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【主張】マイナス成長 本格回復につなぐ戦略を
今年1〜3月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動を除いた実質で前期比4・0%減、年率換算で15・2%減となった。減少幅は昨年10〜12月期を抜いて戦後最大である。
昨年秋の米金融危機とその後の世界経済の急激な悪化で輸出が大幅に減少し、内需を支える個人消費や設備投資も悪化した。
マイナス成長は4四半期連続である。これで誰もが抱くのは「いつまでマイナスが続くのか」という不安だろう。何と言っても日本のGDPの減少幅は、同じ期の米国の6・1%減、ユーロ圏16カ国の約10%減を上回り、改めて外需依存という脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになる数字だからである。
しかし4月に入ってからの経済の現状は悲観論一色ではない。企業の在庫調整が進んだことから生産に回復の動きがみられるほか、中国やインドなどの景気回復が先行して輸出に下げ止まりの兆しがある。3月の景気動向指数の先行指数も6カ月ぶりに上昇し、消費者心理も改善してきた。速報値が発表された20日の東京株式市場が続伸したのも景気の底入れ期待の表れである。
政府は昨年から経済対策を相次いで打っている。追加対策として総額14兆円弱の補正予算案も衆院を通過し、参院審議が始まった。バラマキ批判はあるものの、今後定額給付金やエコカー購入支援、家電製品に付加する「エコポイント」など消費を押し上げる効果が期待できる。このため、4〜6月期はプラス成長に転じる可能性が高く、景気の底割れは何とか回避されそうだとの見方も多くなっている。
ただ、問題はこのまま景気が回復に向かうかどうかが見通せない点である。輸出の本格回復には米国経済の持ち直しが不可欠だ。夏のボーナスカットや雇用情勢の一段の悪化など景気が腰折れするリスクもある。
これまでの政府による財政出動は主に短期的な効果を狙う政策が中心であり、今後の経済の自律的な回復に結びつける中長期のビジョンもなければならない。そのためには、内需の拡大につながる医療、教育、エネルギー・環境や農業などの分野における規制緩和が不可欠だろう。
国民が身をすくめて将来の不安を抱いたままでは経済成長はおぼつかない。政府には本格回復につながる改革の戦略を求めたい。