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Contents 08/04/13掲載


新世紀のビッグブラザーへ 著:三橋貴明


【新世紀のビッグブラザーへ】 第二部

 

第八章 青い空の向こう側

 

 いつ頃から始まったのか定かではないのだが、ススムは時々青空が怖くてたまらなくなる。まるで幼気な子供のようで、さすがに恥ずかしさが先に立ち、今まで誰にも相談できないでいた。

 おそらく物心がついた頃からだろうか。少年はごくまれに、いつもは何とも思わない青空が、急に重力を持ち、自分にのし掛かってくる感触を覚えるのだ。

 原因がいったい何なのか、何度も自分の記憶の奥底を探ったが、今のところ解明できていない。何か一つ、大切な事を忘れている気がするのだが、それが果たして何なのか、どれほど頑張っても思い出せないのだ。幾度となく、ススムは心の深みを掘り返したのだが、記憶の糸口さえ見つからなかった。

 もっとも、以前は空が迫ってくるとはいっても、急速に気分が悪くなり、その場にしゃがみ込んでしまう程度で済んでいた。

 だが、西大井のIXの平たい建物で、事務次官の屈強な部下たちに拘束された時。

ススムに襲来した恐怖は、それまでとは全く桁が違う凶悪さであった。IXの窓から蒼色に輝く空を見た瞬間、自分の皮膚や筋肉、骨や内臓が潰され、引き千切られる感覚が、ススムの全神経網を駆けめぐったのである。

それは、苦痛などという生やさしいものではなかった。少年がかつて感じたことのない凶暴な感覚で、自分の身体が失われていく感触が、脳幹をすり潰し、全身の細胞で荒れ狂う激痛であった。

脳内までもが劫火で焼かれているにも関わらず、両腕を厳重に拘束されたススムは、声を絞り出すことさえできなかった。失神寸前にまで高まる苦痛の中、少年はひたすら耐え続けるしかなかったのである。

徐々に身体が痙攣し、視界が薄れ、心が漆黒の闇の中に溶けた。全身が押し潰される感覚は、ススムが頑丈な黒塗りの車に乗せられ、霞ヶ関に移送される間、延々と続いたのである。

 永遠とも思える絶望の時間が経過し、移送車は情報委員会の地下駐車場に滑り込んだ。

ようやく苦痛から開放されたススムは、まるで一年ぶりに呼吸を取り戻したかのごとく、大きく息をついたものである。

地下駐車場に満ちる昏色が少年を包み、青空は闇の彼方へと退いた。真っ当な、人間としての感覚を取り戻したススムは、自分が全身にびっしりと、凍てついたように冷たい汗をかいていることに気がついたのである。

 死。

 そう。ススムを苦しめた感覚は、おそらく、死、そのものなのだ。

 闇の中から伸びてきた死神の手が、ススムに絡みつき、苦痛と絶望で満ちあふれた煉獄へと引きずり込もうとしている。ススムにとっての青空、晴天は、もはや死神の象徴でしかないのである。

 死が自分に迫っていることを、あの蒼い空が自分に思い知らせたのだ。

 死。死が自分を闇の中に手招いている。そして、その恐怖から逃れることは、決して、誰にもできない。

 情報委員会を象徴する漆黒の建物の地下深く、陰惨な小部屋に収監されたススムは、暗鬱な思いに浸り続けた。

 この陰鬱な部屋、情報委員会の牢獄に閉じこめられてから、果たして何日が経過したのだろうか。

ススムはすでに、時間の進み具合を把握できなくなっていた。漆黒と静寂の中で、ススムはいつまでも、いつまでも、飽きることを知らないように死について考え続けていた。

 人権委員会の糾弾会に引きずり出された、あの日。

ジョージ・オーウェルの書籍を自分に差し出した「まほろば」の男は、ススムがもはや生きた屍であると看破した。それが決して間違いではなかったことを、後に少年は思い知った。

 そして現在、ススムが真の意味で屍になる日も、それほど遠い日のことではなくなった。いや、今この瞬間さえも、自分が生きていると、必ずしも断言できない気がする。生きているというのは、これほど孤独で、退屈なものではないだろう。

 そう。ススムが死について考え続けているのには、理由がある。死について思考を巡らせ、頭に刺激を与え続けないと、退屈感で正気を失う予感がするためである。

 何しろススムが放り込まれた小部屋には、食事の差入れ口から漏れる薄明かり以外には、何も目に入るものがない。もっとも、すっかり闇に目が慣れてしまった少年は、部屋の隅にある便器だけは、辛うじて見分けることができた。

用を足すとき、あるいは差し入れられた食事を口にするとき以外は、ただ座って闇と会話を続けるしかなかったのである。

 だから、口元に作り物のような冷笑を浮かべた、いかにも第二・五市民らしい風貌の中年男がススムを迎えに来たときは、心底から嬉しかった。男の目的がススムの尋問、審問であり、事実上の人民裁判に連行されると分かっていたとしても、やはりススムは喜んだであろう。

 実際、どれほど肉体を痛めつけられたとしても、この終わりの見えない退屈よりはましな気がする。

人間が生きるということは、常に何らかの刺激を受け続けることなのだ。退屈感のあまり、狂気に陥りかけていた少年は、はっきりと理解したのである。

 

再び引きずり出された人民裁判は、まるで前回の人権擁護委員による糾弾会をコピーしたように進行し、ススムはすっかり拍子抜けしてしまった。

少年を取り囲み、両腕を振り回して罵倒を続ける十人ほどの男女は、揃って灰色のブレザーを身につけていた。情報委員会の、制服か何かなのだろうか。

彼らは委員会に勤務する「情報官」であると、迎えに来た男が名乗った。彼らは一応、歴とした官僚だ。各地区の市民から選ばれた、人権擁護委員とは異なる。

言っていること、やっていることは、人権擁護委員とまるで瓜二つなのであるが。

「破壊分子の差別主義者! テロリストの人権犯罪人!」

「屑! まさに人間の屑! ゴミ虫! 世界の敵!」

「ニッテイ主義者! お前の将来は、もう終わりだ! テロリストの運命は、十三階段と相場が決まっている」

「処刑方法は決めさせてやるぞ。銃殺と絞首刑と、どっちを選ぶ。残虐なテロリスト!」

「連邦反逆犯! 死にたくなければ『まほろば』について、知っていることを話せ!」

「そうだ。全部話せ! ウヨク分子!」

 ここ数年、第三市民に恐れと畏怖を植えつけていた情報委員会は、この程度のレベルの人間の集まりなのか。皮肉なことに、ススムは再び退屈を覚え始めた。

正直、人権犯罪人だの差別主義者だの、ニッテイ主義者だのウヨク分子だの言われても、少年はもはや全くこたえない。人間はどんな環境、状況にも慣れるものだ。

しかもこんなくだらない連中が、あの、恐怖の情報委員会とは! 自分が実際に情報官に取り囲まれている現実を見ても、とても信じられない。

結局、情報委員会がこれまで第三市民の恐怖の対象だったのは、単に「よく分からない」存在だったためなのかも知れない。人間が見慣れない爬虫類に恐怖を抱くのと、同じようなものだ。

何しろ情報委員会は、何を主目的にしている組織なのか、外からでは内情を窺い知れない。一般市民には情報委員会の活動状況が、何も分からないのだ。

メディアを統制しているのは確かなのだが、そのやり口も詳細は不明だ。情報統制の現場に、情報委員会が姿を見せることは決して無い。

第三市民は、業務内容が不明確な組織だからこそ、逆に何をされるか分からないと、イメージ先行で情報委員会に恐れを抱いていただけなのかもしれない。

ススムは薄ら笑いさえ浮かべながら、情報官たちが必死な形相で自分を罵倒する姿を眺めていた。

 どうせ自分は死ぬ。そう考えると、この口の端から唾を飛ばしながら、必死に悪口雑言を叫び続ける良心勢力の男女が、却って可哀想にさえ思えてきた。

 醜い。ここまで醜く自分の顔を歪め、他人を罵倒することで、生きていくしかない人生なんて、本当に哀れで惨めだ。

「お前のその口は、飾りか! 連邦反逆犯として処刑される前に、せめて知っていることを洗いざらい吐け、蛆虫!」

「そうだ。それがお前のためでもあり、お前の家族のためでもある。連邦反逆犯に連座して、家族が皆殺しにされてもいいのか、ニッテイ分子!」

「お前の姉の身柄を、シンオオクボの連中に引き渡してもいいんだぞ。在三やニューカマーの荒くれ共に、たっぷりとかわいがってもらえる。すぐに耐えられなくなって、自殺だろうけどな」

「家族を助けたいと思うのなら、全部喋れ。何を押し黙っているんだ、差別主義者!」

 無論、情報官たちはススムを人民裁判に掛けているつもりもなければ、糾弾しているつもりもなかった。彼らはただ、ススムから「まほろば」の情報を引き出したいだけなのだ。

 万が一、当局の手に落ちた場合は、知っていることを洗いざらい喋ること。「まほろば」からそう指導されていたススムは、別に罵倒を浴びせられなくとも、自分の知識の限り、情報官たちの質問には丁寧に答えてあげた。

 MIKIが何度も説明してくれた通り、「まほろば」は市民連合以外の地域では、非合法の団体でもなんでもない。

その上、ススムは「まほろば」の組織について、それほど詳しいことを知っているわけではなかった。「まほろば」の構成員で少年がコンタクトしたのは、MIKIとセミンの二人以外にはいなかったのである。

MIKIに至っては、直接顔を合わせた経験さえないのだ。

 情報官たちは罵倒の合間を縫うように、質問を次から次へと浴びせかけてきた。ススムからできるだけ多くの情報を引き出そうと、様々な角度から突っ込んでくる。その辺りは、さすがに情報委員会の一員らしいと言えないこともなかった。

愁傷、ススムは彼らの期待に添えるほどの知識は蓄えていなかったが。

 不思議なことに、情報官たちは今回の違法行為の根幹である、バーティカル・フィルタリング破壊未遂について、それほど核心に迫る質問はしてこなかった。情報委員会はセミンという、裏切り者を手中に収めた。技術的な細かい事は、セミンが全て暴露したであろうから、もはやどうでもいいのかも知れない。

 さらにススムを不思議がらせたのは、情報官たちがあの氷の雰囲気を持つ男について、しつこく聞いてきたことである。少年を「まほろば」に引き込んだ、あの男だ。

「お前は見たはずだ! お前にジョージ・オーウェルの邪本を手渡したその男は、一体誰だ? 誤魔化さずに、きちんと答えろ、残虐なテロリスト!」

「顔を覚えているだろう? 特徴だけでもいい。話せ、凶悪人権犯罪人!」

「話さないと、ろくな目には会わないぞ。今よりももっと悲惨な地獄を見せてやる。差別主義者の市民連邦転覆未遂犯!」

「特に顔だ! 顔を思い出せ! 何か特徴はなかったか? どこかで見たことがある男ではなかったか? 答えろ、豚虫ウヨク分子!」

 どうでもいいが、この連中は一々末尾に醜悪なレッテルをつけなければ、他人に質問することさえできないのだろうか。まさかとは思うが、情報委員会にはそういう内規でもあるのか?

 ススムは何となくおかしくなり、一つ、軽く肩を竦めたものだ。

差別主義者と言われようが、豚虫ウヨク分子と罵られようが、覚えていないものは仕方がない。

あの男から書籍を受け取ったとき、ススムは人権委員会から解放されたばかりであった。当時の少年は完璧に朦朧としており、顔を覚えているどころか、まともに男を見た記憶さえ無いのである。

 

 その後、ススムはほぼ一日おきに情報官の尋問に引っ張り出され、男についてしつこく訊かれた。何度質問されても、少年は「覚えていない」以外、回答のしようがなかったのではあるが。

 そしてある日、ススムは陰惨な牢獄から引きずり出され、いつもとは異なる部屋へと連行された。それは、これまでの寂れた裁判所じみた、閉塞感で溢れた薄汚い審問場ではなく、普通の執務室のようである。

いや、普通と表現するには、据えられたソファーやデスクが豪奢過ぎる。この部屋で執務をする者の正体と趣味が、家具を見ただけで丸分かりのような気がした。

「タチバナススム君」

 高級感に溢れる革張りの椅子から、上品なスーツを身にまとい、眼鏡を掛けた男がススムに呼びかけてきた。口調は丁寧なのだが、その声音には、人の上に立つことに慣れた者特有の傲慢さが満ち溢れている。

 声だけを聞くと、男がネイティブな第三市民であることを疑う者はいないであろう。深みのある、流暢を極めるバリトンで、部屋の主が少年を出迎えた。

 瞬間、ススムの全身が恐怖に泡立った。

 フータートゥンへの恐れからではない。情報委員会の禿頭の事務次官、共産党中央委員でもある第一市民の背後に、ススムを魂の底から戦慄させる存在が見えたのである。

 窓だ。

「っ!」

 ススムは絶叫を上げようとする自分の身体を、力を振り絞って押さえ込まねばならなかった。

「何を脅えているのかね、タチバナススム君。わたしがそれほど怖いのか」

 フーは怪訝そうに眉を顰め、まじまじと少年を凝視したものだ。

「全く第三市民、いや第二・五市民には、使える奴が存外に少ないな。こんなに小さな子供から、情報を引き出すことさえ満足にできないとは。能力がないとは思わんが、根が荒事に向いていないとしか言いようがない」

「・・・」

 ススムは歯を食いしばり、悲鳴が漏れ出るのを抑え続けていた。窓の向こうには、あまりにも鮮やかな晴天が広がっている。天気はまさに、冬晴れである。最悪だ。

「タチバナススム君。我々はどうしても、あの男の正体を知る必要があるのだよ。

チョ君は電話で指示を受けただけで、実際に会ったことは無いと言うし、これまであの男、スキッパーと確実に顔を合わせているのは、我々が知る限りでは君だけなのだ、タチバナススム君」

 全身を震わせるススムを怪訝な目で眺めながら、フーは解説を続けた。

「第三地域では『まほろば』のみならず、相当数の反市民連邦の組織が活動している。その各組織を束ねる位置にいるのが、スキッパーと呼ばれる、あの男なのだよ。

一時はあの男の正体はフジサキタカユキかとも疑ったが、どうやらフジサキはオアフ島を離れてはいないようだ。

そうすると、スキッパーの正体は、一体誰なのだ? これだけ市民連邦の治安組織に追われながら、反連邦のテロリストたちを束ね、しかも顔や本名は決して表には出てこない。

考えられん。第三地域は無秩序と混沌が飛び交う、大陸やアメリカとは違うのだ」

窓から見える大空は、残酷なまでに晴れ渡っていた。

来る。もうすぐ空が、落ちてくる。

「待てよ。この子の話が本当ならば、スキッパーはもしかして、日常的に人権委員会の被害に遭った若者にコンタクトし、工作員の候補を吟味していたのか? 

いや、可能性は高いな。ということは・・・。

しまった! チョ君を利用してこの子から情報を引き出し、各地区の人権擁護委員会をマークすればよかったのか! 早まった・・・。

『まほろば』から連絡がいっただろうから、もう人権擁護委員会には寄りつかんだろうな、スキッパーは。

失敗した・・・。私らしくもない」

フータートゥンが苦虫を噛み潰すような顔を見せた瞬間、ついに青空が窓を抜け、ススム目掛けて落下してきた。

「カーテンを!」

「ん?」

 独白に夢中になり、少年の存在をほとんど忘れていた事務次官は、驚いた風で改めてススムに目をやる。

「カーテンを閉めて!」

 フーは怪訝そうな顔つきで、革張りの椅子から立ち上がった。

「何だね、いったい?」

 激痛が全身に走り、ススムはその場に崩れるように座り込んでしまった。

 潰されていく。自分の皮膚が、筋肉が、骨が、神経が。落下してきた青空にすり潰され、塵と化していく。

「ああ! カーテンを閉めて! 空が落ちてくるから!」

「空が落ちてくる?」

 はじめは仮病を装っているのかと疑ったが、少年のあまりに真に迫る苦しみぶりに、事務次官は考えを変えたようである。

ゆったりとした動作で窓に歩み寄り、事務次官は晴れ渡った空を眺めた。澄み渡った蒼い空は、環境破壊が進んだフーの故郷では、今やほとんど見ることができなくなったものだ。

一瞬、激痛に苛まされるススムに目をやると、事務次官は一気にカーテンを閉め切った。

「う・・・」

 漸く激痛が和らぎ、ススムは脂汗まみれの顔を上げた。面白そうな顔で自分を凝視している事務次官に、感謝と絶望が入り交じった複雑な表情を見せる。

「空が怖いのか? 

面白い症状だな。まさに杞憂だ。

古代の杞人は天が崩れてこないかどうか心配したそうだが、本当に崩れてくる人間は初めて見た。

いつからかね? いや、チョ君が何も言っていなかったから、最近かな」

「・・・」

 激痛の余韻が引かないススムは、返事をするどころではない。

「しかし、何かと軟弱だな、第三市民は」

 ゆったりとした動作で、豪華な椅子に座り直した事務次官は、嘲笑じみた声を出す。

「東トルキスタンやチベットとは、えらい違いだ。

 就任直後に環境委員会から報告を受けたときは、驚いた。まさか本当に、自主的に環境対応を受ける男がいるとは、思ってもみなかった。

しかもOKINAWAでは、三割もの男が、率先して環境対応を受けたそうじゃないか。

 異常だ。生物として、遺伝子に歪みが生じているのではないか、第三市民は」

 フーは骨っぽい指で眼鏡を取ると、いかにも値の張りそうな薄絹のハンカチで、レンズを拭き始めた。

「・・・情報が」

 未だ全身が痺れ、耳鳴りがしている状態ではあるが、ススムは死に物狂いで声を絞り出した。

「・・・情報が間違っているからだ。正しい情報を伝えることができさえすれば、みんな気がつく。

その時、お前たちの支配も終わりだ。情報統制だけに支えられている体制は、統制が失われるだけで、崩壊するに決まっている」

「ほう。情報委員会で、情報事務次官に情報を語るか。面白いな」

 フーは眼鏡をかけ直すと、入り口に慎み深く控えていた情報官を手招きする。ススムをこの部屋へと案内した男だ。

「ヤマシタ君。アレを持ってきてくれたまえ」

 ヤマシタは一礼するのみで、何も答えず、静かな足取りでフーの執務室を出ていった。

「タチバナススム君。君は大きな勘違いしている。

 およそこの世界に、情報を統制していない政府などないぞ。もしもあるというのならば、例をあげてみたまえ」

「・・・あるさ。アメリカだ。

少なくともアメリカは、メディアの統制を行っていない。人々は自由に情報の交換をしている」

 フーの問いに、ススムは気力を振り絞って答えた。伊達に「まほろば」から色々と教わり、知識を蓄えてきたわけではないのだ。共産党中央委員ごときに、口で言い負かされるのは、心底から耐えられない。

身体の痛みは完全には消えてはいないが、会話を成り立たせることができる程度には回復してきた。

「アメリカねえ」

 情報委員会の事務次官は、面白そうな表情を浮かべた。これまた値段の張りそうなマホガニー製デスクの上に、無造作に投げ出されていたリモコンを拾い上げる。

 執務室の壁には、百インチはありそうな巨大なOELモニターが据え付けられている。フーは慣れた手つきでリモコンを操作し、システムを起動させた。

「それも勘違いだよ、タチバナススム君。アメリカは君が思っているほど自由の国ではないし、平和な国でもないぞ。

 歴史上、アメリカは何度も自国民への大虐殺を行っているのだからな。

 例えば、これを見たまえ」

 巨大なモニターに、いきなり大勢の若者たちが映し出された。ちょうど、ススムと同じ年頃と思われる者が多かった。

若者だけではなく、少し年齢がいった、労働者風の一般の市民も混じっている。

数え切れないほどの大勢の男女が、テレビカメラの前でシュプレヒコールを繰り返し、何やら気勢を上げている。

そこに、轟音と共に軍隊の装甲車が突入してきた。装甲車は慈悲の欠片もなく、勢いよく若者たちを跳ね飛ばしていった。

場面は一気に阿鼻叫喚の修羅場と化し、悲鳴を上げて逃げまどう人々を、カメラが懸命に追い続ける。カメラマンの必死さが、映像を通しても伝わってくる。

 機関銃の銃声が鳴り響き、まさに薙ぎ払われたように人々が倒れていった。

装甲車に引き続き、キャタピラでアスファルトを削りながら、巨大な戦車が登場した。若者たちは戦車の前に立ちふさがり、進入を防ごうとする。

だが、戦車は容赦なく前進し、無情にも若者たちを踏み殺していった。

「この映像は、アメリカの首都であるワシントンDCの、エリプス広場の出来事だ」

 魅入られたようにモニターから目が離せないでいるススムに、フーは淡々と解説した。

「民主化を求める学生や、物価高騰に怒る市民が、ホワイトハウス前のエリプス広場に集まった。彼らの抗議に、アメリカ政府は軍隊を派遣することで応えたのだ。

アメリカの残虐さには、世界中が怒り狂ったが、何しろ、世界唯一の覇権国の所業だ。誰もが最後には、沈黙するしかなかった。

あるいは、こんなのもあるぞ」

 フーは手元のリモコン上で、素早く手指を走らせた。

 次に映し出された映像は、雪深い山上の光景だった。赤い僧服をまとった少年たちが、綺麗に列をなして山道を歩いている。

 そこにカーキ色の軍服を着た男たちが現れ、無言で少年たちに銃を向けた。

 次の瞬間、銃声が響き渡る。

 人間離れした冷酷さで、男たちは少年僧を撃ち殺していった。

だが、不思議なことに少年僧たちは逃げようとはしなかった。隣を歩く者が撃ち倒されても、誰一人列を乱そうとはせず、厳かな態度で歩き続ける。どこか神秘的で、幻想的な光景だった。

僧たちの行列が行き過ぎると、射殺された少年たちの死体が雪上に散乱していた。

 降り積もった雪が、少年たちの血で赤く染まる。その上に、粉雪が降りかかり、蛮行の後を徐々に覆い尽くそうとしている。

「これはアメリカ西部の巨大山脈、ロッキーでの出来事だ。

 アメリカは西部開拓時代に、土着のインディアンを、ほとんど皆殺しにしてしまった。さらに生き残りを『保護区』と称する地帯に押し込め、事実上の隔離政策を採っていたのだ。

 一部のインディアン僧、特に若い僧たちがロッキー山脈を越えて、自由地帯に逃亡を図った。するとアメリカ軍は、躊躇することなく部隊を派遣し、容赦なく子供たちを撃ち殺したのだ。

 これがアメリカの現実だよ、タチバナススム君」

「・・・」

「アメリカが情報統制をしていないなどと、幻想もいいところだ。

 大体、君はアメリカの何を知っているというのかね。アメリカに行ったこともなければ、そもそも第三地域から出たこともないだろうに」

 再び場面が移り変わったOELモニターでは、二人の少女の処刑シーンが映し出されていた。貧しそうな衣服を身につけた二人の少女が、後ろ手に縛られ、軍服の男たちに連行されている。

 銃声が二つ、鳴り響く。

 少女二人は銃弾に頭を吹き飛ばされ、顔の上半分が消失した無惨な死体が、モニターに克明に写し出される。

「惨いことだ・・・」

 フーはいかにも偽善者風な口振りで同情してみせる。大げさに両手を広げ、わざとらしくかぶりを振った。

「結局のところ、大陸もアメリカも支配構造が存在するという点で、何ら変わるところはない。支配者は自分に逆らう者を、女子供であろうと容赦なくエリミネートする。それが権力というものだ。

 情報についてもそうだ。

 権力を持つ支配者は、情報をコントロールするし、民衆は与えられた情報しか受け取ることはできない。

そもそも、君が持っているアメリカの情報は本物なのか? タチバナススム君。実際に行ったことがないのに、なぜアメリカをそこまで信頼できる。

 いや、それ以前に、アメリカは本当に存在するのか。アメリカがあるということを、なぜ信じられる。地図に載っているからかね?

もしそうだと言うのならば、見たまえ」

 フータートゥンが何やら操作をすると、いきなり画面に巨大な世界地図が映し出された。

「この地図で、太平洋の東側にあるのがアメリカ大陸だ。だが、こうやって・・・」

 唐突に、世界地図から北アメリカ大陸が消失した。

「こうして、地図からアメリカを永遠に消し去ってしまえば、アメリカは存在しないことになるわけだな。人間の認識など、その程度のものでしかないのだ。

 我々は見せられたものしか、見ることができないし、知らされないことを知ることはできないのだ。

 お、来たかね、ヤマシタ君」

 執務室の分厚い扉を押し開け、先程の情報官が戻ってきた。その手には、何やら小型装置のような物が握られている。

 苦痛と滲む脂汗で視力が落ちているススムではあったが、ヤマシタの手にある物が何なのか、一目で分かった。かつてススムの心の拠り所であった、SuperWiMAXの端末だ。

 ヤマシタ情報官はススムの脇を通り過ぎ、恭しい動作で端末をフーに差し出した。

「これだ、これ。これは君の端末だな」

 事務次官は淡々とした口調で少年に問いかけ、両手で端末を操作し始めた。

(えっ!)

 ススムは心底から仰天し、思わず叫び声を発するところであった。

SuperWiMAXの端末は、ススム以外には操作できないように、生体認証が掛けられていたはずだ。

 悲鳴は飲み込んだものの、驚きが顔に出てしまったのであろう。まるでチェシャ猫のように怪しげな笑みを見せ、事務次官は面白そうな声を出した。

「ん、どうしたのかね? 

もしかして、生体認証が働いていないことに、驚いているのかな? あれならうちの技術官が、とっくに解除してくれたよ。

技術はまさに、日進月歩だ。いつまでも一つの手法でセキュリティを保てると思う方が、間違っているのだ」

 衝撃のあまり、思考停止状態に陥り、少年はその場にへたり込んでしまった。

 端末にはススムがこれまでに学んだ情報や、MIKIとのやり取りなど、大量のデータが保存されている。しかし生体認証の仕組みがある限り、データを抜かれる事はないと安心していたのだ。

 セキュリティが破られた以上、ススムは丸裸にされたも同然である。少年が大切に保存していたMIKIの映像も、一つ残らず情報官たちに見られてしまったわけだ。

「ん・・・。どれだったかな?」

 ススムの心中を推し量ることもなく、フーは何やらデータを探している様子だ。

「お、これだ、これ」

 SuperWiMAXの端末を、ススムに差し出す。

「タチバナススム君。愛しの彼女から君宛に、ビデオメールが来ていたぞ。我々は親切にも、消さずに保存しておいてあげたのだ。真剣に感謝したまえ」

 端末の画面では、まるで人形のように顔立ちが整った少女が、愁いの表情を見せていた。MIKIだ。ススムの心臓が、唐突に早鐘を打ち始めた。

 画面上のMIKIは、ススムにあの特徴のある、深海色の瞳を向けたまま、沈黙している。何か言いたそうな素振りを見せるのだが、決心がつきかねる様子だ。

 そして、何度も躊躇う様子を見せた後、少女は語り始めた。

「ススム、愛してる。ススム、愛してる。ススム、愛してる」

 MIKIのあまりの台詞に仰天したススムは、腰が抜けたように、その場に力無く崩れ落ちてしまった。

「ススム、愛してる。ススム、愛してる。ススム、愛してる」

 少女は相変わらず寂しそうな表情を浮かべ、同じ台詞を繰り返している。

「ススム、愛してる。ススム、愛してる。ススム、愛してる」

 いや、違う。これはMIKIではない。顔の動きがあまりにも単調だし、その上、いきなりMIKIがススムに愛を語るなど考えられない。

 この映像は、明らかに実在の人間のものではない。作り物だ。

「CG(コンピュータ・グラフィック)じゃないか!」

 怒りでアドレナリンが全身に分泌されたのか、いつの間にかススムの身体から痛みが消え去っていた。身を起こし、憤怒の顔つきで詰め寄ってきた少年を、フータートゥンは軽く手で制した。

そして事務次官は落ち着いた口調で、驚愕の事実を告げたのである。

「フジサキミキは、十年前に死亡している」

「!」

 あまりの衝撃に、一瞬で全身が凍りついた少年に、フーは淡々と言葉を重ねる。

「『まほろば』の創設者であるフジサキタカユキの長女、フジサキミキは、奴がアメリカに渡る前にすでに死亡している。彼女が十八歳の時だ。

フジサキはアメリカのAI(人工知能)技術者の協力を得て、コンピュータ・グラフィックとして娘を蘇らせたのだ。

このAIはなかなか優れもので、日常会話などは淀みなくこなすことができる。

君が保存していた彼女のデータを見て驚いたが、全く人間と区別がつかないな。正直、ここまで技術が進歩しているとは思わなかった。アメリカの技術力の底深さを、かいま見た気分だよ」

 事務次官に反駁しようと、何度も口を開き掛けたススムであったが、言葉を絞り出すことはできなかった。

「しかし改めて見ると、まさに君の年代の少年を籠絡するには打ってつけだな、彼女は。君くらいの年齢の子が夢中になる、様々な特徴をきちんと備えている。

 おそらくではあるが、これは君の年頃の少年向けの『フジサキミキ』だと思う。他の年代の者たち向けとしては、この少女とは異なる、別の『フジサキミキ』が用意されているのではないかな?

相変わらず見事なやり口だ、フジサキは」

(あ、あ・・・)

 絶望、混乱、反駁、疑問、恐怖。様々な感情がススムの心の中で荒れ狂った。

 分からない。何が正しい情報で、何が間違った情報なのか、ススムは徐々に分からなくなってきた。

 あの、自然に少年と会話をしていた可憐な少女が、コンピュータ・グラフィックだなどと、絶対に信じられないし、信じたくもない。だが、AIの技術がそれだけ進歩したと考えれば、可能性はゼロではない気もする。

実際、先程SuperWiMAXの画面上で、ススムへの愛の告白を繰り返していたMIKIも、容姿だけはススムの記憶にある少女そのものだった。

 分からない。「まほろば」は自分を工作員に仕立てるために、CGの少女を利用したのか? ススムがMIKIと重ねた膨大なコミュニケーション、そして少年の密やかな恋心も、全ては偽物だったのだろうか?

 フーはリモコンを操り、世界地図上からアメリカを消して見せた。

無論、地図から消えたからといって、アメリカが世界から消えたわけではない。しかし、そもそもススムはアメリカに行ったことが一度もないのだ。

もしもアメリカに関する知識を「与えられて」いなければ、少年はアメリカが存在することさえ永遠に知らぬまま、毎日を生きていたはずである。

まさにフーが断言したとおり、人間は知らされないことを知ることはできない。

恐怖。正しいことが分からない恐怖。何を信じればいいのか、何を信じてはいけないのか、少年は完璧に分からなくなってしまった。

混乱する少年に、更なる恐怖が追い打ちをかける。

「ああ!」

 ススムは思わず悲鳴を上げていた。またもや、青空に身体が押し潰される感覚が蘇ってきたのだ。

カーテンは閉められている。にも関わらず残酷な死神が長い手を伸ばし、少年を煉獄へと引きずり込もうとしている。

 再び苦しみ始めた少年を見下ろし、フーは皮肉な口調で呟いた。

「全くひ弱だな、第三市民は。

我が祖先を南京で六十万人も虐殺した、ニッテイ軍の子孫とはとても思えん。

南京大屠殺では、ニッテイ軍はまるで祭りか何かのように、大笑いしながら女子供を殺しまくったというのに」

 

(ん?)

 事務次官の言葉の何かが、ススムの心に引っ掛かった。

 何だろうか。

「・・・祭り?」

 そう、祭りだ。「ま、つ、り」だ。「祭り」だ。

刹那、ススムは自分の身体が温かい光に包まれた気がした。祭り。これこそが、キーワードだったのだ。

「そうだ! 祭りだ!」

 まるで波が引くように、ススムの全身から苦痛が引いていった。

青空は所詮、青空でしかない。ましてや、死神などであろうはずもないのだ。

「祭りだ! 祭りだ!」

「な、何だね?」

 先程まで息絶え絶えだった少年が、いきなり軽い動作で立ち上がったのである。事務次官はさすがに泡を食った様子で、わずかに椅子を後退させた。

「祭りだったんだ。すっかり忘れていた。祭りがキーワードだったんだ」

「だから、何がだね?」

 重ねて問いかける事務次官に、ススムはすっかり血の気が戻った、人好きのする明るい笑顔を見せた。だが、質問に回答する気など、まるでない。

 心の闇の帳が、綺麗に吹き払われた。つい数分前までススムの心の中に充満していた絶望感、恐怖感は、全て解消した。頭がすっきりしたおかげで、疑問も解けた。

 様々な知識が一気に蘇ってきた。知識と知識が有機的に結びつけられ、次々に意味を織りなしていく。

 これこそが「情報」だ。

ススムは大きく息を吸い込む。まるで数分前の少年とは別人のように、堂々とした口調で事務次官に語りかけた。

「出鱈目な情報ばかり『知らせよう』としてくれて、ありがとうございます、事務次官。次官がキーワードを口にしてくれたおかげで、全てすっきりしました。

 青空が怖いなどと、何度も無様な醜態を見せて、どうもすみませんでした」

「・・・」

 今度は、事務次官の方が沈黙する側の立場であった。少年のあまりの変貌ぶりが、率直に言って不気味で仕方がなかったのである。

「先程、アメリカの映像ということで、幾つか映像を見せて貰いましたが、あれらは全部が全部、アメリカのものではないですよね。

風景がもろにアジアだし、そもそも映っている人が、みんなアジア人じゃないですか。

 一つ目のワシントンDCの出来事だと仰った映像。あれは、六四天安門事件ですね。人々が戦車に轢かれたあの広場も、エリプス広場などではなく、今は北京砂漠に埋もれてしまった天安門広場です。

二つ目はヒマラヤを越えてインドに逃げようとした、チベットの少年僧の虐殺映像で、三つ目で処刑された二人の少女も、チベット人でしょう。

いずれの事件も、加害者はアメリカ軍などではなく、人民解放軍です。

大体、本当にアメリカ軍が虐殺行為をしたというのなら、プロパガンダ大好きの大陸や第三地域のメディアが、嬉々として報道しないわけがないんだ。

第三地域のメディアは、アメリカ軍を叩けるネタがあるのならば、アメリカ軍人個人の犯罪行為であっても、特集組んで報道しまくるんだから」

「・・・」

「SuperWiMAX端末の生体認証の件にしても、MIKIの映像にしても、最初は騙されるところだった。

でも改めて考えてみたら、セミンもMIKIの映像を保存しているはずだから、そこからMIKIのCGを作るなんて楽勝だ。

 しかもあの映像でのMIKIは、単調な台詞を繰り返しているだけだった。

いくらAIが発達したといっても、あそこまで自然に人間とコミュニケーションをとれるはずがない。もしもMIKIがCGの作り物だったら、必ず何らかの違和感を覚えたはずだ。

 情報委員会は、まだSuperWiMAX端末のセキュリティを、解除できてはいませんよね。
 その端末は『まほろば』から提供されたのとは、別物でしょう。アメリカでは普通に市販されているのだから、情報委員会に同じ端末を入手できないはずがない。

それに、MIKIも死んでなんかいない。きちんと生きている」

「ふ~む・・・」

 最初の驚きから立ち直り、事務次官は背筋を伸ばし、革張りの椅子に座り直した。豪奢なデスクに肘を載せ、ゆっくりとした動作で手を組み、顎を乗せる。

 まるで実験動物を値踏みするように、興味深そうな視線をススムに与え、再び沈黙した。

「ついでに言っておくと、何が南京大屠殺ですか。

 1937年の南京陥落後、蒋介石に率いられた中国国民党の軍隊は重慶へ向かいました。その間、国民党政府は世界のメディアに対して三百回以上も記者会見を開いています。

それにも関わらず、国民党政府は一度も『南京大屠殺』の件を口にしていないんです。

 本当に虐殺があったならば、有り得ない話じゃないですか。

一回や二回じゃないんだ。三百回以上の記者会見で、プロパガンダを強力な武器にしていた国民党政府が、南京虐殺については何も語っていない。他のどうでもいい話は、世界の同情を自分たちに集めるために、可能な限りプロパガンダに利用していたのに。

六十万人もの一般市民が虐殺された衝撃の大事件を、国民党政府がプロパガンダに利用しない。絶対に有り得ないでしょう。

 これはつまり、南京では虐殺など全くなかった、何よりもの証拠です。

 そもそも、当時の南京の人口は二十万人と記録が残っています。ここでどうやって六十万人を殺すんですか。

莫迦莫迦しい。お話にならないとは、このことです」

「タチバナススム君・・・」

 まるで立て板に水を流すように捏造を見破っていく少年に、事務次官は静かな声を掛けた。ススムが並べ立てた主張には、一切反論しようとはせず、

「さっき、祭りがキーワードだったと言ったね。それは、どういう意味なのかな?」

「教えてあげません」

 ススムは久々に味わう爽快感に浸りながら、朗らかに笑った。

 久々に、青い空を見てみたい。カーテンを開けてくれるよう、事務次官に頼んでみようか。

青い空の向こう側に、あの可憐な少女がきっと生きて、実在しているはずだ。


*この物語はフィクションです。

第九章 環境に優しいガイア市民 へ続く 


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