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NIKKEI NET

社説1 感染の急拡大を見据え臨機応変に動け(5/19)

 新型インフルエンザの国内での二次感染が急速に広がっている。感染者が確認されたのは兵庫県と大阪府だが、水面下ではより広範囲に広がっている可能性が高い。

 すでに感染者は1000人レベルを超えたと指摘する専門家もいる。首都圏など人の行き来の盛んな地域で感染者が確認されるのは時間の問題だ。

 感染者の増加や地域的な広がりに伴い対応策も変わる。

 大阪府や神戸市は症状が軽い感染者の自宅療養を認めた。これまで一律に感染症指定医療機関に入院させてきた。想定より症状が軽い人が多いのに加え、感染者の急増を受け入院では病院が対応しきれないとみたためだ。

 自宅療養は政府の新型インフルエンザ対策行動計画では第3段階(感染拡大期、まん延期)の措置にあたる。政府の新型インフルエンザ対策本部(本部長・麻生太郎首相)は第3段階への引き上げを見送ったが、計画の弾力運用を表明した。地域の実情に合わせて自治体が臨機応変に対応を決めたのは適切な判断といえる。

 今後、感染の広がりに伴って地域で異なる医療対応が出てくることはありうる。行政はこれまで以上にきめ細かく情報提供することが求められる。個人や企業は注意深く情報に耳を傾ける必要が出てくる。

 豚インフルエンザが変異して生まれた今回の新型インフルエンザは病原性が強くない。感染者の大多数は毎年の季節性インフルエンザと大差がない軽症にとどまり、治療薬を使わなくても治ることがある。

 感染性も通常のインフルエンザ並みの強さとされる。「街ですれ違った程度ではうつらない」と感染症の専門家は指摘する。高校生の間で感染が広がったのは教室や通学バスなどの閉鎖的な空間にともにいたからだとみられている。

 心配なのは糖尿病などの慢性的な病気をもつ人が感染すると重症化しやすいことだ。現時点では治療薬はあっても予防ワクチンがない。重症化リスクが高い人に広げないことが大事だ。感染したら他人にうつさないための心がけを忘れたくない。

 感染者が発生した地域の学校などを休校にしてしっかりと拡大防止策を講じる必要がある。その一方で仕事や旅行、買い物などの日常活動では過度に慎重になることはない。手洗いやマスク着用などの自衛策をとり、可能なら時差出勤などで満員電車を避けるのもよい。正しい知識に基づきメリハリのある対応を心がけたい。

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