昨年秋以降の世界的な金融危機に伴う日本経済の落ち込みは戦後最悪だったことが統計でも裏付けられた。内閣府が発表した1―3月期の国内総生産(GDP)速報値は前期比、年率換算で15.2%減と戦後最大の減少率になった。昨年10―12月期の同14.4%減に続く2・四半期連続の2ケタのマイナスだ。
予想されていた数字ではあるが、あらためて世界金融危機が、日本経済にもたらした傷跡の大きさをうかがわせる。昨年秋の米大手証券リーマン・ブラザーズ破綻以降の危機の広がりは、世界的な需要の冷え込みを通じて日本の輸出を直撃、その影響が個人消費や設備投資など内需にも幅広く広がったのが1―3月期のGDPの大きな落ち込みの原因だ。
この統計だけをみると、日本経済はお先真っ暗のようにみえるが、最近の経済指標には下げ止まりの兆しを示すものも出始めている。
3月の鉱工業生産は、半年ぶりに前月比プラスに転じ、4月、5月の予測指数も改善が見込まれている。昨年末以降の在庫調整の効果が表れ企業が減産のピッチを緩めてきたからだ。急激に落ち込んだ輸出も中国向けの素材などを中心に回復の兆候がみられる。
民間エコノミストの間では、4―6月期のGDPは5・四半期ぶりにプラスに転じるとの予測が多い。日本経済は昨年10―12月期と今年1―3月期が最悪期で、そこから立ち直りつつあるという見方も出ているが、本当に下げ止まるかどうかはまだ予断を許さない。
その大きなカギを握るのは米国経済の動向だ。米国でも最近は明るい経済指標も出始めているが、危機で傷んだ金融機能の回復は道半ばだ。米国向けの輸出が危機前の水準にすぐに戻るとは考えにくい。自動車、電機など日本の輸出企業も収益回復の道筋はまだ描けず、雇用や所得も当面厳しい状況が続くだろう。ここ最近、為替相場が円高・ドル安に再び振れているのも不安材料だ。
ジェットコースターの下り坂でどこまで落ちるかわからないという恐怖感がひとまず和らいだというのが、今の日本経済の姿だろう。平らな道に入ったと思ったら、再び下り坂に入るリスクは残っている。
政府・日銀は景気下支えのために財政出動や金融緩和を打ち出してきたが、今後も景気動向に応じて機動的に効果のある政策を打ち出すべきだ。また、日本経済を持続的な成長軌道に戻すには、産業構造の転換を促す規制改革など成長力の強化につながる構造改革も欠かせない。