「安心できる医療とは」をテーマに4月25日に開かれた第118回患者塾。ほとんどの人が経験しているであろう病院での「待ち時間」についても率直な意見が交わされた。
仲野さん 待ち時間には気を使います。どうしても時間をかけて処置しなくてはいけない時は、時々他の外来患者さんたちに「済みません」と言い訳をせざるを得ない時もあります。予約の時間通りにうまくいかない場合が実際は多い。それでも、その患者さんとの間でとても大事な話だと思ったらとことん話をするようにしているので、患者さんたちに自分の仕事の仕方を説明し甘えているのが実態です。
津田さん 以前は2~3時間待ちの患者さんもおり、「よく我慢していただいたな」との思いもあって電話予約を始めました。けれど予約でもきちんとは診られない。予約を取って、それでも待たされたらもっとたまらないという雰囲気になりかねないので、結構プレッシャーを感じながら診察しています。
小野村さん 待つ時間が分かっていれば我慢できますよね。
津田さん 患者さんに結構安心していただけるので、あと30分とか1時間という待ち時間の表示を極力するようにしています。あと何分待てばいいのか分かれば待てるし、待ち時間を自分なりに都合つけることができる。そこは医者の側としてきちっとやるべきことだろうと思います。
会場の女性 患者さんがいつも多い耳鼻科に行った時、何時間も待っていた患者さんが「いつごろ診ていただけるのか」と尋ねたところ、先生が「いいよ、帰っていただいて。もう二度と来てもらわなくてもいい」と言ったのであぜんとしました。物言いも荒かったのかも知れませんが、先生の方に「待たせたなぁ」という一言があれば少し納得したかも分からないですよね。
伊藤さん 待つ時間にはやっぱり限度がある。最近は待ち時間を表示して、30分置きぐらいに「お待たせして済みません」と回っています。患者さんとのお付き合いが長くなると、診察時間も長くなっていきます。それでも診察室に入って帰られるまではその患者さんの時間なので、「時間がないから」「次の方が待っているから」ということは言わないようにしています。次がつかえているなと思ったら、看護師さんが上手にやってくれています。
小野村さん 待ち時間の話というのは結局、お子さんを家に置いてきたなどの不安の話でもありますよね。このぐらいの時間がかかると分かれば、きょうはあきらめて帰ろうとかいうこともできる。やはり情報が少ないことが不安とイライラの原因なのかなと思います。
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◆記者の一言
安心できる医療がテーマなのに、頭に浮かぶのはお医者さんではなくて、母のことだ。幼いころ、よく風邪をひいた。のどが痛い時は必ずリンゴをすり下ろしてくれた。少し食欲があれば「おじや(雑炊のことです)」を作ってくれた。腹痛の時は、どんなに忙しくてもおなかをさすってくれた。熱を出した時は、氷枕を用意し、額のタオルを何度も絞り直して替えてくれた。もちろん近くの医院に行って、お尻に注射をされ、薬をもらった後だ。母の笑顔と手の温もりが与えてくれた「安心」は、どんな薬よりもよく効いた。【御手洗恭二】
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◆出席された方々
伊藤重彦さん=北九州市立八幡病院副院長(外科)
津田文史朗さん=つだ小児科アレルギー科医院院長(水巻町)
仲野祐輔さん=八屋第一診療所院長(豊前市、外科)
小野村健太郎さん=おのむら医院院長(芦屋町、内科・小児科)
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〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2009年5月19日 地方版