モノの価格とサービスの価格は長期的に対照的な推移を辿っているという点を傘と床屋の値段の推移を代表例として示した。 1本当たりの傘の値段は1951年905円、そして55年後の2006年に996円とほとんど変わりがない(1.1倍)。1973年のオイルショックの頃のインフレの時期、バブルの頃の高級品志向が高まった時期に傘の値段も上昇したことがあるが、その後の値下がりで相殺されている。一般には貨幣価値はこの間大きく低下しているので、実質上は、傘の値段は大きく下がってきているのである。 一方、1回の床屋の値段は、1951年に62円だったのが2006年に2,907円と47倍に値上がりしている。 1.1倍と47倍という差はひどく大きい。1951年段階では傘一本買うお金で14回床屋に行くことができた。ところが、2006年には、床屋1回の値段で傘が2〜3本買えるのである。我々は50数年経つうちに全く異なった商品世界に生きることになったと言うことができる。 こうしたモノの価格推移とサービスの価格推移の違いは労働生産性の上昇率格差と貿易を通じた国際流通への適性の2つから説明できる。 労働生産性の上昇率格差とは、傘一本を製造する労働時間が大規模生産や機械生産によりどんどん少なくなったのに対して、床屋1回には必ず理髪師1人の小1時間を要するというという違いである。傘で第2次産業を代表させ、床屋で第3次産業を代表させると、この労働生産性上昇格差がいわゆるサービス経済化の基本要因となっている(図録5240参照)。 貿易を通じた国際流通への適性とは、傘を作る労働者は人件費の低い例えば中国の労働者でもよいのに対して、理髪師は人件費の高い日本に住む労働者でなければならないという違いである。 (2007年12月11日更新) |
|