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【主張】新型インフル どこでも治療を受けたい
国内の新型インフルエンザの流行が広がっている。関西では、学校の一斉休校も実施された。もちろん油断はできないのだが、病原体は弱毒性のウイルスであり、かかった人の症状も毎年冬に流行する季節性インフルエンザと同程度だという。対策はこの点を基本にして進めなければ、無用の混乱を招いてしまう。
新たな感染症の流行は未知の部分が多いことから、社会の対応も通常の季節性インフルエンザとはおのずと異なってくる。
しかし、「念のために」という意識のあまり、対策が少しずつ過剰になっていくと、その集積で、社会機能が停止してしまう事態にもなりかねない。「過ぎたるは、なお及ばざるがごとし」である。行政機関や企業には、過剰な対策を自粛する見識も必要だろう。
感染症との闘いは、感染した人や感染リスクの高い人の排除を意図した手法をとると失敗する。これは疾病対策の歴史がしばしば教えていることである。
水際作戦や患者と接触した人への「積極的疫学調査」なども、排除ではなく、治療の提供が大前提だろう。体調がすぐれない人が安心して検査や治療を受けられるのでなければ、うっかり熱も出せないといった気分が社会に広がる。これは避けたい。
その点、現在の発熱外来を通した診療は、サプライサイド(供給者側)の都合が優先され、医療を受ける患者には利用しにくい。
まず、発熱相談センターに電話で「相談」し、近くに診療所があるのに、わざわざ遠く離れた指定医療機関まで出かけていかざるを得ない。熱を出した人には大きな負担ではないか。小さな子供が熱を出したら、お母さんは途方に暮れてしまうだろう。
新型とはいえ、病原性は通常のインフルエンザと同程度、しかも治療薬も有効ということなら、近くの診療所で治療が受けられるようにした方が医療態勢として自然である。そもそも検疫や発熱外来による患者の仕分けといった対策は、流行の拡大を遅らせる「時間稼ぎ」策の色彩が強い。
「稼いだ時間」は、何に使うのか。ひとつはワクチン開発の準備、そしてもうひとつは、過剰な恐怖や不安を取り除いて治療の提供態勢を整え、それを感染の拡大防止策につなげることだろう。考えてみれば、冬場にはいつも、行われていることである。