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タミフル"争奪戦" 一般医療機関「備蓄放出を」 大阪や兵庫「市場で足りる」

 新型インフルエンザの感染が広がる大阪府や兵庫県では、一般医療機関から、両府県の備蓄する抗インフルエンザ薬タミフルを市場に放出するよう要望が強まっている。政府が「蔓延(まんえん)期」と認めれば、一般医療機関が患者を診療するが、通常の季節性インフルエンザ流行期を過ぎているため、タミフルの手持ちがない医療機関が多いからだ。しかし、両府県とも「現時点は市場流通分だけで足りる」と備蓄投入には慎重。両者で〝タミフル争奪〟をめぐり綱引きが続いている。

 政府の行動計画では、現在の「国内発生早期」段階では、軽症者も含めて患者全員の入院を定めている。しかし、患者の多い大阪府では、府内の発熱外来や入院先施設の受け入れはほぼ限界。このため、厚生労働省も「蔓延期」以降しか認めていない一般医療機関での診療やタミフル処方も認める方針にしている。

 これを見越して、府内の医療機関から「蔓延期になってから、タミフルが入手困難になっては困る。事前に一定量は必要」とする声が強まっている。実際に、府医師会のアンケートでは、162人の医師のうち、59人(36%)がタミフルの保有数を「1人分以下」、56人(35%)が「5人分以下」と回答。同医師会は18日、府などに対し、備蓄分放出など「早期の安定供給」を申し入れた。

 ところが、大阪府や兵庫県の見解は違う。府は現在、72万人分のタミフルを備蓄。あくまで患者が急増しタミフルが不足した場合、備蓄分を卸業者を通じて投入する予定にしている。府は海外で感染が急拡大した4月28日以降、タミフルを扱う主要卸業者の在庫数の確認をしているが、5月19日時点では計5万7000人分あり、「放出の必要はない」としている。

 ではなぜ、医療機関側に〝危機感〟が募るのか。府の担当者は「極端に言えば、医療機関にはタミフルを患者1人に使うたびに、1人分のタミフルを〝小出し〟するよう卸業者に指導している」という。その理由を「一部の医療機関による必要以上の抱えこみを最も警戒している。偏在すれば患者が迷惑する」と慎重な姿勢を崩さない。

 医療機関と自治体の間で板挟みとなっているのが卸業者だ。ある卸業者は、患者の多い府北部を中心に、タミフルの注文が殺到。医療機関からは「薬の必要性は患者1人だけではない。家族全員に広がる可能性も高く、もっとタミフルを出せないのか」などと詰め寄られることもあるという。卸業者は「タミフルで事態に備えたい医師の気持ちも分かるが、行政の指導にも逆らえない」と困惑している。
 

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