バスで通勤する家村春美さんと盲導犬のクワン=19日午前、別府市内
別府市内竈のあん摩マッサージ指圧師、家村春美さん(50)は、五月から盲導犬クワン(雄・一歳)と一緒に勤め先の児玉病院(同市亀川四の湯町)に通勤している。大分盲導犬協会によると、職場が盲導犬の待機場所を設け、ユーザーが盲導犬とともに仕事に通うのは県内初のケース。協会は「盲導犬への理解がさらに深まるきっかけになれば」と期待を寄せている。
家村さんは長年、白杖(はくじょう)で通勤していた。慣れた道とはいえ、一歩進むのも慎重さを要する。昨年「盲導犬と歩いてみたい」という夢を実現させようと考えた。
しかし、盲導犬と通勤するには、勤務中に待機させておく場所が必要。家村さんは盲導犬ユーザーとなるための申請をする前に、協会と一緒に病院に働き掛け、ケージの設置や院内での通路について話し合った。
病院の協力が可能になり、昨年末に申請。今年四月から大阪府の訓練施設で約二週間、自宅で約一週間の訓練を経て、五月の連休明けからクワンとの生活が始まった。
午前八時過ぎ、自宅近くの停留所からバスに乗る。家村さんが座ると、クワンは前の座席の下に潜り込む。約十五分、バスに揺られて病院前に到着。「ゴー(行くよ)」の合図で、バスを降りると、家村さんを導きながら職場を目指す。
クワンとなら安心して足を踏み出せるという。「白杖に比べ歩くスピードが全然違う。気分いいですよ」
クワンの待機場所は、リハビリ室のすぐそば。ケージに入り、家村さんの仕事が終わるのをおとなしく待っている。
児玉病院の川本洋理事長は「医療施設なので、なるべく患者と接触しない方法で通勤してもらっているが、患者の中にも盲導犬を連れている人はいる。今後も進んで協力したい」。
家村さんは「今はまだ通勤が中心だけど、少しずつ一緒に行ける場所を増やしたい。県外旅行にも行ってみたいです」と笑顔で話した。
県内の盲導犬
現在、県内で活躍する盲導犬はクワンを含め19匹。鍼灸(しんきゅう)院を開業しているユーザーや、職場に待機場所がないことから通勤時には盲導犬を利用していないユーザーが多い。盲導犬導入には1匹あたり約200万円が必要。県からの年額補助金は110万円で、それ以外は大分盲導犬協会が負担している。
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