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Crossroads:6月の歌舞伎座、注目の芝居二つ

 ◇仁左衛門が一世一代で与兵衛役

 ◇染五郎の長男が松本金太郎を襲名し初舞台

 6月の東京・歌舞伎座で、俳優にとって画期となる二つの芝居が上演される。一つは昼の部の「女殺油地獄」。片岡仁左衛門が主役の河内屋与兵衛を“一世一代”で演じる。もう一つは夜の部の「門出祝寿連獅子(かどんでいおうことぶきれんじし)」。市川染五郎の長男が四代目松本金太郎を襲名し、初舞台を踏む。【小玉祥子】

 「油地獄」は近松門左衛門作品。油屋の河内屋の跡取り息子である与兵衛は、不行跡のため親に勘当された。そして、同業の豊島屋の女房お吉に借金を断られ、あげくに殺してしまう。与兵衛は自己本位で、今の世にもいそうな人間だ。

 一世一代とは、俳優があたり役を今回限りとして演じること。仁左衛門は1964年に20歳で初演。舞台は評判を取り、出世役ともなった。

 「それまでは、もっと年齢の上の方が演じられることが多かった役。だから『与兵衛はこんな年齢だったのか』と、お客様に新鮮にご覧いただけたのではと思います」と仁左衛門。

 その後も回数を重ねた文字通りのあたり役だ。それをなぜ、6月限りとするのだろう。

 「芸よりもストーリーで見せる芝居だからです。『吉田屋』の伊左衛門や『封印切』の忠兵衛は、芸を作ってからの方が完成度の高いものが生まれる。でも、与兵衛は若い人のエネルギーで見せた方がいい芝居です」

 最後という寂しさはないのか。「その時の精神状態で違いますが、それほどでもありません」

 仁左衛門の与兵衛が芸の“到達点”なら、“出発点”に立つのが金太郎。祖父の松本幸四郎、父の染五郎と獅子を舞う。河竹黙阿弥の原作を書き換え、通常は2人の連獅子を3人にした。

 松本金太郎は幸四郎家にとって由緒ある名。十一代目市川團十郎が初代、幸四郎が二代目、染五郎が三代目を名乗った。金太郎は4歳。07年に本名で初お目見得をしたが、本格的に役を演じるのは今回が初めてだ。

 幸四郎は「60年間役者をやってきたのも、『勧進帳』の弁慶を1000回、『ラ・マンチャの男』を1100回演じてきたのも、今回のためのような気がします」と感慨ひとしおの様子。

 染五郎は「(金太郎は)芝居が好きで、1、2歳のころからストールを頭に巻き、獅子が毛を振るまねをしていました」というエピソードを披露。「第一歩の証人として、舞台をたくさんの方に見てほしい」と語った。

 6月の歌舞伎座公演は3日から27日まで。問い合わせは03・5565・6000へ。

毎日新聞 2009年5月19日 東京夕刊

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