跡見学園女子大学 柳上書屋 学長室からの花便り 跡見群芳譜 農産譜

まめ (豆) 

 広義のマメ科 LEGUMINOSAE(FABACEAE;豆科)には、世界に約680属 約20000種がある。種子植物のうち3番目に大きい。
 分類は未だ定まらない。ふつう、これを次の3亜科に分ける。
   ネムノキ亜科 Mimosoideae(含羞草亞科)
   ジャケツイバラ亜科 Caesalpinioideae(雲實亞科)
   マメ亜科 Papilionoideae(Faboideae;蝶形花亞科)
 しかし、この3亜科をそれぞれ独立した科として扱うことがある。
   ネムノキ科 Mimosaceae
   ジャケツイバラ科 Caesalpiniaceae
   マメ科 Papilionaceae(Fabaceae) 
 マメ科 ネムノキ亜科 Mimosoideae(含羞草亞科)〔或はネムノキ科 Mimosaceae(含羞草科)〕には、66属約3000種がある。
   アカシア属 Acacia(金合歡屬)
   Adenathera(海紅豆屬)
   ネムノキ属 Albizzia(合歡屬)
   アカハダノキ属 Archidendron
   ベニゴウカン属 Calliandra(朱纓花屬)
   ハイクサネム属 Desmanthus(合歡草屬)
   モダマ属 Entada(雄藤子屬)
   Enterolobium(蕃龜樹屬)
   ギンゴウカン属 Leucaena(銀合歡屬)
   オジギソウ属 Mimosa(含羞草屬)
   ミズオジギソウ属 Neptunia
   Parkia(球花豆屬)
   キンキジュ属 Pithecellobium(圍涎樹屬)
   Prosopis(牧豆樹屬)
   Samanea(雨樹屬) 
 マメ科 ジャケツイバラ亜科 Caesalpinioideae(雲實亞科)〔或はジャケツイバラ科 Caesalpiniaceae(雲實科)〕には、156属約3000種がある。
   ヨウラクボク属 Amherstia
   ハカマカズラ属 Bauhinia(羊蹄甲屬)
   Brownea
熱帯アメリカに約30種がある
   ジャケツイバラ属 Caesalpina(雲實屬)
   カワラケツメイ属またはナンバンサイカチ属 Cassia(决明屬)
   ハナズオウ属 Cercis(紫荊屬)
   カワラケツメイ属 Chamaecrista
   Cynometra(喃喃果屬)
   ホウオウボク属 Delonix(鳳凰木屬)
   Erythrophleum(格木屬)
   サイカチ属 Gleditsia(皂莢屬)
   Gymnocladus(肥皂莢屬)
   アカミノキ属 Haematoxylum(采木屬)
   タシロマメ属 Intsia(印茄屬)
   Lysidice(儀花屬)
   Mezoneuron(見血飛屬)
   Pahudia(緬茄屬)
   Parkinsonia(扁軸木屬)
   Peltophoron(雙翼豆屬)
   Poinciana(肖鳳凰木屬)
   Pterolobium(老虎刺屬)
   ムユウジュ属 Saraca(無憂花屬)
   センナ属 Senna
   Sindora(油楠屬)
   タマリンド属 Tamarindus(羅晃子屬)
   Zenia(翅莢木屬) 
 マメ科 マメ亜科 Papilionoideae(Faboideae;蝶形花亞科)〔或は狭義のマメ科 Papilionaceae(Fabaceae;蝶形花科)〕には、約455属13000種がある。
   トウアズキ属 Abrus(相思子屬)
   クサネム属 Aeschynomene(合萌屬)
   Alhagi(駱駝刺属)
   ササハギ属 Alysicarpus(煉莢豆屬)
   Ammopiptanthus(沙冬靑屬)
   イタチハギ属 Amorpha(紫穗槐屬)
   ヤブマメ属 Amphicarpaea(兩型豆屬)
   クマノアシツメクサ属 Anthyllis(絨毛花屬)
   ホドイモ属 Apios(土■
{口構えに欒}兒屬)
   ラッカセイ属 Arachis(落花生屬)
   Argyrolobium(銀豆屬)
   ゲンゲ属 Astragalus(黄耆屬)
広義のマメ科最大の属、2000種以上を含む
   Atylosia(蟲豆屬)
   ムラサキセンダイハギ属 Baptisia
   Bowringia(藤槐屬)
   ブテア属 Butea(柳鉚屬)
     ハナモツヤクノキ B. monosperma
東南アジア・インド産、ラックカイガラムシの飼料。ラック lac(ハナモツヤク・シコウ)は、ラックカイガラムシの雌が分泌する樹脂状の物質、臙脂の原料。『週刊朝日百科 植物の世界』4-268
   キマメ属 Cajanus(木豆屬)
   Calophaca(麗豆屬)
   ハナハギ属 Campylotropis(杭子梢屬)
   ナタマメ属 Canavalia(刀豆屬)
   ムレスズメ属 Caragana(錦鷄兒屬)
   Chesnea(雀兒豆屬)
   ホオズキハギ属 Christia(蝙蝠草屬)
   ヒヨコマメ属 Cicer(鷹嘴豆屬)
   フジキ属 Cladrastis(蕃槐屬)
   Clianthus(耀花豆屬)
   チョウマメ属 Clitoria(蝴蝶花豆屬)
   Cochlianthus(旋花豆屬)
   Colutea(膀胱豆屬)
   Corethrodendron(掃帚木屬)
   ツリシャクジョウ属 Coronilla(小冠花屬)
   Craspedolobium(巴豆藤屬)
   タヌキマメ属 Crotalaria(野百合屬)
   エニシダ属 Cytisus(金雀兒属)
   ツルサイカチ属
(ヒルギカズラ属) Dalbergia(黄檀屬)
   ナハキハギ属 Dendrolobium
   ドクフジ属 Derris(魚藤屬)
   ヌスビトハギ属 Desmodium(山螞蝗屬)
   コウシュンフジマメ属 Dolichos(扁豆屬)
   Dolichovigna(台豆屬)
   ノササゲ属 Dumasia(山黑豆屬)
     ノササゲ
(キツネササゲ) D. truncata 日本(本州・四国・九州)特産
   ノアズキ属 Dunbaria(野扁豆屬)
   Eriosema(毛瓣花屬)
   デイコ属 Erythrina(刺桐屬)
   ミヤマトベラ属 Euchresta(山豆根屬)
   Eversmannia(刺枝豆屬)
   エノキマメ属 Flemingia
   Fordia(千花豆屬)
   ハギカズラ属 Galactia(乳豆屬)
   Galega(山羊豆屬)
   Geissaspis(苞覆花屬)
   ヒトツバエニシダ属 Genista(染料木屬)
   ダイズ属 Glycine(大豆屬)
   カンゾウ属 Glycyrrhiza(甘草屬)
   Gueldenstaedtia(米口袋屬)
   Halimodendron(鹽豆木屬)
   イワオウギ属 Hedysarum(岩黄耆屬)
   コマツナギ属 Indigofera(木藍屬)
   Kennedia
   ヤハズソウ属 Kummerowia(鷄眼草屬)
   フジマメ属 Lablab
   キングサリ属 Laburnum(毒豆屬)
   レンリソウ属
(ハマエンドウ属) Lathyrus(香遠藤屬)
   ヒラマメ属
(レンズマメ属) Lens(兵豆屬)
   ハギ属 Lespedeza(胡枝子屬)
   ミヤコグサ属 Lotus(百脈根屬)
   ハウチワマメ属 Lupinus(羽扇豆屬)
   イヌエンジュ属 Maackia(馬鞍樹屬)
   ナンバンアカバナアズキ属 Macroptilium
     ナンバンアカバナアズキ M. lathyroides
南アメリカ原産、世界の熱帯・亜熱帯に帰化、琉球にも帰化。
   Mecopus(長柄莢屬)
   ウマゴヤシ属 Medicago(苜蓿屬)
   シナガワハギ属 Melilotus(草木犀屬)
   ナツフジ属 Millettia(鷄血藤屬)
   Moghania(千斤拔屬)
   トビカズラ属 Mucuna(油麻藤屬)
     ウジルカンダ M. macrocarpa
     カショウクズマメ(ハネミノモダマ) M. bracteata
     ワニグチモダマ M. gigantea
     ハッショウマメ M. pruriens var. utilis
     トビカズラ M. sempervirens(常春油麻藤)
 中国(浙江・福建・江西・湖北・四川・貴州・雲南)に分布。日本には熊本県菊鹿町相良にただ一本があり、特別天然記念物。
   Myroxylon(南美槐屬)
   Onobrychis(驢豆屬)
   Ononis(芒柄花屬)
   ハマセンナ属 Ormocarpum(鏈莢木屬)
   Ormosia(紅豆樹屬)
   オヤマノエンドウ属 Oxytropis(棘豆屬)
   クズイモ属 Pachyrhizus(豆薯屬)
   Parochetus(金雀花屬)
   インゲンマメ属 Phaseolus(菜豆屬)
   Phylacium(苞護豆屬)
   ウチワツナギ属 Phyllodium
   Physostigma(加刺拔兒豆屬)
   Piptanthus(黄花木屬)
   エンドウ属 Pisum(豌豆屬)
   クロヨナ属 Pongamia(水黄皮屬)
 1属1種、クロヨナ P. pinnata
   Priotropis(黄雀兒屬)
   シカクマメ属 Psophocarpus(四稜豆屬)
   Psoralea(補骨脂屬)
   シタン属 Pterocarpus(紫檀屬)
   クズ属 Pueraria(葛屬)
   キンチャクマメ属 Pycnospora(密子豆屬)
   タンキリマメ属 Rhynchosia(鹿藿屬)
   ハリエンジュ属 Robinia(洋槐屬)
   Salweenia(冬麻豆屬)
   Sesbania(田菁屬)
   Shuteria(宿苞豆屬)
   シバネム属 Smithia(坡油甘屬)
   クララ属 Sophora(槐屬)
   Spatholobus(密花豆屬)
   レダマ属 Spartium(鷹爪豆屬)
   Stizolobium(黎豆屬)
   Stracheya(藏豆屬)
   ヒスイカズラ属 Strongylodon
   Swainsonia(苦馬豆屬)
   タデハギ属 Tadehagi
 1973年属として立てられた
   ナンバンクサフジ属 Tephrosia(灰葉屬)
   センダイハギ属 Thermopsis(黄華屬)
   Trifidacanthus(三叉刺屬)
   シャジクソウ属 Trifolium(車軸草屬)
   Trigonella(胡盧巴屬)
   ハリエニシダ属 Ulex(荊豆屬)
   フジボグサ属 Uraria(兔尾草屬)
   Urariopsis(算珠豆屬)
   ソラマメ属 Vicia(野豌豆屬)
   ササゲ属 Vigna(豇豆屬)
   Whitfordiodendron(大莢藤屬)
   フジ属 Wisteria(紫藤屬)
   スナジマメ属 Zornia(丁癸草屬) 
 日本語のまめ(豆)は、その種子を食用に供せられるマメ科の植物の総称。
 中国・日本などで栽培されている主要なマメ類には、以下のものがある。
(1) 熱帯・亜熱帯起源のもの
ササゲ  Vigna sinensis
 
(V. unguiculata)
 アフリカ原産。
ナタマメ  Canavalia gladiata  熱帯アジア原産。
シカクマメ  Psophocarpus tetragonolobus  熱帯アジア原産。
フジマメ  Lablab purpreus
 
(Dolichos lablab)
 インド原産。
リョクトウ  Vigna radiata  インド原産。
インゲンマメ  Phaseolus vulgaris  南アメリカ原産。
ラッカセイ  Arachis hypogaea  南アメリカ(ボリビア)原産。
ベニバナインゲン  Phaseolus coccineus  中央・南アメリカ原産。
(2) 温帯起源のもの
ダイズ  Glycine max  東アジア原産。夏作作物。
 ツルマメの栽培品。
アズキ  Vigna angularis
 
(Phaseolus angularis)
 東アジア原産。夏作作物。
 ヤブツルアズキの栽培品。
エンドウ  Pisum sativum  地中海地方原産。冬作作物。
ソラマメ  Vicia faba  地中海地方原産。冬作作物。
 その他、熱帯地方で栽培される豆に、次のようなものがある。
ライマメ  Phaseolus lunatus  中央・南アメリカ原産。
ヒヨコマメ  Cicer arietinum  インド原産。
キマメ  Cajanus cajan  インド原産。木本。
タマリンド  Tamarindus indica  インド原産。木本。
 
 マメは、記紀では末米・末女などと表記された。
 今日の漢語でマメを意味する(トウ,dou)の字は、もとは たかつき(高杯)の象形文字。
 先秦時代には、マメは
(シュク,shu)と記した。菽は、草と叔(小さい)の会意・形声文字で、「小さい実」から来たものと言う。
 源順『倭名類聚抄』(ca.934)に、大豆、一名菽は「和名万米」と。また烏豆は「和名久呂末女」と、■{燕偏に鳥}豆は「和名曽比末女」などと。
 「マメ科植物は湿った地帯にも乾燥地帯にももともとたくさんの種類が野生しており、その多くは雑穀の粒とは比較にならない大きなマメがめだちやすいサヤの中に生じている。ところがこれを食べようとすると、なかなかむつがしい。野生のマメ類には有毒性のものがそうとうあるし、この毒ぬきは一般に有毒なイモの毒ぬきよりむつかしいものである。そのうえマメはかたくて煮えにくいという性質がある。マメを食べるには、ただ焼いたくらいではかたくて食べにくいものがふつうだから、どうしても水を加えてやわらかに煮てやらねばならない。それでマメの食用には鍋がどうしても必要になる。土鍋でも金属製でもよいが、ともかくマメが人間の食料リストにはいるときには、鍋の存在、簡単にいえば、土器の発明以後と見てよい。その鍋で豆を煮てみると、雑穀の精白してない粒より、マメ類のほうがだいたい煮えにくい。だからマメの栽培種は、野生のなかから煮えやすいものを選びだし、また栽培化してからも品種改良で、より煮えやすい方向に淘汰されていかねばならなかった。げんざいわれわれがふつうと考えている食用のマメは、その点ずいぶん改良されてきたものだが、それでもまだ、たとえばダイズを煮るのがなかなかむつかしい作業であることは、台所で煮豆を作った人ならばだれでも知っているだろう。」(中尾佐助『栽培植物と農耕の起源』)
 古代の中国では、五穀の一として主要な主食作物であった。
 菽は、戎菽とも記されるように外来のもので、中原に初めからあったものではない。戦国時代の菽は、おそらく東北地方原産のダイズであろうという。
 後に『周礼』鄭玄
(127-200)註などには 大小の豆を区別しているので、このころからアズキ(小豆)が栽培され始めてダイズ(大豆)と区別されたと説かれる(ただし、たんに大きいマメと小さいマメを区別しただけだ、とする説もある)
 なお、「大豆は菽、小豆は荅」ともあるので、それ以前の菽はダイズであったとされる。
 中国の古代のマメについては、ダイズを見よ。
 日本では、記紀にマメ(末米)・オオマメ(於保末女)と記されたものは、ダイズであったろうという。
 『万葉集』には、

   みち
(道)のへ(邊)のうまら(荊)のうれ(末)には(這)ほまめ(豆)
     からまるきみ
(君)をはか(別)れかゆ(行)かむ (20/4352,丈部鳥)

 近代では、

   とりいれのをはりの豆を打ちをへて筵をたたむ日暮の夫婦
     
(島木赤彦『馬鈴薯の花』)

   ツチヤクンクウフクと鳴きし山鳩はこぞのこと今はこゑ遠し
   稀に来て鳴く山鳩め権
(ごん)さんの畑は掘らず我が畑を掘る
   蒔きし豆二葉を求めあらす鳩憤らむか親しむかはた
   さりながら吾は怒らず怠りて人のする藁を被はざりけり
   この度はこちらも覚悟を新たにし食ふなら食へと数多く蒔く
      
(土屋文明『山下水』1948, 山鳩の賦)
 

     

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