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社説:最悪GDP 家計を元気付ける時だ

 内閣府が20日発表した今年1~3月期の国内総生産(GDP)統計速報は、過去最悪の数字が並んだ。実質成長率は前期比4・0%減、年率換算では15・2%減である。前年同期比でも4四半期連続マイナス成長になったあおりで、9・7%減まで下がった。名目成長率も前期比2・9%、年率10・9%の減少である。

 年度ベースでも08年度は実質3・5%、名目3・7%と過去最悪のマイナス成長となった。

 景気が昨年末から今年1~2月にかけて急激に悪化したことがGDP統計の上でも証明された。

 その一方で、このところ、景気の先行きには底打ちや小幅改善の動きも出てきている。代表的なものは3月の鉱工業生産が増加に転じたことだ。金融市場混乱も小康状態にある。株価も世界的に回復基調にある。

 最近になり、先行き楽観論が台頭してきたのは、こうしたことの反映だ。政府は現在、参院で審議中の09年度補正予算案が成立すれば、経済を3%程度押し上げる効果が表れると試算している。ただ、それでも政府は3・3%のマイナス成長と見ているのだ。

 海外をみても肝心の米国では4月に住宅着工が過去最悪を記録したように、とても景気底打ちを語れるような状況にはない。こういう時期だからこそ、本質をとらえた経済政策が講じられなければならない。

 そこでやらなければならないことは明確だ。家計が経済を支える構造の回復である。1~3月期のGDP速報では民間企業設備投資の過去最大の落ち込みや輸出の急減に目が向かいがちだ。しかし、最も深刻なのはGDPの約56%を占める家計最終消費支出の減少が定着したようにみえることだ。07年ごろまでは家計支出が下支えの役割を果たしていた。それが様変わりしたのは所得減少や失業増加のためだ。

 こうした環境変化を勘案すれば、企業への支援よりも、失業対策や再就職支援、雇用創出策中心の政策が必要なことが導き出される。こうした政策は安心や安全の実現にも、経済社会の活力回復にも寄与する。審議中の09年度補正予算案では、従来に比べれば雇用対策などに多くの予算が配分されているが、成長戦略には及ばない。相変わらず供給側に軸足が置かれている。

 海外需要に過度に依存する経済の弱さは今回の世界危機でも経験した。企業設備も外需向けで高い伸びを続けてきた。こうしたことが夢と消えたいま、内需の柱である家計を元気付けること以外に、本質的な経済再生策はない。補正予算案をより効果のあるものにすることも、有効な選択肢である。

毎日新聞 2009年5月21日 東京朝刊

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