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「渡航歴」診断基準で新型見逃す 感染急拡大の原因

2009年5月19日0時25分

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 神戸市で新型の豚インフルエンザによる国内初感染が確認されたのは今月16日。わずか2日間で感染者は兵庫、大阪両府県で160人を超え、勢いは止まりそうもない。自治体側の対策が追いつかず、医療態勢はパンク寸前だ。国がつくった机上の想定が、「現実」に追い越された。

 政府の対策行動計画は、患者発生の段階に応じて対策を決めている。政府は16日、国内での感染確認を受け、「第1段階(海外発生期)」から「第2段階(国内発生早期)」にレベルを引き上げた。しかし、両府県の現実は、次の段階の「拡大期」も通り過ぎ、病床や薬が不足する「蔓延(まんえん)期」寸前の状態だ。

 原因は、最初の発見の「遅れ」にある。事態は発覚前に、水面下で進んでいた可能性がある。

 国内初の感染者の男子高校生でバレーボール部員は16日、遺伝子検査で感染が確認された。バレーボール部の試合などで交流があった複数の高校に感染が広がっていた。

 一方、40人近い感染者が確認された大阪府茨木市の関西大倉高校・中学。1日から16日までに143人がインフルエンザの症状などで欠席。学校側は13日に地元保健所にインフルエンザの集団発生を報告したが、保健所側は季節性インフルと思いこみ、検査すらしなかった。保健所が簡易検査などを始めたのは、国内初感染が報じられたからだ。

 保健所が新型を疑わなかった理由のひとつは、国の「診断基準」。今回の新型インフルの症状は季節性インフルとほとんど区別がつかない。新型インフルも、大きく分けて二つある季節性のインフルのひとつの「A型」に分類される。簡易検査でA型と診断された患者全員を「新型に感染の疑いあり」と報告されてしまうことを避けるため、厚生労働省は「米国など発生国への渡航歴があるかどうか」を基準に加えた。

 ところが、これまで新型インフル感染が確認された人たちの中に、感染を疑わせる海外渡航歴があった人はいない。関西大倉の生徒も、渡航歴がないという理由で、「季節性だ」と思われた。

 米国でも、最初に米疾病対策センター(CDC)における検査で新型インフルだと確定したのは4月15日だが、後から振り返ると3月末には感染者がいたことがわかった。

 とはいえ、5月初めから警告を発していた人たちも日本にはいた。全国の小児科医らの有志が、自分が診察した情報を報告しあい、インターネットで公開している。それによると、今年3月下旬以降、全国で小規模ながらインフルエンザの流行が続いているが、その9割程度がB型だった。そのため「A型の報告が増えた場合、新型インフルの可能性がある」と参加者に警戒を呼びかけていた。(大岩ゆり、和田公一)

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