「ナンジャモンジャの木」をご存じだろうか。この名を初めて耳にしたのは確か三年ぐらい前、東京勤務の時だ。冗談のような呼び名だが、明治神宮外苑や台東区立御徒町公園に由緒ある巨木があり、銘板も設置するなど大切にされていた。
そんな珍木に岡山でもお目にかかれる。昨日の本紙倉敷都市圏版に倉敷市浅原、安養寺境内にあるナンジャモンジャが紹介されていた。今が開花期で、白い花が枝を覆い「季節外れの雪をかぶったよう」と報じていた。
正式名はヒトツバタゴという。国内では岐阜、愛知、長野県と長崎県対馬に自生し、天然記念物に指定された木もある。
国内各地にはヒトツバタゴ以外にもナンジャモンジャと呼ばれた木がある。千葉県神崎町の神崎神社のクスノキ、茨城・筑波山のアブラチャン、伊豆・三島神社のカツラなど。昔の人は正体不明の大木をナンジャモンジャと呼んだのだ。
植物学者の牧野富太郎は「牧野植物随筆」(一九四七年)にユーモラスな一文を残している。各地のナンジャモンジャを評価したうえで、神崎神社のクスノキを「本物」とした。その名にふさわしいたたずまいを持っていたのだろう。
今やナンジャモンジャといえば、ヒトツバタゴが代表格だ。初夏に雪の風情が「なんじゃ、この木は」と驚きを誘う。