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地方の多様性が日本を救う

2009年4月10日0時1分

 未曽有の不況が続く中で、地方経済の疲弊がさらに進んでいる。東北地方や沖縄では、有効求人倍率が0.3倍程度にまで下がった。成長産業の欠如や人口減少、財政事情の悪化から、先行きの厳しさを指摘する声も多い。そこから、ヒト・モノ・カネを大都市圏に集中させることが、日本経済の効率性と成長性を高めるという主張が出てくる。はたしてそうか。

 厳しい不況の中で、輝きを増しているのは、むしろ地方である。強い技術力・競争力によって、世界市場で高いシェアを有するモノづくり中小企業のほとんどは、地方に立地している。彼らを支えているのは、それぞれの地域で長い時間をかけて蓄積されてきた技術・ノウハウ・人的資源の厚みであり、産業・企業のネットワークである。

 また消費者に選ばれているのは、全国規模の巨大スーパーではなく、地元産品を効率的に提供する中小地元小売店である。海外からの観光客は、地方の魅力ある景観やたたずまい、食事を求めて、日本を訪れる。

 つまり、情報発信力を高めているのは、大都市ではなく地方なのだ。それを支えているのが、地方の多様性である。同じモノづくりでもそれぞれの地方が独自性を持ち、食材や観光資源の魅力もそれぞれ異なるからこそ、多くの企業や人が地方に注目する。そして、そのような多様性が、経済社会の持続性や成長を支えてきた例は、そこかしこに認められる。例えば米国では、強い独自性を持つ多様な地方があったからこそ、成長エンジンが交代し、幾度もの環境変化に適応することができた。

 地方の多様性を生かすことが、日本経済を救うことになるのではないか。(山人)

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