2009年5月20日3時0分
郵便事業会社(JP日本郵便)側が障害者団体向けの郵便割引制度を悪用したダイレクトメール(DM)広告の発送を見逃したとされる事件で、大阪地検特捜部は19日、新大阪支店長の山本光男容疑者(59)に続き、新東京支店郵便部窓口課の総務主任、鈴木智志(さとし)容疑者(39)=千葉県船橋市=を郵便法違反の疑いで逮捕した。
2人は両支店で障害者団体の定期刊行物の審査の責任者で、ともに容疑を認めているという。また、審査にかかわった両支店のほかの社員ら約50人も任意の事情聴取に対し、大半が不正DM発送の違法性を認識していたと話しているといい、特捜部は組織的な見逃しがあったとみて調べる。
特捜部の調べによると、山本支店長は昨年9月、健康飲料販売会社「キューサイ」(福岡市)など2社を広告主とするDM計143万通が割引制度を利用できないと知りながら、大阪府や兵庫県の障害者3団体の定期刊行物として計10回にわたって発送を認め、郵送料1億6243万円を免れさせた疑いがある。
また、鈴木主任は07年2月、元部長が起訴された家電量販大手「ベスト電器」(福岡市)のDM131万通を、会長らが再逮捕された自称・障害者団体「白山会」(東京)の定期刊行物として6回にわたり発送させ、1億4849万円の支払いを免れさせた疑いが持たれている。
山本支店長らは「発行部数の8割が有料購読されている」という割引制度の要件を審査する立場にあった。DMは企業の顧客に無料で送られ、障害者団体の刊行物に見えないが、山本支店長は「本社側が審査していると思った」という趣旨の供述をしているという。
また、聴取を受けた両支店の社員ら約50人は「DMは8割購読の要件にあわないと分かっていた」「前任者が承認していたので、自分が止めるのはおかしいと思った」などと説明。不正が横行するなかで、制度を続けていくことへの苦悩を語る社員もいたという。