フランスで製造したプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料が日本に到着し、長年の懸案だった原発のプルサーマルが実現する見通しとなった。
プルサーマルは、原発の使用済み核燃料を再処理しプルトニウムを分離、ウランと混ぜたMOX燃料を普通の原発で燃やす方式だ。核兵器に転用可能なプルトニウムをため込まず、ウラン資源の有効利用とエネルギーの安定供給を目指す「核燃料サイクル」の柱の一つとされる。
日本は英国とフランスに再処理を委託、分離された核分裂性プルトニウムを約二十五トン保有する。単純計算で原爆三千個分以上に相当する量だ。早急に消費することが国際的に求められており、プルサーマルの始動はその第一歩となろう。
海上輸送されたMOX燃料は、中部電力浜岡原発(静岡県)、九州電力玄海原発(佐賀県)、四国電力伊方原発(愛媛県)へそれぞれ搬入される。順調なら九州電力が玄海3号機で八月からの定期検査でMOX燃料を入れ、十一月にも国内初のプルサーマルを始動させる。四国電力、中部電力でも来年以降、発電を始める予定だ。
欧州からのMOX燃料輸送は一九九九年、二〇〇一年に次いで三例目である。これまでは東京電力と関西電力の原発向けだったが、関電の燃料を製造した英国でデータ捏造(ねつぞう)が判明、東電は原発トラブル隠しが発覚するなど不祥事が相次ぎ、プルサーマルは実現していない。
もともと、プルトニウムを再び燃料に使う「核燃料サイクル」の本命は、効率よくプルトニウムを燃やせる高速増殖炉だった。しかし、原型炉「もんじゅ」が一九九五年にナトリウム漏れ事故を起こし、開発は中断。代わって「つなぎ」として浮上したのがプルサーマルだ。
だが課題もある。一つは安全性の問題だ。MOX燃料の特性で制御棒の効きが若干悪くなるとされる。MOX燃料の製造・輸送費などコスト面の割高を指摘する声や、十数回以上続くとみられる欧州からの燃料輸送でテロや事故の懸念も募る。
プルサーマルには国の許可と地元の了解が必要で、「一〇年度までに十六―十八基で実施」という電力業界の目標達成は不可能な情勢だ。「もんじゅ」の開発はめどが立たず、日本原燃の再処理工場の試運転も難航している。プルサーマル計画が軌道に乗ったとしても、核燃料サイクルの先行きは不透明と言わざるを得ない。地道に安全への信頼を築くことが基本だ。
障害者団体の定期刊行物向け郵便料金割引制度の悪用事件で、大阪地検特捜部は、大量のダイレクトメール(DM)を違法性があると認識しながら発送を黙認したなどとして、郵便事業会社(日本郵便)の新大阪支店長と新東京支店の社員を郵便法違反の疑いで逮捕した。
大阪市の小さな広告代理店の摘発に端を発し、大手企業などが絡んだ一連の事件は、さらに不正をチェックすべき日本郵便に捜査の手が及ぶという事態にまで発展した。不正の連鎖はどこまで広がるのか。
調べによると新大阪支店長は、昨年九月ごろ、福岡市の健康飲料通販会社などのDM計百四十万通を障害者団体向けの低料第三種郵便物制度を利用して格安に発送することを承認。正規料金との差額約一億六千万円の支払いを免れさせた疑いが持たれている。新東京支店の社員も同様にして、二〇〇七年二月に大手家電量販店のDM百三十万通分、約一億四千万円を免れさせたとされる。
日本郵便は昨年冬の不正発覚以降、「被害者」の立場を強調してきた。だが、DMは封筒の表に宣伝文句が入り一見して企業広告と分かる。しかも、障害者団体の刊行物としては不自然なほど一度に大量の発送が行われており、違法性を認識していた疑いが強まった。
障害者福祉の向上を支える制度を食い物にして利益を得ようとする行為には強い憤りを覚える。ましてや、適正に行われるよう確認する立場にある日本郵便の社員まで不正に加担していたとすればもってのほかだ。
不正に手を染めた動機は何だったのか。関与は二人だけか、さらに広がりがあるのか。当局の徹底した真相解明を求めたい。日本郵便が全面協力することは言うまでもない。
(2009年5月20日掲載)