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【第55回】 2009年05月19日

東京ヤクルトが必死の営業努力
観客動員数を増やす近道はどこにある?

――セ・パ交流戦で観客減、ファンクラブで動員増を狙う

 大不況下で、人々にスポーツ観戦をする余裕がなくなっている今、こうした球団の営業努力も必要だろう。

 ちなみに、東京ヤクルトの場合、ファンでなくてもファンクラブに入る人がいる。このチケットでの入場はヤクルトサイドのライト側だが、外野席は行き来自由だから、レフト側に移動して阪神や広島を応援する人もいるのだ。

無料招待券の大量配布で
ファンを増やした新潟の成功

 ところで、Jリーグに観客動員を増やした好例がある。アルビレックス新潟だ。

 新潟は1996年に法人化され、99年にJ2に参加、04年にJ1に昇格した歴史の浅いクラブだ。しかもホームタウンはサッカーが盛んではない新潟。Jリーグ参入当初は経営的に成り立つのか不安視されていた。だが、今では4万2千人収容の東北電力ビッグスワンスタジアムで行われるホームゲームは満員の観客で埋まる。Jリーグでは浦和レッズと並ぶ観客動員力のあるクラブになった。

 この成功を導いたのは、Jリーグ参入当初、無料招待券を大量に配布したからだといわれている。ファンを作るには試合を見てもらうしかない。「とにかく一度、スタジアムに来てください」と赤字覚悟でお客を招待したのだ。そのうえで選手には、「アウェーはともかくホームゲームは勝て」とハッパをかけた。

 娯楽の少ない土地だ。サッカーに興味はなくても、無料なら人は集まる。そこで勝利のために必死でプレーする選手の姿を目撃する。地元のチームが勝てば誰だってうれしい。レプリカユニフォームを買って応援するようになる。そうした人たちがサポーターになり、先を争ってチケットを買うという好循環が生まれたのである。

 無料招待や採算を度外視した格安チケットで人を呼ぶのは邪道だという人もいる。が、好循環の流れを作るには、こうした思い切った策も必要なのだ。それに空席は何も生まない。ひとりでも多くの人を入れることによって、飲食やグッズの売り上げが見込める。東京ヤクルトも、そうした発想で、思いきった格安チケットやファンサービスを行っているのだ。

 ただ、アルビレックスと違って、東京ヤクルトが残念なのは、娯楽の多い東京のチームであること。また、情報も氾濫していてお得なファンクラブの存在が多くの人に知られにくいことだ。

 だが、この営業努力は評価したい。筆者も内野指定席2試合+Tシャツのチケットで交流戦を見る予定である。

関連キーワード:営業力 スポーツ

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