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【主張】郵便不正 自らの手で体質改善図れ
障害者団体の定期刊行物に適用される料金割引制度を悪用した郵便法違反事件は、日本郵政グループの日本郵便(郵便事業会社)支店長らの逮捕に発展した。不正をチェックする立場にある郵便事業会社の刑事責任が問われる事態になったのである。
障害者団体の定期刊行物は「低料第三種郵便物」が適用され、通常だと1通120円かかるところを8円で郵送できる。大阪の広告代理店が、これに目をつけ、活動実態のない障害者団体などの名義でダイレクトメール(DM)を発送していた。
この広告代理店や、これを利用した家電量販大手などの関係者もすでに逮捕されている。日本郵便支店長らは、DMが制度適用の条件を満たしていないことを知りながら、発送を黙認していたとの疑いがもたれている。
福祉目的の制度を悪用した企業の罪は重く、これを故意に見逃す行為は許されない。問題のDMを発行元とあて先不明時の返送先が異なるとの理由で発送を拒否した日本郵便の支店もあったのだから、言い訳はできない。
今回の事件は、日本郵政グループ全体の問題としてとらえるべきだが、郵政民営化に全責任を押しつける議論はおかしいだろう。
日本郵政をめぐっては、「かんぽの宿」のオリックス・グループに対する一括売却問題を契機に、政治家を中心に、民営化は誤りだったとの声が出ている。これには、近づく衆院選をにらんだ政治的な思惑がからんでいる。
一連の不祥事でグループのトップである西川善文・日本郵政社長の責任追及は当然としても、それが民営化の流れを逆戻りさせようという勢力と結びつくことには警戒が必要だ。
「かんぽの宿」で露呈した手続きの不透明性、障害者郵便不正で明らかになった法令順守意識の低さは、むしろ、民営化前からのお役所的なおざなりのチェック体制、さらには不祥事が続出した社会保険庁と通じる官僚体質の表れとみるべきである。
無用の政治介入を許さぬためにも、日本郵政が自らの手で、組織上の問題点がなかったのか、社員の意識改革が遅れていなかったのかなどを厳しく検証しなければならない。そのうえで組織の体質を改善することが、再発防止には不可欠だ。最も重要なのは、日本郵政の自浄能力なのである。