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【社説】

インフル拡大 長期戦の構えで臨もう

2009年5月19日

 新型インフルエンザの国内での人から人への感染が予想以上の速さで広がっている。幸い病原性は季節性インフル並みだ。冷静に対応し、社会機能の維持を図りつつ感染拡大を最小限に抑えたい。

 わが国での感染拡大の速さに世界保健機関(WHO)も注目し、警戒レベルを現在の「5」から、世界的大流行(パンデミック)を意味する最高度の「6」に引き上げるかどうかの検討も始まった。

 人から人への感染は、関西地方の高校生らで確認された。いずれも海外渡航歴がないというから、空港での検疫をすりぬけた無症状の感染者から感染したのだろう。今後、二次感染が全国に広がる可能性がある。

 これまでも検疫では発症前の感染者の入国は防ぎ切れないとの懸念があったが、ウイルスの国内侵入を諸外国よりも遅らすなど“時間稼ぎ”の効果はあった。

 この間に、今回の新型ウイルスの感染性は強いが、病原性は季節性インフル並みで、備蓄してあるタミフルなど抗ウイルス剤で治療できることが分かった。国内の医療機関の受け入れ準備も進んだ。

 だから過度に恐れることはないが、感染拡大を少なくする努力は欠かせない。全国約八百カ所の医療機関に発熱外来が整備された。新型の感染が疑われる時には自治体の発熱相談センターに相談し、指定された医療機関で受診することを徹底したい。そうでないと、発熱以外の他の疾患の患者に二次感染させる恐れがあるからだ。

 集団生活で感染が拡大しやすい以上、感染者が発生した学校を休校するのはやむを得ない。ただ、都道府県単位での一律の休校は極力避けたい。人口の密集度、通学範囲などを考慮して休校の範囲を決めるなど柔軟な対応も必要だ。

 保育園が休園すると困る共働き夫妻のために、保育のための早退、時差出勤を認めるなど企業にも柔軟な姿勢が求められる。

 国民一人一人も感染防止を心がけたい。うがいや手洗い、せきエチケットなどを励行し、密閉された人込みに長時間とどまることは避けたほうがいい。

 一九一八年から三年続いたスペインかぜでは第一波の症状は比較的軽かったが、その後、病原性が高まり多数が亡くなった。今回の新型の流行がいつまで続くかは不明だが、流行を繰り返している間に病原性が高まる可能性もある。

 最悪の事態も念頭に置きつつ医療体制のさらなる整備に政府は全力で取り組まなければならない。

 

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