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positive gamma -ヘッジファンド、RVトレード+雑感
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2008/12/13のBlog
GIGINOさんに振っていただいたので(^^)、記録だけ。

記事はこちら(Bloomberg)やこちら(Forbes)などあちこちに書かれているので参照されたし。(日本語ものはこちら(ロイター)など)。被害総額は5兆円(500億ドル)なんてヘッドラインも出てるけどホントかね(^^;。

以下、報道によると彼は証券会社のほかにAscot Partnersという運用会社(ヘッジファンド)も運営していて残高は171億ドル(約1兆7000億円)。彼の運用戦略にラップをかけて自分の商品として売り込んでいた運用会社もいた(Fairfield$7.3bn、Kingate$2.8bnなど)ので被害はかなり広汎なのだろう。ずーといいリターンをあげてた(ことになっていた(苦笑))ファンドだったが、流動性が高いため他のファンドを償還できなかった投資家の償還請求が殺到、70億ドル(約7000億円)の償還請求に耐え切れず観念したということらしい。あーあ、ただでさえ筆者の業界元気ないのに、間がわるいよね(^^;。でも償還が殺到したからこそ明らかになったともいえる。

記事を読むとMadoff証券はNASDAQの名の知れたマーケットメーカーで、でも息子二人も働いてたみたいだから結構家族経営的だったのかも。筆者は会ったことないけど、このおじさんNASDAqのトレーディング部門会長を務めてたり名士だったようだ。息子にもうこれで終わりだ、これまでやってきたのは巨大なねずみ講(英語では大きな事件になったイタリア人Carlo Ponziの名前を取ってPonzi Schemeと呼ばれている)なんだと告白したとのこと。こちらの記事によれば通報したのはこの二人の息子らしいが、邪推すれば息子に通報させて、息子達の逮捕は免れさせ財産もそこそこ維持しようということかもしれないね。だって証券会社側にいたとはいえ兄貴のほうはプロップトレーディングのヘッド、弟は同部門の取締役らしいから、父親のトレーディングで穴があいてるのを知らないわけないとおもうけどね。

富裕層個人投資家のみならず、Bloombergの記事によれば大手FoFなども捕まっている。どうしてこのような規模での詐欺が可能だったかはこれからの捜査の報道を待つしかないが、筆者の感想としてはBayouの詐欺事案などに比べて今回はかなり見つけるのが難しかっただろうなとおもう。

Bayouの場合はファンドの人間が経営に関与している会計士(監査法人)が監査してたりしてたから、ちょっと調べてサービスプロバイダーをみたらチェックした方がいいかなとおもうだろう。だけど、今回はラップして売ってる販売会社も大手で、そのファンドには大手監査法人が監査証明出してるし、Madoff証券もSEC登録当然している。まあSEC登録なんて何の足しにもならないとしても、一応の検査はあるわけで、更にミドルオフィスやバックオフィスなどのいくつかの独立した部門が会社には普通あるから、ポジションをごまかしてたりキャッシュの金額の辻褄が合ってないとどこかの部門の誰かにチェックされそうなもんだけどねえ。。監査のときに銀行残高や証券会社への残高チェックはファンドマネージャ経由ではなくて、当然銀行や証券に直接問い合わせるから、Madoff証券が虚偽の残高証明書でも発行しない限りごまかすのは不可能だけど、ファンドも証券会社も同じ創業者の個人経営会社だということがミソなのかもしれない。。

今年1月のSocGenのトレーダーのときは彼が自分でバックオフィスのシステムを書き換えたりしてたらしいけど、そういうことでも巧妙にやらない限りなかなかだまし続けるのは難しいとおもう。ラップして売ってる会社だって自分の投資家に売る以上、当然ディスクロージャ要求してただろうし、していなければそれはそれで問題。

筆者がこれを探知(detect)できただろうかと考えるに、ひとつ気になるとしたらファンド運用会社と証券会社が兄弟会社なのに取引を専属でやってることと、Madoff証券の監査法人が聞いたこともない監査法人だったということで、それを手がかりに調べていけば確かに結論として気持ちわるいと考えたかもしれないな。ただ、一般的にはファンドにとってはブローカーは単に有価証券を売買するブローカーに過ぎず、今回のように実質シェア100%で一心同体とみなさない限りはあまり気にとめないところだろうね。今回教訓となるところはある。

いづれにせよ残念ながら筆者の業界ではこのようなBlack Swanは常に存在する(まあ詐欺師はどの業界にもいるか(^^;)。結局こういう地雷を踏まないようにするには愚直に投資先の精査(due diligence)をやるということに尽きるのだとおもう。それでも見つけられないときはあるんだろうとおもうが、やれることはやっておくべしだ。自戒の念をこめて筆を擱く。
2008/12/11のBlog
[ 04:45 ] [ クレジットRV戦略 ]
最後にもう一つ注意すべき点は⑦の発行体のコールオプションだ。
債券は株じゃないから満期があるわけだけど、だからといって満期がくるまでずっと100円のままじゃないことはこれまで何回もいろいろなトピックで取り上げている。それこそ大昔にトピックとして取り上げた変国などは15年後には100円だが、今は80円台前半とかとんでもないことになってたよね(^^;。

ではヘトヘトがこの債券をコールするとき(期限前償還するとき)はどんなときかっていうと、何年か後に同じ満期で再調達を考えた場合、より低いクーポンで調達できる場合(財務内容の改善の場合もあるだろうし、市場金利が極端に下がっているとか)や、ヘトヘトの財務内容がすごくよくなって劣後債が必要なくなった場合などが考えられる。通常ここであげたような環境になって、もしコールが付いてなければ、当然この債券は金の卵となるので値段は100円以上に上昇するだろう。つまり投資家は金利低下やヘトヘトの信用リスク改善の恩恵を受けることが出来る。しかし、コールオプションを発行体がもっているということは、投資家はその恩恵にはあずかれない。その権利(コール)を売却しているということなのであり、クレジットと金利の両方(またはいづれかの改善)のオプショナリティーを野村にくれてやってるのと同じわけだ。つまりこの債券は理屈上100円以上にはほとんど確実に上昇しない。なぜならば100円以上の価値をホントにもつのであれば、ヘトヘトはこの債券をさっさと100円でコールして、よりやすい金利で再調達できるからだ。

劣後して返済順位をおくらせてやり、更にアップサイドは投資家として放棄している以上、なんらかの対価はもらわないと損するよね?更にもう一つ言えば、債券の流通市場が機能麻痺に陥っている現在の市場にあって、この債券を買った場合の流動性リスク(換金できないリスク)についてもちゃんと理解をしておこう。株はデフォルトのときの返済順位は最劣後だが、流通市場が整っているので、売りたければすぐ売れるけど、この商品は多分そういうわけにいかないよね。

つまり、①劣後に対するプレミアム、②コールオプションに対するプレミアム、③流動性に対するプレミアム、の三つは払ってもらわないと割にあわないという事が言える。


そこで発行体ヘトヘトの言い分は、その通りです、だからこそ金利は円で3.6%もあるんですよ、ということになるのだろう。

これが高いか安いかはそれぞれの人の判断による。ここではふたつの図表を参考までに掲げておこう。
ひとつめは2017年3月満期の野村ホールディングの優先社債の取引利回り(source: Bloomberg)。満期はほぼ同じ(2016年12月vs2017年3月)だが、今回取り上げたものは劣後債、ここに掲げたものは優先債だ。どのくらい商いがあるか不明だが、優先債のほうは利回りが2.64%くらい、まあだいたいそれに+1.15%くらい上乗せした水準でオファーされているということだね。しかし優先債には発行体のコールはない、一方劣後にはコールがついているので115bpsのうち、このオプション(金利とクレジットの両方)の値段は差し引いて比べなきゃいけない。それぞれの部品に分解してどの部分がどれだけの価値をもってるかを調べて比べた場合の上乗せ幅(スプレッド)をオプション調整後スプレッド(OAS: option-adjusted spread)と呼ぶ。なのでほんとの劣後の上乗せ幅(OAS)はこれよりも小さい。
もうひとつは直近半年のヘトヘトのCDSスプレッドの5年物と10年物の推移。最近は商いが細っているらしいので、どこまで真に受けていいのか若干割り引かないといけないが、8年くらいの優先債務だと年率500bps(5%)くらいのコストになっていることが見て取れる。ビッド・オファー考えても年率4.5%は上乗せしないといけないだろうね。しかもこれは劣後ではなくて優先債務で、なおかつコールは付いていない。8年の円の金利スワップレートは1.2%くらいなので、もしこのCDSを使って8年の優先債券を合成したら、

期間:8年
払い込み:100円
償還:100円
クーポン:5.7%くらい(=4.5%+1.2%)
社債の地位:優先無担保債務

というのが出来上がることになる。
通常は社債市場とCDS市場に裁定関係(arbitrage relationship)が働くはずなのだが、最近は全く働かないんだよね(注)。上記は明らかに今回の発行よりは優位な条件だ。ストラクチャリングコストを入れても1%以上高いクーポンをつくることは可能だろう。まして劣後にして、コールオプションも付けられるのなら、利率的にはるかに優位な債券は簡単に合成出来てしまう。でも個人はこのマーケットにはアクセスできないよね。。まあこういう歪みは昔もサムライ市場とドル建て外債とかでしばしば見られた現象ではあるけどね。だからこそ昔はアービトラージにみんな行ってたわけだけど。。。

ノーベル賞ももらったポール・クルーグマンは、スウェーデンはボルボを作り、ドイツはフォルクスワーゲン(実際の例示はBMWらしいけど(^^;)をつくって双方十分自給できるのに、なぜヘクシャー・オリーンの定理(リカードの比較優位説のもうちょい進歩したやつ:この辺興味あるひとはググればいくらでも解説がある。Nobel財団のWebsiteでもいい)のいうようにはなっていなくて、片方だけが作らないで両方が作ってなおかつ双方が輸入するのかの謎を解いたわけだけど、ファイナンスの教科書からするとありえないようなことが実際の世の中ではしばしば起こっている。これはなぜなのかを解いたら、第二のクルーグマンになれるかもね(^^)。

ともあれ、人生いろいろ、債券もいろいろ((c)コイズミさん(^^))、最終満期が8年と長いので買う人も買わない人も以上のような論点は一応理解したうえで判断すれば、あとで後悔はしないとおもう。(この項了)

(注)詳細は別エントリーに譲るが(ってほんとにそんなエントリー立つのかよ(^^;)、現在の実際のマーケットではより資金を必要とする現物債券のほうがCDSよりも割安になっているケースがほとんどで(みんなおカネが回ってない)、この野村の例はほんとだとしたら極めて珍しい。逆に言えば市場の一般的傾向からすればヘトヘトの現物債券は超割高ということになる。市場参加者が全く異なり、裁定をかける気力のあるプロップデスクのディーラーやヘッジファンドも世の中から消えうせてるが故にこういうことがおこってるのだろうか。現場の人の意見がもらえると嬉しい。→(追記)shiさんとyariさんのコメント欄のコメントを参照されたし。日本市場は現物のスプレッドの方がCDSよりもタイトなのが一般的なようだ。海外は逆。需給のなせる業としか言いようがないけど面白いね。
[ 04:27 ] [ クレジットRV戦略 ]
もうひとつ⑥で出てくる「劣後」の意味だが、これはヘトヘトがデフォルトしたときの返済順位を表わしている。野村は山ほどいわゆる優先無担保社債(senior unsecured bond)を出していて、もし野村がデフォルトした場合はまずこれらシニア債券保有者に返済がなされ、それが全て支払われた後にはじめて劣後債権者に支払われる。実際には企業再生などを行う場合には、協力を取り付ける為に劣後債権者にも一定程度払う約束をしたりすることもあるけれど、あくまで法律上の返済順位においては、劣後債券保有者は、まさに優先債券保有者に「劣後」しているのだ。この債券を買う人はゆめゆめそれを忘れてはいけない。

では劣後債よりさらに劣後しているものはあるか?

答えはYesで、それは優先株や普通株などの「株」である。株はそもそも払い込んでもらったら返す必要のないおカネだよね。そのかわり、最後の財産分配権や議決権などを持っている。

一般に財務諸表では負債と資本が右側にあわせて記載されているが、会社を運営するためのおカネの調達側をまとめてるわけね。調達手段(商品)には当然返済する順番というのがきまっていてその順番は(従業員の給与など法律上保護されている優先債権を除けば)、一般に

「優先担保付債券またはローン」(senior secured bond/loan)「優先無担保債またはローン」(senior unsecured bond/loan)優先株(種類株)(preferred shares, class shares)議決権付き普通株(ordinary shares, voting shares)[>劣後(後配)株]

となっている。どういう商品でどのくらいおカネを調達するかというのをヘトヘトにかぎらず企業の財務担当者というのはあれこれ考えていて、このような企業の資本構成のことを英語ではcapital structureと言っている。一方、有名なモジリアーニ=ミラーの命題(MM命題)によれば企業はその調達をどんなinstrumentsを使っても企業価値には関係しないってのがあるんだけど、まあ話が横道にそれるので興味のある人は適当にググってほしい。

因みに今、クレジット市場で大変なことになっているのは、上記のなかでは一番返済順位が高いはずの担保付ローン市場。ここが暴落しているということなのだ。多くはLBO(レバレッジドバイアウト)のときの株式リターンを上げるための梃子(レバレッジ)として調達されるので、業界ではレバレッジドローンと呼ばれている。でも担保付でキャッシュフローも一番最初に回ってくる、デフォルトしても一番最初に回収資金を返済にまわしてもらえるクラス。詳細は別に譲るけど、CLO、CDOなどの証券化商品市場の崩壊と金融機関の体力の衰弱のなかで、完全に需給が壊れ、一番最上位なのに、100円額面あたり60~65円で取引されている状態(^^;。レバローンではないが、話題のGMやフォードの一時抵当権付きローンなんて40銭とかマジかよと言う水準で取引されていた。なにを担保にしてるのかしらないけど担保の価値ほとんどなしとみられてるってことだね(^^;。一番上位にいるため、今回の危機がおこるまで(正確には2007年7月末にKKRの組成したAlliance BootsのLBOが当初の条件ではうまく行かないことが発覚して延期になった時点まで)、レバレッジドローンなんてほとんど額面のままで取引されていた。過去は実際に企業がデフォルトしても70銭以上では取引された。つまり、現在はほぼ全ての企業がhistoricalな観点からはデフォルトするとみなされて取引されている壊滅状態。TXUのようにちゃんとキャッシュフローがある会社もいっぱいあるのに。。SIVのオンバランス化、証券化市場の機能停止のため、銀行がもってる在庫はまだまだ多く、先日のRBSではないが、みんなに自分のポジションを曝してお願いだから買って頂戴と言ってる状態(こういうのを業界ではBWIC取引と呼んでいる。bid wanted in competitionの略らしいけど、ホント筆者の業界は何でも略すの好きだよなー)。話がそれた。

で、ヘトヘトは多分今回リーマンを買収したり、未曾有の(みぞうゆうではありませんよ(^^;)金融危機のなかで世界中の金融機関の資本不足が言われている文脈で、今回の劣後による資金調達をしにきているとおもわれる。デフォルトしそうになっても返済順位が低いおカネがあればその会社の財務基盤は安定していると言う評価を格付機関からもらえる可能性があるわけだ。もちろん、一番財務基盤安定の観点からいいのは普通株の発行なわけだけど、株式市場がこんなひどいときになかなか普通株の公募増資しても買ってもらえない。それに株の配当は法人税を払った後に支払わなければならない(これに対し金利は税引き前の費用として計上できる)ため、そこそこの配当をはらっていれば実際のコストは結構割高になる。(もう少し続く)
[ 03:07 ] [ クレジットRV戦略 ]
再開するといっておきながら、ほとんど忘れた頃の更新(^^;。
まあマーケット全般が相変わらずひどいんで、元気ないのもあるんだけど、来年の見通し+どの辺で勝負するかを今はいろいろ考えている最中。

ヘッジファンドは償還請求(redemption request)の嵐のなかで苦戦を強いられている連中が続出しているのも事実だが、束の間ではあれ、これから短期間(1~3ヶ月)はそんなわるくないかもな、とはおもう。ま、本格回復はとても望める状態ではないので、所詮はベアマーケットラリーと割り切った方がいいとおもうが、それもGMはじめビッグスリーやAIG救済の逝く、失礼(^^;行く末と、来るべき超円高の可能性次第というのはあるけどね。まあマクロピクチャーの話はそのうち。

さてごりさんにコメント欄で質問?をいただいたからというわけでもないのだが、ここを訪問してくださる皆さんの多くは債券よりも株に馴染みがある人のほうが多いとおもうので、今回野村ホールディング(以下「ヘトヘト」または「野村」)が発行する劣後債券を題材に、すこし企業の資本構造(capital structure)とアービトラージ関係について考えてみよう。

ヘトヘトが今回自己資金調達の為に発行する劣後債の条件は彼らのホームページに掲載されている(→こちらを参照)。

野村ホールディングが発行体となる『第一回期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)』いう長ったらしい名前の債券の条件は、大まかに言って以下の通り(詳しくは上記URLを見られたし)。

①債券の発行体:野村ホールディング(野村證券などを傘下に持つ持株会社)
②期間:8年(2008年12月発行、満期は2016年12月)
③クーポン(利息):税引き前3.60%s.a. (年2回の利払い、1.80%ずつ支払う)
④払い込み金:元本の100%(額面100円に付き100円)
⑤満期償還金:元本の100%(額面100円に付き100円)
⑥社債の地位:劣後 
⑦期限前償還特約:2011年12月(3年後)の利払い日以降、発行体である野村は、2016年満期の前に、半年毎にパー(額面100円に付き100円)で当該社債を償還することが出来る。

債券は発行体である野村の発行する借金証書なので、投資家は野村におカネを貸しているわけで、だから利息を半年毎にもらえる。株とちがって借金なのでちゃんと満期がある。でもこの債券の場合には⑦にあるように最短3年債になるかもしれない。でもそれを選ぶ権利があるのは投資家ではなくて発行体であることに注意しよう。こういう期限前償還する権利を発行体のもつコールオプションと呼んでいる。逆に投資家がおカネを返せと請求できる権利を投資家の持つプットオプションと呼ぶ。アジアの転換社債などにはこうした投資家のプットがついた社債が結構出ている。
(続く)
2008/11/14のBlog
[ 09:29 ] [ その他・ヘッジファンド関連 ]
昨日、米国下院の「監視と政府改革に関する委員会」(民主党のWaxman委員長)で所謂大物ヘッジファンドマネージャに対する公聴会が行われた。パネル2で証言したのは、

ジョン・ポールソン(Paulson &Co. サブプライムショート(プロテクションの購入)で一躍有名に。クレジットやイベントを手がける)
フィル・ファルコン(Harbinger 同じくサブプライムショートや資源関連株購入で有名に)
ケン・グリフィン(Citadel.シカゴのマルチ戦略ファンド。もともとは転換社債裁定から出発。マスコミ露出も多いしいろいろ言われるが、会って見ると本人は結構マトモなやつ(^^))
ジム・シモンズ(Renaissance Technology 短期統計的裁定取引の伝説のメダリオンファンドの創業者。数学の大学の先生出身。位相幾何学における業績Chern-Simmons不変量に関する論文は昨今の理論物理の中でも超ひも理論研究者にもっとも引用される論文となってるとか。よくわかんないけどすごいね(^^))
ジョージ・ソロス(Soros Fund Management いわずと知れたヘッジファンドのグル。彼の唱える再帰性「理論」は行動心理学の観点からも納得のいくところ)

の5人。去年の報酬が10億ドル(約1000億円)を超えたひとをピックアプしたとか(^^;)。

証言内容はたとえばこちらでみられる。

中味は英語なのだが、ソロスのコメントは今般市場でおこったことを要領よくまとめているので、一読をお薦めする。CDSの中央決済機関の創設については複数が言及している(もちろんひとりは自分も作る側にまわろうとしているケン・グリフィン。シタデル自体が結構大変っていう話はニュースになってるけどね(^^;)。あとはメダリオンがコントラリアンなトレードをする傾向があると言っているのは興味深い。$50億ドルを超える運用をしているファンドだが、ルネサンスの従業員以外投資家がいなくなってしまったので(みんな追い出された)中味がどうなってるのか情報は全く出てこない。きわめて短期でトレードしてるはずだけど、そういう似たようなファンドは何回かやられる機会があったんだけど、そういうときも負けてない不思議。もともとアメリカのヘッジファンド投資家は富裕層からスタートしてるので情報開示とか結構ルースでも通っちゃうところがある。ま、改善は今後も期待できるけどね。

閑話休題

市場はここのところ冷静になっていたが、季節要因なのかまたぞろ年末越え資金の調達が締まってきている感じがするね。インプライドレートがLIBORマイナスの水準で推移してたのに、この一両日であっというまにL+50~60くらいのコストになっている。年末越えの2ヶ月ものはことに厳しい。一方で超過準備に対する付利の弊害?で金融機関同志では中央銀行を介して資金がそろりとまわるようになってきたが、まわってるのは中央銀行経由金融機関の間だけで、実体経済向けにはさっぱり(^^;。GECCの取引レベルはあいも変わらずL+400近辺、日本でもCP発行も減って代わりに銀行に借りにいってる状況。。11月末決算の旧(笑)インベストメントバンクのみなさんは、今年は終わりで開店休業状態。仲介者がいなくなってるのでマーケットは薄くなっている。なんというか、まだおカネがうまく回ってないね。。。
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