昨年秋のリーマン・ショックの後、世界経済は急降下を続けてきた。20日には今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)が発表される。年率に換算した前期比の成長率は、昨年10~12月期に続いて2期連続で2けたのマイナスとなりそうだ。
企業の決算発表が続いているが、過去に例のない経済の急激な落ち込みを反映し、企業の決算書には厳しい数字が並んでいる。3月期決算の上場企業を集計すると、経常利益は全体で前期比約60%のマイナスとなるという。
日本企業は輸出主導で業績を拡大してきた。そこを今回の経済危機が襲った。需要が激減し、積み上がってくる在庫を抑えるため、生産を大幅に縮小し、値引きも進めた。また、急速に進んだ円高も大きな重しとなった。
反省すべき点は多々ある。円安に乗る形で日本企業は海外市場への依存度を高めてきた。その円安は、超低金利政策を長らく続けてきたことが背景にある。
しかも、北米市場の活況は、金融の膨張によるバブル景気という点を過小評価していた。米国はもともと膨大な経常赤字を抱えながら、さらに借金を重ねてきた。そんな状況が永続することは難しいと思いつつも、警戒を怠った。
少子高齢化で内需にはやはり限界があるというのはその通りだろう。そのため自動車や電機などの日本企業は、今後も海外市場を重視せざるを得ない。ただし、力点の見直しは必要だ。欧米市場向け高付加価値品への依存を改め、アジアなどの新興国での需要に対応した製品開発を推進する必要がある。
総崩れといっても、好業績をあげている企業もある。低価格路線を推し進め、それが消費者のニーズに合致したユニクロを展開するファーストリテイリングや、家具のニトリなどだ。
また、任天堂の場合は、ゲーム機の性能を追求するより、ユーザーの感性に訴える機能を充実させたことが功を奏し、ヒットを続けている。
経済対策の一環として、自動車の購入を支援したり、省エネの電気製品への買い替えにエコポイントを給付するといった需要喚起策を政府がとっている。また、経済活動の落ち込みも1~3月期が底で、今年後半になると景気も回復してくるとの期待感が高まっている。
しかし、政府の支援や、需要が回復してくるのを漫然と待っているだけでは、企業に未来はない。独創的な知恵と工夫が、企業業績の向上には欠かせない。
厳しい時期にこそ、足元を見直し、次につながる芽を育てたい。
毎日新聞 2009年5月19日 東京朝刊