2006年5月16日(火)
「いま、いいたいことが言える世の中ですか?」
思いがけず、向こうからの返信は早く来た。こちらの送信から一時間としないうちに届けられたのだ。時刻は午前2時。こんな時間にまだ会社にいるのか、と少し驚いたが、考えてみれば相手は新聞記者。朝刊担当ならなんの不思議もないことだった。
今度のメールも、文体は前と似たようなものだった。通常、こういう文体で書く人物らしい。
特に重要な、主題となる部分は、こんなものだった。
*1テーマは、「いま、いいたいことが言える世の中ですか?」という感じのものです。
* * *
ネットで匿名で言論活動をしている人は、その主張のスタンス、右か左かはさておき、おおっぴらに何でも主張できるわけではない、というのが現状だと思います。
* * *
そうした主張は、新聞やテレビといった既存メディアが、これまでカバーしきれなかった様々な人の様々な思いであると、自省も込めて感じています。
* * *
「ネット右翼」というものは、存在しないと思っています。
ほほう、と興味を惹いたのは、『ネット右翼は存在しないと思う』という一節だった。それだからネット上で言論活動をしているブロガーに直接話を聞きたい、ということも書かれてある。“既存メディアが、これまでカバーしきれなかった”という反省が述べられていることにも目を惹かれた。
ネット上で根深い「メディア不信」に絡んで、自己批判的な記事でも作るつもりなのだろうか、と思った。
しかし――相手は「朝日新聞」だ。
簡単に言葉を鵜呑みにするのも怖い。
そんな俺の警戒心も、「メディア不信」に基づくものだ。
“ネット右翼”の存在など考えなくとも、ネット上で既存メディアを批判する声は、賞賛や信頼のそれよりもはるかに大きい。その声の中に、俺自身も含まれていることは間違いない。
朝日新聞は、とりわけ重要な批判対象と言ってもいい。俺もたまにエントリーで俎上に上げている。
「何かあった時」には必ず「また朝日か」と言われネタにされ、叩かれるのが朝日新聞だ。そして実際、叩かれてもしょうがないような記事を書いていることが多い。最近は東京(中日)新聞や毎日新聞が猛追しているが、批判されやすい記事、という面で朝日の“優位性”はまだ揺らいでいない。
――と、これらは保守とか右派、それら思想にシンパシーを感じる勢力から見た朝日新聞のことだが、では左派はどうかと見ると、これもまた朝日は批判の対象となっている。ただし、電波を飛ばすようなカタカナサヨクの話ではなく、新左翼も含めた左翼からの話だ。自分で見聞した範囲のものでしかないが、ネット上でもそうした立ち位置からの朝日新聞批判というのはわりと見かける。市民運動家・活動家のメーリングリストであるAMLを眺めても発見できる。
卑小な実例ではあるが、人権擁護法案の報道も思い出される。右派は「メディアは真実の危険性を報じない」と批判し、左派は「メディアは役立たずの法案に迎合している」と批判したのだ。
とまれ、これほど批判的な目で見られている「メディア」からの言葉だ。『ネット右翼は存在しない』と書かれていても、はいそうですかとは信じがたい。
しかしどこかで「信じるポイント」を打ち込まなければ話が先に進まないのも世の常だ。
それに、こうハッキリと言い切った記者が、どんな記事を作るのかというところにも興味がある。『いま、いいたいことが言える世の中ですか?』というテーマと、ネット右翼の絡み方もどうなるのか見てみたい。
警戒心は捨てない方がいい。俺が“ネット右翼”の代表格のような形で記事化されることは想定しておこう。対応策を練ることも忘れずにいた方がいい。
そして“ネット右翼”という言葉が「使われるかもしれないこと」への対応策は、俺自身だ。
電波なカタカナサヨク*2から“ネット右翼”と呼ばれたことはあるから、俺がそう扱われてもまったくの間違いではないだろう。そうした立ち位置からは、基本が保守の方に寄っている俺は、“ネット右翼”に見えるものだろうから。
しかし実際のところ、俺は“ネット右翼”ではないという自覚があるし、ブログの内容をその証左とすることもできるだろう。少なくとも“右翼”的ではない。非常に端的な例では、俺は靖国神社に対して、必要最小限以上の敬意は持っていない。参拝したことも一度もない。
もしも、朝日新聞が俺を槍玉に“ネット右翼”を攻撃するとかの方向性で記事を作ったなら、俺自身を証拠に『そんな記事はでたらめ』と言うことが出来るだろう。俺の扱いが多数の中の一人でしかないとしても、ないよりはマシだ。
そう思い定めた上で、俺はさらに返信のメールを書いた。
「ネット右翼」という言葉が語彙にあるくらいですからご存じでしょうが、御
社はそう呼ばれてしまうような人たちからすると、まったき「敵役」となってお
ります。そんなところから現実的な記事が出るとしたら、いささかの注目を集め
ることになるでしょう。それを期待したいという意味も込めて、取材をお受けさ
せて頂きたいと思います。
その夜のうちに、さらに一通ずつのメールがやりとりされ、4月17日の週に取材を受けるというところまで話を決めた。具体的な日付や時間は、ここでは決めなかった。予定のない俺が自由に時間を取れるので、適当に都合の良い日時を連絡してくれ、と書き送っておいた。
次のメールが来たのは、まさに週が明けた4月17日の昼過ぎのことだった。
(つづく)
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文章にも筋トレが必要だ
日記 |
昨日書いた「萎縮の構図編」のエントリーを読み返して萎え(;´Д`)俺ってこんなに文章下手だったっけかな。やっぱ推敲は大事なのです。
推理作家の大沢在昌氏のエッセイだったかで読んだことだが、同じく推理作家(というかハードボイルド作家、あるいは最近だと歴史作家か)の北方謙三氏のエピソードとして、「どんなに酒に酔って自宅に帰っても、一日にほんの数行でもいいから小説を書く」ことを自らに課していたそうである。ピアノのレッスンなどでも同じようなことを聞くが、ようするに「日々の修練」がないと、文章力というのはてきめんに落ちるということだ。これは実感するところでもある。
もちろん、ブログを書いていても小説的な文章が上達するわけではないことは言うまでもない。
そんなわけで「萎縮の構図編」の続きは鋭意執筆中です。別に推敲はいたしませんです、ハイ。書いたら書きっぱなしジャーマン。
グンクツの音
観察記 |
『となり町戦争』は第17回小説すばる新人賞の受賞作。*4おもしろそうだなと興味を惹かれつつも、発表当時、既に世をはかなむモードに切り替わっていた俺は結局のところ読まずにいる。
amazonによればこのようなあらすじ。
ある日届いた「となり町」との戦争の知らせ。僕は町役場から敵地偵察を任ぜられた。だが音も光も気配も感じられず、戦時下の実感を持てないまま。それでも戦争は着実に進んでいた―。シュールかつ繊細に、「私たち」が本当に戦争を否定できるかを問う衝撃作。第17回小説すばる新人賞受賞作。
その作品が映画化されることになったわけだが、なんか食いつかれそうな餌がちらほら。太字にしてるのが餌の部分。
原作でも映画でも、どの地方を舞台にしているかは特定されていないが、撮影には愛媛県東温市が全面協力を申し出た。04年に合併で誕生した同市は、この映画を町おこしのきっかけにしたいと期待している。市役所7課から16人を集め「となり町戦争推進班」を編成、ロケ地確保や道路使用許可、エキストラの用意、広報などを行う予定だ。
実は、作品にも「となり町戦争推進係」が登場する。推進する対象が、映画か戦争かという大きな違いがあるが、ユーモアをきかせた企画に、職員たちも大乗り気だという。全面協力に、配給の角川ヘラルド映画は「先行公開も考えていきたい」と話している。
「となり町戦争」江口&知世が初共演 - シネマニュース : nikkansports.com
(-@∀@)役所が『戦争推進』なんて嘆かわしい! 軍靴の足音が(ry
そこまで空気読めない&洒落も通じない人がいるのか、とも思うのだが、そういう予想を斜め上にぶっちぎるのが電波というものである。
読めば削除どうぞ。
「軍靴の足音が聞こえてきそうだ」といったフレーズは、朝日などで決まり文句として使われてきたので、ヲチャーにはロマンを感じる領域に達しているため、心をこめてグンクツと呼ぶのです。
は置いといて、ご活躍は前世紀末頃ではなかったでしょうか?
デビューはスニーカーあたりで。
カタカナがポイントね(´∀` )
朝日の投書欄が元ネタになるのかね。「日本が、戦争が出来る国になろうとしている。軍靴の足音が聞こえてくるようだ」みたいな結びの投書がやけに目に付いたあたりから発生した言い回しだと思う。ヲチ好きなら憶えておいて損はないぞw
>スニーカー
前世紀末デビューは確かだけど、スニーカーじゃない。『Theスニーカー』の読者投稿コーナーで投票一位をもらったことはあるけどね。
了解でっす。
97〜99年頃に、何を思ったのか各レーベルの新人賞作品を根こそぎ買っていたので、ひょっとしたらその中に……などと思ったもので。
ドコから出たのかさえわかれば……ううむ。
試しにお聞きしたスニーカー系、数点出してその後は?って方が多いんですよね。
ファンを続けて10年待ちとか結構ザラでw
だいぶ誇張した挑発的な発言として載せられたのを思い出しました。
もしご入用であれば、mixiへご招待いたします。そのトピにkwsk紹介あり。
おれにメールせれ。huchida○mbj.ocn.ne.jp
教祖の本は古いシリーズは緑背の文庫だと言えば判るでしょうか?
教祖へ
>前世紀末デビューは確かだけど、スニーカーじゃない。『Theスニーカー』の読者投稿コーナーで投票一位をもらったことはあるけどね。
発掘してみようかと思うので何時ごろだったかkwsk
物置を漁れば1号から出てくるので
ハードボイルド風連載物を楽しんでいます。
ふむふむ。
先方からのメールの最後が、
これからどのように記事に昇華したのか・・・。
楽しみです。
多分おいらも読んでる〜♪
その当時なら、出てるラノベほぼ全部買っていたし。
あーーーー すんません当時スルーしてました orz
お気持ち感謝。
mixiには参加していますので、早速見に行ってみますね。
……嗚呼、2作目だけ持ってる!
ドモ、オカイアゲ アリガトウゴザイヤシ
^’ll゜`
(A` )、 ペコペコ
ノノ z乙
しかし何故2巻。
んで、本屋で見かけて2巻購入……なんで1巻置いてあったんだろ?
(´-`).。oO(選本してた27歳黒髪ひっつめ眼鏡司書のおねーさんの趣味だったのかなァ)
写真入りで詳しく。
http://www.jcstaff.co.jp/java/rod/chara/05yomiko.htm
落ち着け、教祖。
『当時』27だったのか、『現在』27なのか、それが問題だ。
読子さんではなく、敢えて言うなら室町由紀子警視っぽいかと。
本とは関係ないですが。
ちなみに朝の挨拶は「おはやう」(あ〜る風)でした。
十分です。どーんときなさい。どーーーんと。
スネーク、速やかに詳細なデータを送れ。