悪のGDP発表にもかかわらず、二十日は小幅高で引けたのも心強い。
むしろ大きな問題は、景気刺激に巨額の財政出動をした陰で、民間活力を伸ばす改革の努力がなおざりになっている点である。補正予算の中身をみても、庁舎改修に充てる施設整備費の増加など「官の焼け太り」が目立つ。
国際通貨基金(IMF)は同日、日本経済について「内外需のバランスがとれた成長を確保するためにも構造改革が必要」として、農業や医療、保育、高齢者サービスなどの規制改革を求めた。
長年懸案の政策課題に手を付けず、その場しのぎではだめだ。
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